銀行は、お金を貸している会社の排出量も、自分の排出量として数えています。そのため、融資先の会社に排出量のデータを求めるようになりました。依頼を受けた会社が何を用意すればよいかを、銀行側の資料から読み解きます。
融資先の排出量のうち、銀行が自分の分として数える量を「ファイナンスド・エミッション」と呼びます。取引先など自社の外で出る排出(Scope3)の「カテゴリ15(投資)」にあたります。
数え方は、PCAF(金融機関の排出量の算定の国際的な集まり)の基準が広く使われています。融資先の自己資本と負債の合計に、自行の融資の残高が占める割合を出します。その割合を、融資先の排出量にかけます。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は2021年5月に宣言を出しました。2050年までに、投資と融資の先の排出量をネットゼロ(出す量と減らす量の差し引きでゼロ)にする内容です。三井住友フィナンシャルグループは、2021年10月にPCAFに加わりました。
53行地方銀行61行のうち、ファイナンスド・エミッションを数えている銀行の数(2025年10月)。1年前は62行のうち47行
PCAFの基準では、融資先のデータの質を1から5の段階で示します。1が最も質が高く、5が最も低い段階です。
| 質の段階 | 銀行が使うデータ |
|---|---|
| 1 | 外部の検証を受けた、会社の排出量 |
| 2 | 会社が自分で計算した排出量か、エネルギーの使用量から出した排出量 |
| 3 | 生産量から出した排出量 |
| 4・5 | 売上高や資産に、業種の平均の係数をかけて推計した排出量 |
会社が数字を出さなければ、銀行は業種の平均で推計します。平均の値では、会社が減らした分が数字に出ません。
金融庁が2025年6月にまとめた資料でも、金融機関はデータの不足を課題に挙げています。中堅・中小企業の意識を高めることも、課題の1つです。
地方銀行61行のうち60行は、取引先のCO2の排出量を見える形にするサービスを出しています(2025年10月)。
例として、静岡銀行と日立製作所の「しずおかGXサポート」があります。拠点ごとのExcelのシートに、エネルギーの使用量を入れて使います。浜松いわた信用金庫の案内では、1つ目のIDは無料です。2025年4月からは、静岡県内のすべての地方銀行と信用金庫が扱っています。
サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)は、借り手が前もって決めた目標の達成を後押しする融資です。
環境省のガイドライン(2026年8月改訂)は、目標を測る指標を「KPI」、達成すべき水準を「SPT」と呼びます。1年ごとに更新する融資なら、SPTを達成すると金利を下げ、未達なら上げる例が示されています。
借り手は、少なくとも年に1回、指標の最新の情報を銀行に出します。達成したかどうかは、外部の機関の検証を受けることが必須です。
地方銀行61行のうち52行が、SLLを扱っています(2025年10月)。横浜銀行は、中小企業が外部の評価をとる負担を軽くした型を設けています。
静岡県では、すべての地方銀行と信用金庫が「しずおかGXサポート」を扱っています。融資先の会社は、拠点ごとのExcelのシートにエネルギーの使用量を入れて排出量を出します。
中堅・中小企業でこの作業を受け持つのは、経理や総務の担当者です。初めての算定と、SLLの目標づくりが、外に頼まれる仕事になります。
拠点の電気や燃料の量を記録してきた総務や設備管理の人なら、最初の表を埋めるところから手伝えます。SLLでは達成の検証が必須なので、検証や保証の経験者にも声がかかります。銀行で法人営業をしてきた人は、借り手の側に立って依頼の意味を説明できます。
学生は、PCAFのデータの質の5段階を覚え、自社の数字がないと何が起きるかを説明できるようにしておくと役立ちます。