2024年から、EUの排出量取引制度(EU ETS)に海運が加わりました。船会社は、船が出したCO2の量に応じて排出枠(CO2を出してよい量の権利)を納めます。その費用は、運賃の追加料金として荷主にも届いています。船会社の担当者の作業と、荷主に届くものを順にたどります。
EU ETSは、CO2を出す権利(排出枠)を売り買いする、EUの制度です。2024年1月から、海運もこの制度の対象になりました。
対象は、総トン数5,000トン以上でEUの港に入る船で、国籍は問いません。EUの港どうしの航海と、港に泊まっている間の排出は、全量が対象です。EUの外の港との航海は、排出の半分が対象です。
| 排出した年 | 翌年に納める排出枠 |
|---|---|
| 2024年 | 報告した排出量の40% |
| 2025年 | 報告した排出量の70% |
| 2026年以降 | 報告した排出量の100% |
2026年の排出からは、CO2のほかに、メタンと一酸化二窒素も数えます。
排出枠を納める責任は、つねに船会社にあります。ここでの船会社は、船の持ち主か、運航の責任を引き受けた会社です。
船を借りた会社が、燃料を買う契約もあります。その場合、船会社は、借りた会社に費用の払い戻しを求められます。費用を誰が持つかは、契約の条項に書くことが想定されています。
納めなかった会社には1トンあたり100ユーロの罰金がかかり、払っても納める義務は残ります。
99%超初めての納付(2025年)で、船会社が納めた排出枠の割合。納めるべき量に対する割合
ONE(オーシャン ネットワーク エクスプレス)は、コンテナ船の会社です。日本郵船が38%、川崎汽船と商船三井が31%ずつを出資しています。
ONEは2024年1月から、EU ETSの費用を追加料金として運賃に上乗せしました。かかるのは、出発か到着の港がEUにある荷物です。英国の港は含みません。
2025年1月からは、名前をEES(欧州環境サーチャージ)に改めました。EESは、EU ETSと、船の燃料についてのEUの規則(FuelEU Maritime)の費用を含みます。料金は3か月ごとに見直され、今ある契約にもかかります。
ONEは、追加料金の計算式も公開しています。排出枠の価格に排出量をかけ、船に積んだ量で割る形です。
FuelEU Maritimeは、船が使うエネルギーあたりの温室効果ガスに上限を設ける、EUの規則です。2025年1月から始まりました。燃料をつくる段階から、船で燃やすまでの排出を数えます。
基準は2020年の平均です。2025年に2%、2030年に6%、2050年に80%減らします。
世界の海運のルールは、IMO(国際海事機関、海運を扱う国連の機関)で話し合います。IMOは2023年、2050年ごろまでに国際海運の排出をゼロにする目標を決めました。
燃料の規制などを入れる条約の改正案は、2025年4月に承認されました。しかし同年10月の会合で、採択の審議が1年間中断されました。一部の国が強く反対したためです。
2026年12月初旬採択の審議の再開を見込む。日本は、IMOの基金への拠出をなくす修正案を出している
ONEは、EU ETSの費用をEESとして運賃に上乗せし、3か月ごとに見直しています。荷主の物流や購買の部署には、請求書のこの行の中身を確かめる仕事が生まれました。
船会社の側では、環境の担当や運航を管理する部署が、毎年の報告と3月31日までの検証の準備を外に頼みます。燃料の切り替えの検討も、同じ部署から出る依頼です。
船の燃料や運航のデータを扱ってきた人は、航海ごとの記録をまとめる段階から加われます。用船契約(船の貸し借りの契約)を扱ってきた人は、排出枠の費用を誰が持つかの条項を整えられます。
学生は、EUの外の港との航海では排出の半分が対象になる点を押さえましょう。ONEの計算式を自分でたどると、話が具体的になります。