部品や資材を納める会社に、取引先から排出量の問い合わせが届くことがあります。Scope1・2(スコープ1・2)は、自社で燃やした燃料と、買った電気から出たCO2です。手元の請求書から数字を出す手順を、環境省の資料と国が公表する係数でたどります。
環境省は、Scope1を「事業者自らによる温室効果ガスの直接排出」としています。工場のボイラーや社用車で燃やした燃料の分が、これにあたります。Scope2は、他社から買った電気や熱を使った分の排出です。
この分け方は、GHGプロトコル(企業の排出量の数え方の世界共通のルール)に沿っています。集める書類は、次の表のとおりです。
| エネルギー | 見る書類と欄 | 区分 |
|---|---|---|
| 電気 | 検針票や請求書の使用量(kWh) | Scope2 |
| 都市ガス | 検針票や請求書の使用量(m³) | Scope1 |
| 灯油・軽油・ガソリン | 納品書や給油カードの明細の量(L) | Scope1 |
拾うのは金額ではなく、使った量です。係数は、量に掛けるからです。
計算の式は「活動量×排出係数」です。活動量は、電気や燃料を使った量です。排出係数は、その量1単位あたりに出るCO2の量です。
燃料の係数は、環境省の「算定方法・排出係数一覧」に燃料ごとに載っています。1klあたりで、軽油は2.62トン、ガソリンは2.29トン、灯油は2.50トンです。
電気の係数は、環境省と経済産業省が電力会社ごとに公表します。同じ会社でも、契約のメニューで値が変わります。東京電力エナジーパートナーで、メニュー別の値がない契約の電気は、1kWhあたり0.000452トンです。
都市ガスも、ガス会社ごとの値を使います。東京ガスで、メニュー別の値がない契約は、1千m³あたり2.09トンです。どちらも2025年度の排出量を数えるための値です。
電力会社やガス会社の値が載っていないときは、国が省令などで決めた代替値を使います。電気は1kWhあたり0.000416トン、都市ガスは1千m³あたり2.05トンです。国の一覧には「基礎」と「調整後」の2つの値が並びます。取引先がどちらを求めているかも確かめます。
工場が1つの会社の2025年度の例です。量は説明のための仮の数字で、係数は国の公表値です。
| エネルギー | 1年の量 | 係数(トン) | CO2 |
|---|---|---|---|
| 電気(東京電力エナジーパートナー) | 600,000kWh | 0.000452/kWh | 271.2トン |
| 都市ガス(東京ガス) | 50千m³ | 2.09/千m³ | 104.5トン |
| 軽油(フォークリフトとトラック) | 10kl | 2.62/kl | 26.2トン |
| ガソリン(営業車) | 5kl | 2.29/kl | 11.5トン |
142.2トンこの例のScope1(都市ガス、軽油、ガソリンの合計)。Scope2は271.2トン
日本商工会議所の「CO2チェックシート」は、無料のExcelのツールです。毎月の使用量と料金を入れると、CO2の量が計算されます。係数は、環境省の制度の値を使っています。
1つのファイルに入れられる電気の係数は、1つだけです。電力会社が違う拠点は、ファイルを分けます。環境省のハンドブックも、まずこうしたシートで主な排出源をつかむよう勧めています。
取引先に返すときは、対象の年度と、含めた拠点を添えます。使った係数の出どころと、何年度の値かも書きます。請求書がそろわず推計した月があれば、それも伝えます。取引先から見ると、御社の排出は取引先自身のScope3(事業に関わる他社の排出)の一部になります。
請求書から排出量を出す作業は、中小の会社では総務や経理が担いがちです。外部の支援が入りやすいのは、計算の確かめと、拠点が多い会社の集計の仕組みづくりです。
合うのは、光熱費の請求を毎月処理してきた経理や総務の人です。工場の設備を管理してきた人は、どの機械が何の燃料を使うかを知っています。