更新日 2026年11月1日

制度の解説|開示

SSBJ基準の有価証券報告書への適用

東京証券取引所(東証)プライム市場の大きな会社は、有価証券報告書の環境などの情報をSSBJ基準で書きます。2026年2月の内閣府令で、時価総額3兆円以上と1兆円以上の会社の開始時期が決まっています。5千億円以上の会社の時期は、まだ府令に書かれていません。

制度の解説SSBJ基準

概要

SSBJは、サステナビリティ基準委員会の略です。日本のサステナビリティ開示の基準を作る民間の団体です。この委員会が作った基準を、SSBJ基準と呼びます。

金融庁は2026年2月20日、企業内容等の開示に関する内閣府令(開示府令)を改正しました。改正は同じ日に施行されています。新しい第19条の9は、一定の会社に、有価証券報告書(有報)の一部をSSBJ基準で書くよう求めています。有報は、上場会社が毎年出す事業とお金の報告書です。

対象になるのは、有報の「サステナビリティに関する考え方及び取組」の欄です。この欄の一部をほかの欄に書く場合も含みます。この欄を直す訂正報告書にも、同じ決まりがかかります。

項目内容
何が有報のサステナビリティ情報を、SSBJ基準に従って書く
誰に東証プライム市場に上場し、平均時価総額が1兆円以上の会社
いつから3兆円以上は2027年3月31日以後に終わる事業年度から。ほかの対象会社は2028年3月31日以後に終わる事業年度から
使う基準金融庁の告示で指定したSSBJ基準
法律改正金融商品取引法(2026年7月23日公布)で、開示と保証の義務を定めた。この部分の施行は2027年4月1日

対象になる会社の判定

市場の指定は、金融庁告示第二号で行われています。指定されたのは、東京証券取引所のプライム市場です。

時価総額は、株価に発行済みの株の数をかけた額です。平均時価総額は、5つの事業年度末の時価総額を足して5で割った額です。有報が書く年度の、1つ前の年度末までの5つを使います。このため、基準に届いた年度の翌年度から、義務がかかります。金融庁は、会社が前もって対象と分かるようにするための作りだと説明しています。

平均時価総額義務になる年度根拠決まっているか
3兆円以上2027年3月31日以後に終わる年度(3月決算なら2027年3月期)開示府令の改正附則第2条決定
1兆円以上3兆円未満2028年3月31日以後に終わる年度(3月決算なら2028年3月期)開示府令第19条の9、改正附則第2条決定
5千億円以上1兆円未満金融審議会(金融庁の有識者の会議)の作業部会の報告(2026年1月)では2029年3月期府令にはまだ規定がない府令では未定
5千億円未満開示の状況や投資家のニーズを踏まえて今後検討金融審議会の報告未定

3兆円以上の区分は、2026年3月31日以後に終わる年度の末日を、5つの期末の最後として計算します。3月決算なら、2022年3月末から2026年3月末までの5つです。

上場して5年度たっていない会社は、上場後に過ぎた年度末の時価総額の平均で判定します。時価総額は、取引所の市場での額です。ほかの市場からプライム市場へ移った会社は、移る前の市場での時価総額も使います。

対象の会社でなくても、SSBJ基準で書くことはできます(第19条の9第2項)。金融庁は、府令の施行日以後に出す有報から任意で使えると答えています。対象の会社が、決まった年度より早く始めることもできます。

求められること

SSBJ基準は、3つの基準でできています。告示第三号は、この3つを有報に使う基準として指定しました。SSBJ基準で書くときは、3つの基準の定めを全部まとめて使います(適用基準第91項)。

基準決めていること
ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」(適用基準)開示を作るときの土台のルール。報告する会社の範囲、比較情報、準拠の表明、誤りの直し方、経過措置など
テーマ別基準第1号「一般開示基準」(一般基準)テーマを問わず書く中身。ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標の4つ
テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」(気候基準)気候について書く中身。シナリオ分析や温室効果ガスの排出量など

このほか、2026年6月に実務対応基準第1号が公表されました。温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)の報告値を使うときの扱いを決めています。告示は2026年9月15日に改正され、この基準も指定に加わりました。

気候基準では、気候のリスクと機会について次の項目を求めています。

  1. ガバナンス:誰がどう監督しているか
  2. 戦略:リスクと機会が事業にどう響くか。シナリオ分析で、気候の変化への対応力を評価する
  3. リスク管理:リスクと機会をどう見つけ、評価し、管理しているか
  4. 指標:業種を問わない7項目。排出量、移行リスク、物理的リスク、機会、資本投下、内部炭素価格、役員報酬
  5. 産業別の指標と、会社が決めた目標

温室効果ガスの排出量は、Scope1、Scope2、Scope3に分けて書きます。Scope1は自社の直接の排出です。Scope2は、買った電気や熱を作るときの排出です。Scope3は、それ以外の取引先などでの排出です。

測り方は、原則としてGHGプロトコル(2004年)に従います。GHGプロトコルは、排出量を算定するための国際基準です。Scope2は、地域の平均の係数で計算した量(ロケーション基準)が必須です。Scope3は、カテゴリー別に分けて書きます。

有報の欄の冒頭には、次の4つを書くよう府令の様式が定めています。

  1. SSBJ基準に準拠していること
  2. 義務で使うのか、任意で使うのか
  3. 二段階開示を使う場合は、その旨と、訂正報告書を出すこと
  4. SSBJ基準の経過措置を使う場合は、その旨、根拠の規定、内容

Scope3の数字は、推計に頼る部分があります。そこで金融庁の開示ガイドライン(企業内容等開示ガイドライン)5-16-2が、責任の扱いを示しました。合理的な範囲で具体的な説明があれば、後で誤りが分かっても直ちに虚偽記載の責任は負わないという内容です。

適用の時期と経過措置

最初の年度には、負担を軽くする措置がいくつかあります。どれを使った場合も、使ったことを開示します。

措置中身使える年度根拠
二段階開示SSBJ基準の部分を有報に書かず、後から訂正報告書で出す初年度と2年目開示府令の改正附則第2条第2項
比較情報の省略前の年度の数字を並べなくてよい初年度適用基準第93項、気候基準第102項
気候だけの開示気候のリスクと機会だけを書く。2年目は、気候以外の比較情報が要らない初年度適用基準第94項・第95項
Scope3の省略Scope3を開示しない。金融機関の投融資先の排出の追加情報も含む初年度だけ気候基準第103項(2)
前年の測り方の継続前の年度にほかの方法で測っていれば、その方法を使える初年度だけ気候基準第103項(1)

第103項の措置を使った場合、翌年度以降の比較情報でも、同じ扱いを続けられます(気候基準第104項)。

SSBJ基準そのものも、2026年3月13日に改正されました。ISSB基準の排出量の改正に合わせたものです。ISSBは国際サステナビリティ基準審議会の略で、開示の国際基準を作っています。改正後の基準は、2027年1月1日以後に始まる年度から適用されます。

3兆円以上の会社有報でのSSBJ基準2026年改正の基準
3月決算2027年3月期から義務。2026年3月期から早く使える2028年3月期から義務。2026年3月期から早く使える
12月決算2027年12月期から義務。2025年12月期から早く使える2027年12月期から義務。2025年12月期から早く使える

上の表は、SSBJが改正の公表文で示した整理です。

手続きと期限

3月決算で、平均時価総額3兆円以上の会社の場合を並べます。1兆円以上の会社は、全体が1年後ろにずれます。

2026年3月末判定に使う5つの期末の最後。この時点で対象かが決まる
2027年3月期SSBJ基準が義務になる最初の年度
2027年6月末まで有報を出す。二段階開示を選ぶなら、冒頭にその旨を書く
2027年11月(翌期の半期報告書の期限)まで二段階開示を選んだ会社は、SSBJ基準の部分を訂正報告書で出す
2028年3月期2年目。二段階開示をもう一度使える。第三者保証が始まる
2029年3月期二段階開示の期間が終わり、有報と同時に開示する
開示府令の改正附則、金融庁の法律案説明資料、保証部会の意見書案から作成

有報の期限は、事業年度が終わってから3か月以内です(金融商品取引法第24条)。半期報告書の期限は、上場会社の多くで、半期が終わってから45日以内の政令で定める期間です(同第24条の5)。

実務対応基準第1号は、2027年3月31日以後に終わる年度から適用されます。3月決算の3兆円以上の会社では、最初の年度と同じ年度です。

ほかの制度との関係

ISSB基準との関係 SSBJ基準は、ISSB基準の要求事項をすべて取り入れています。そのうえで、会社が選べる日本独自の扱いを加えています。独自の扱いを1つも選ばなければ、ISSB基準にも準拠した開示になることを意図しています。

違いの種類主な例
ISSB基準に代えて選べる扱いScope2で、契約証書の情報の代わりに、契約を反映した量(マーケット基準)を書ける。移行リスクなどの数値と割合の代わりに、規模の情報を書ける
法令に合わせるための扱い法令が認めれば、財務諸表と別の時期に報告できる。二段階開示はこの扱いを使う。比較情報も、法令が認めれば省ける
任意で使う会社向けの扱い財務諸表と別の書類や時期で開示でき、比較情報も省ける
ISSB基準にない定め数字の単位、公表を承認した日と承認者、根拠の法令の名前を書く。GHGプロトコル以外の方法で測った量の内訳を書く

府令には、外国の会社がISSB基準などを使える規定があります(第19条の9第6項)。金融庁長官が認める場合に限ります。国内の会社がISSB基準を代わりに使う規定はありません。

温対法との関係 温対法には、排出量の算定・報告・公表制度(SHK制度)があります。気候基準第49項は、当局が別の測り方を求めている部分に、その測り方を使うことを認めています。

実務対応基準第1号は、SHK制度の値を使うときの扱いを決めました。

  1. 基礎排出量を使う。調整後排出量は使わない
  2. 電気と熱の使用以外の排出(直接排出)は、Scope1に含める
  3. 電気と熱の使用による排出(間接排出)は、マーケット基準のScope2に含める
  4. 間接排出の活動量に国の平均の係数をかけた量を、ロケーション基準のScope2に含める
  5. 追加の調整は要らない。算定の期間が報告期間と違えば、期間を合わせる調整をする

SHK制度にはScope3の算定がありません。このためScope3は、GHGプロトコルに従って測ります。Scope1と2の両方にSHK制度の値を使う場合、調整後排出量も任意の参考情報として書けるとSSBJは考えています。

第三者保証との関係 改正金融商品取引法は、開示の義務化の翌年度から保証を求めます。金融審議会の報告では、最初の2年間の範囲はScope1・2、ガバナンス、リスク管理です。保証の水準は限定的保証とされています。限定的保証は、合理的保証より手続きの範囲が狭い保証です。保証する会社は登録制になり、監査法人以外も登録できます。

実務で迷いやすい点

Q 平均時価総額が1兆円を下回ったら、義務はなくなりますか。
A 金融庁は、その年度は義務がないと答えています。あわせて、金融審議会の報告で5千億円以上の会社まで開始時期が確定している、とも述べています。プライム市場にいる限り、今後の議論で対象になる可能性があることに留意する必要がある、としています。

Q 上場して5年たっていない会社に、猶予はありますか。
A 追加の猶予はありません。金融庁は、比べやすさの点から適切でないと説明しています。上場した年度の末日の時価総額が1兆円以上なら、翌年度の有報から義務になります。

Q 合併した会社の時価総額は、どう計算しますか。
A 開示ガイドライン5-2-2が決めています。過去5年度のうちに他の上場会社を合併した場合、効力が生じた年度より前の年度末は、両社の時価総額を合計します。完全子会社にした場合も同じです。

Q 初年度に気候だけを書く場合、これまで載せていた気候以外の情報はどうなりますか。
A 金融庁は、二段階開示の対象にならないと答えています。そのため、1段階目の有報に書くことが考えられるとしています。2年目は、気候以外の情報も訂正報告書に書けます。

Q 二段階開示の訂正報告書は、どう書きますか。
A 金融庁は2つの方法を示しています。1つは、有報に書いた事項を含め、全部を訂正報告書に書く方法です。もう1つは、有報の記載箇所を示して参照する方法です。参照する方法は、後発事象(有報の後に起きた、記載に関わる出来事)がない場合に使えるとしています。公表を承認した日と準拠の表明は、2年目は訂正報告書に書くことになるとしています。

Q Scope3を環境省・経済産業省のガイドラインで算定してよいですか。
A 金融庁は、SSBJ基準の全ての定めに準拠した開示を行う必要があると答えています。

今後の予定

時期予定状態
2027年1月1日この日以後に始まる年度から、2026年改正のSSBJ基準を適用決定
2027年3月末保証の基準をこの時までに作ることが望まれる意見書の案の段階
2027年4月1日改正金融商品取引法の開示・保証の部分を施行決定
2027年6月3兆円以上の3月決算の会社が、最初の有報を出す決定
2028年3月期1兆円以上の会社で義務が始まる。3兆円以上の会社で保証が始まる決定
2029年3月期5千億円以上の会社で義務が始まる金融審議会の報告にある。府令は未改正
未定5千億円未満の会社への適用。保証の3年目以降の範囲今後検討

SSBJは、ISSB基準が改正されたら、扱いの検討をすぐに始めるとしています。改正されたSSBJ基準を有報で使うには、告示での指定が必要です。2026年は、5月19日と9月15日に告示が改正されました。

出典

  1. 金融庁「『企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令』等の公布及びパブリックコメントの結果について」2026年2月20日(3月19日更新)、別紙1〜5を含む https://www.fsa.go.jp/news/r7/shouken/20260220/20260220.html
  2. 金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令第十九条の九第五項に規定するサステナビリティ開示基準を指定する件の一部を改正する件」2026年5月19日 https://www.fsa.go.jp/news/r7/shouken/20260519/20260519.html
  3. 金融庁 同上の一部改正(実務対応基準第1号の追加)2026年9月15日 https://www.fsa.go.jp/news/r8/shouken/20260915/20260915.html
  4. 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」2026年4月 https://www.fsa.go.jp/common/diet/221/02/03.pdf
  5. 金融庁 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 報告」概要、2026年1月 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20260108/02.pdf
  6. 金融庁 企業会計審議会 サステナビリティ情報保証部会 資料1(意見書案)2026年10月29日 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/hoshou/20261029/01.pdf
  7. e-Gov法令検索「金融商品取引法」(第24条、第24条の5、令和8年法律第64号による改正) https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025
  8. サステナビリティ基準委員会「サステナビリティ開示基準の適用」「一般開示基準」「気候関連開示基準」2025年3月5日公表、2026年3月13日改正 https://www.ssb-j.jp/jp/ssbj_standards.html
  9. サステナビリティ基準委員会「『温室効果ガス排出の開示に対する改正』の公表」2026年3月13日 https://www.ssb-j.jp/jp/ssbj_standards/2026-0313.html
  10. サステナビリティ基準委員会「サステナビリティ開示実務対応基準第1号」2026年6月11日 https://www.ssb-j.jp/jp/ssbj_standards/2026-0611.html
  11. IFRS財団・財務会計基準機構「SSBJ基準とISSB基準の比較」2025年3月31日(2026年3月31日改正) https://www.ssb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/6/ssbj_20260331_01.pdf

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