電子機器の部品を作る会社には、大口の取引先から3つの依頼が届くことがあります。電気を再エネ(再生可能エネルギー)に替えること、労働の監査を受けること、金やスズの出どころを調べることです。3つの依頼のそれぞれで、担当者が集める数字と書類を整理します。
依頼のもとは、取引の条件として守る行動規範です。例として、Appleと業界団体RBAの決まりを見ます。
| 求められること | 決まりの例 |
|---|---|
| 電気を再エネに替える | Apple:Apple向けの製造に使う電気と同じ量を、すべて再エネでまかなう |
| 労働の監査を受ける | RBA:残業を含めて週60時間まで。7日に1日は休ませる |
| 鉱物の出どころを調べる | RBA・Apple:金やスズなどを、製錬業者までたどって調べる |
RBA(責任ある企業同盟)は、2004年に電子機器の会社が作った団体です。会員は600を超えます。RBAの規範は、会員に、直接の仕入れ先にも規範を守らせるよう求めています。
再エネの依頼では、まず温室効果ガスの量を工場ごとに数えます。燃料を燃やした分と、買った電気の分です。会社全体の量から、Apple向けの分を決められた方法で切り分けます。
その量と目標、減らした実績を、毎年Appleに報告します。
鉱物の調査には、CMRTという調査票を使います。RMI(責任ある鉱物イニシアチブ)が無料で配るExcelの表です。
労働の監査は、RBAが認めた独立の監査会社が工場で行います。調べる項目は93です。指摘には直す期限がつき、会社は是正の計画を出します。
Appleは、規範に反すると取引の打ち切りもありうると定めています。重い違反が見つかると、相手の社長に知らせます。直るまでは、新しい仕事を受けられないよう制限します。
232か所Appleが2009年から、決まりを満たさないとして取引から外した製錬業者と精製業者の数
鉱物の調査は、アメリカの法律から始まりました。アメリカの上場企業は、紛争鉱物の報告を毎年5月31日までに出します。紛争鉱物とは、武装勢力の資金源になるおそれのある鉱物です。
Appleの2029年度末仕入れ先が、Apple向けの製造の温室効果ガスを実質ゼロ(差し引きでゼロ)にする期限
半導体では、直接の仕入れ先26社が約束をしました。2030年までに、Apple向けの製造で出るフッ素を含む温室効果ガスを9割以上減らします。
調査票も毎年改まり、CMRTは2026年4月に6.6版が出ました。
部品メーカーに届く3つの依頼は、社内では別々の部署に落ちます。再エネは設備や環境、CMRTは購買、労働の監査は人事や工場の管理です。
そのため外から頼まれるのは、3つをまとめて整理する仕事です。Apple向けの分を、Appleの2029年度末までに実質ゼロにする計画づくりや、監査の前の点検がその中身です。
仕入れ先にCMRTを回し、戻ってきた製錬業者の名前を突き合わせた経験は、それだけで強みです。RBAの監査に立ち会った品質保証や労務の人は、93の項目に沿って記録をそろえる場面で声がかかります。
学生なら、紛争鉱物がなぜ取引の条件になったのかを、米国の法律から順に話せると強いです。