更新日 2026年11月1日
温室効果ガスを多く出す事業者は、毎年度7月31日まで(輸送は6月30日まで)に前年度の排出量を国に報告します。令和八年熊本地震で報告できなかった事業者の期限は、2026年11月27日に延びています。2024年度の実績の集計の公表と、2027年度の報告に使う事業者別の係数の公表は、時期が未定です。
SHK制度は、温対法の第26条以下にもとづく「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」の通称です。算定・報告・公表の頭文字をとっています。温対法は「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号)の略称です。
2005年の法改正で導入され、2006年4月1日に始まりました。所管は環境省と経済産業省です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何が | 温室効果ガスの排出量を算定し、事業を所管する大臣に報告する義務 |
| いつから | 2006年4月1日。毎年度、前年度の排出量を報告する |
| 誰に | 排出の多い事業者(特定排出者)。国と地方公共団体の事務も含む |
| 対象のガス | エネルギー起源CO2、非エネルギー起源CO2、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、六ふっ化硫黄、三ふっ化窒素 |
| 公表 | 環境大臣と経済産業大臣が、報告された排出量を事業者別などに集計して公表する |
| 罰則 | 報告をしない、またはうその報告をすると20万円以下の過料(法第75条) |
エネルギー起源CO2は燃料や電気、熱を使って出るCO2で、それ以外のCO2はセメントの製造や廃棄物の焼却などで出ます。HFCとPFCはフロン類の一部で、冷媒や半導体の製造に使われます。
直近の集計は2023年度の実績で、2025年11月20日に公表されました。工場などを持つ特定排出者は11,933事業者で、排出量の合計は5億6,058万トンでした。輸送の特定排出者は1,346事業者で、2,842万トンでした(トンはCO2に換算した量)。
特定排出者には、工場や店舗などを持つ「特定事業所排出者」と、輸送を担う「特定輸送排出者」の2種類があります。判定の基準は温対法施行令第5条に定められ、事業者(法人)の単位で判定します。
| 区分 | ガス | 判定の基準 |
|---|---|---|
| 特定事業所排出者 | エネルギー起源CO2 | 全事業所のエネルギー使用量の合計が、原油に換算して年1,500キロリットル以上 |
| 特定事業所排出者 | 非エネルギー起源CO2、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、六ふっ化硫黄、三ふっ化窒素 | ガスの種類ごとに、CO2換算の排出量が年3,000トン以上。かつ、常時使用する従業員が21人以上 |
| 特定輸送排出者 | エネルギー起源CO2 | 省エネ法で指定された貨物・旅客・航空の輸送事業者と荷主など |
1,500キロリットルの基準は、省エネ法で定期報告を出す事業者の要件と同じです。省エネ法は「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」の略称です。
輸送の区分には、量の基準がある者もいます。省エネ法の認定管理統括荷主などは、輸送させる貨物が年3,000万トンキロ以上の場合に対象です。認定管理統括貨客輸送事業者などは、輸送能力の合計が300両以上の場合に対象です。
フランチャイズチェーンの本部は、加盟店の事業所での活動も本部の活動とみなして判定します(法第26条第2項)。
規模の大きい事業所は「特定事業所」と呼ばれ、事業者全体の報告に加えて、事業所ごとの内訳も報告します(施行令第6条)。
| 特定事業所になる事業所 | 基準 |
|---|---|
| エネルギーを使う事業所 | その事業所のエネルギー使用量が、原油換算で年1,500キロリットル以上 |
| その他のガスを出す事業所 | その事業所のガスごとの排出量が、CO2換算で年3,000トン以上 |
| 時期 | 手続き | 根拠など |
|---|---|---|
| 2026年11月27日 | 令和八年熊本地震で報告できなかった特定事業所排出者の、延長後の期限(もとは7月31日) | 政令で決まっている |
| 2027年3月31日以後に終わる期間 | SSBJの実務対応基準第1号の適用が始まる | 決まっている |
| 2027年4月1日〜6月30日 | 特定輸送排出者の2027年度報告(2026年度の実績) | 毎年度の期間 |
| 2027年4月1日〜7月31日 | 特定事業所排出者の2027年度報告。森林等炭素蓄積変化量を初めて任意で報告できる | 命令で決まっている |
2026年度は、令和八年熊本地震を特定非常災害に指定する政令が8月7日に施行されました。延びた期限までに報告すれば、行政上と刑事上の責任は問われません。災害などで大臣が期限を延ばした場合は、その期限までに報告します。
毎年度の流れは、次のとおりです。
EEGSの正式名称は「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム」です。省エネ法と温対法の報告を、関係するすべての省庁に同時に出せます。2022年度の報告からは、原則としてEEGSを使うことになっています。EEGSで出せない場合は、書面を送るか持参します。
EEGSの使用料はかかりません。使用届出は紙で出し、届いたアクセスキーでログインIDを発行します。行政手続きの共通IDであるGビズIDがあれば、届出をシステムから出せます。
省エネ法の定期報告に書いたエネルギー起源CO2は、温対法の報告とみなされます(法第34条)。両方のガスがある事業者は、省エネ法の定期報告書に温対法の報告書を添えて出します。
事業を2つ以上行う事業者は、それぞれを所管する省庁の窓口すべてに同じ報告書を出します。省エネ法の報告は、経済産業省にも出します。
権利利益の保護の請求は、公表されると競争上の地位などが害されるおそれがある場合に行います。認められると、排出量は合計した形で通知されます。大臣は、請求から30日以内に認めるかどうかを決めます。この期間は、さらに30日まで延ばせます(法第27条)。
2026年1月21日に算定の省令が、2月12日に報告の命令が改正され、どちらも2026年4月1日に施行されています。改正は2点で、適用の始まる報告年度が違います。
| 見直し | 内容 | 適用 |
|---|---|---|
| ごみ焼却の廃熱 | 廃熱の供給を受けて使った側は、その排出を計上しなくてよい | 2026年度報告(2025年度の実績)から |
| 森林と木材の炭素 | 森林の吸収量や木材に蓄えた炭素の量を、任意で調整後排出量に反映できる | 2027年度報告(2026年度の実績)から |
廃熱の扱い 清掃工場などで廃棄物を焼いた廃熱は、蒸気や温水として近くの工場などに売られています。改正前は、売る側が焼却の排出を計上していました。買う側も、使った熱量に産業用蒸気の係数などをかけて計上していました。
改正後は、売る側だけが焼却の排出を全量計上します。買う側は、廃熱の係数を0として計算します。対象は、廃棄物の焼却の廃熱を回収した蒸気、温水、冷水です。
森林等炭素蓄積変化量 森林の手入れや木材の利用で増えた炭素の量を、CO2に換算した量です。報告できるのは特定事業所排出者だけで、次の2つの活動が対象です。
| 活動 | 報告できる者 | 算定の式と主な条件 |
|---|---|---|
| 森林の経営 | 自ら所有する森林で森林経営活動をする者。他の特定事業所排出者の森林を、中長期の受委託契約で管理する者 | 蓄積の変化量 × 国の係数 × 44/12。増加量は森林経営計画などがある森林に限り、計画書の添付が必要。伐採による減少も算定する |
| 木材製品の利用 | 木材を使った建物、工作物、家具など(消耗品を除く)を所有する者 | 使った木材の量 × 国の係数 × 44/12。対象は合法性を確認した国産材など。新築などで取得したものに限る |
44/12は、炭素の量をCO2の量に直す係数です。国の係数は、環境省、経済産業省、農林水産省が公表します。
森林は、原則として自ら所有するすべてが算定の範囲です。市町村の単位で範囲を選ぶこともできます。J-クレジットに登録した森林は、認証の対象期間中は範囲から外します。
木材の場合は、報告した建物などを自ら台帳で管理します。建て替えや廃棄をしたら、過去に報告した量を差し引きます。
報告は任意です。ただし、一度報告した特定事業所排出者は、翌年度以降も毎年度の報告が必要です。報告の様式第1には、第5表の9と第5表の10が新しく設けられました。
同じ2027年度報告から、自ら創出した森林吸収のJ-クレジットも、自らの調整後排出量の調整に使えます。他者の吸収への貢献や販売した木材の炭素は、様式第2に任意で書けるようになりました。
2026年度の報告には、森林の欄がない従来の様式を使います。新しい様式は、2027年度以降の報告用として公開されています。
排出量は、活動量(燃料や電気の使用量、廃棄物の焼却量など)に排出係数をかけて求めます。ガスごとの量に地球温暖化係数をかけ、CO2の量にそろえます(法第26条第3項)。
地球温暖化係数(GWP)は、CO2を1としたときの温暖化への影響の大きさです。2024年度の報告から、次の値に更新されました。HFCとPFCは、物質ごとに係数が分かれています。
| ガス | 2024年度報告からの値 | それまでの値 |
|---|---|---|
| CO2 | 1 | 1 |
| メタン | 28 | 25 |
| 一酸化二窒素 | 265 | 298 |
| 六ふっ化硫黄 | 23,500 | 22,800 |
| 三ふっ化窒素 | 16,100 | 17,200 |
エネルギー起源CO2の算定の式は、施行令第7条に定められています。
| 使ったもの | 算定の式 |
|---|---|
| 燃料 | 使用量 × 単位発熱量 × 発熱量あたりの排出係数 |
| 都市ガス | 使用量(千立方メートル)× 排出係数 |
| 他人から供給された電気 | 使用量(キロワット時)× 排出係数 |
| 他人から供給された熱 | 使用量(ギガジュール)× 排出係数 |
電気、都市ガス、熱の排出係数は、国が供給事業者ごとに公表する値を使います。料金メニューごとの係数があれば、その値を使います。公表された係数がない場合は、国が公表する代替値を使います。
2026年度の報告では、2024年度の実績にもとづく電気事業者別の係数を使います。この一覧は2026年1月9日に公表され、8月3日まで追加と更新がありました。
報告する排出量には、基礎排出量と調整後排出量の2つがあります。
| 排出量 | 中身 | 報告する者 |
|---|---|---|
| 基礎排出量 | 事業活動で直接・間接に出した量。電気と熱は基礎排出係数で計算する | すべての特定排出者 |
| 調整後排出量 | 基礎排出量から、無効化したクレジットや証書の量などを差し引いた量。電気と熱は調整後排出係数で計算する | 特定事業所排出者 |
無効化は、取得したクレジットを自社の排出量の調整に充て、二度と使えない状態にする手続きです。対象のクレジットには、J-クレジットとJCM(二国間クレジット制度)のクレジットなどがあります。J-クレジットは、国内の排出削減量や吸収量を国が認証したものです。
2025年度の報告からは、次の2点も変わっています。
非化石証書は、再生可能エネルギーなどの電気が持つ環境価値を、電気と切り離して売買できる証書です。証書で差し引ける量には上限があります。電気の証書は電気の使用によるCO2の量まで、熱の証書は熱の使用によるCO2の量までです。
| 施行 | 主な変更 | 適用の始まり |
|---|---|---|
| 2024年4月 | 算定の対象活動と排出係数を全面的に見直し。都市ガスと熱にも事業者別の係数 | 2024年度報告から |
| 2025年4月 | 直接と間接の区分。基礎排出係数の変更。CO2を回収して燃料にした分の控除 | 2025年度報告から |
| 2026年4月 | 廃熱の係数を0に | 2026年度報告から |
| 2026年4月 | 森林等炭素蓄積変化量の任意報告 | 2027年度報告から |
JCMのクレジットは、2025年4月1日に施行された法改正で「国際協力排出削減量」として法律に位置づけられました。施行の時点ですでにあったJCMクレジットは、国際協力排出削減量とみなされます。
| 施行 | 主な変更 | 適用の始まり |
|---|---|---|
| 2009年4月 | 事業者単位の報告へ。調整後排出量の報告を追加 | 施行時から |
| 2015年4月 | 三ふっ化窒素を追加。地球温暖化係数を変更 | 2016年度報告から |
| 2015年5月 | 電子報告システムでの報告ができるようになる | 施行時から |
| 2022年4月 | 報告された排出量を、開示請求の手続きなしにすべて公表 | 2022年度報告から |
| 制度 | SHK制度との関係 |
|---|---|
| 省エネ法の定期報告 | 1,500キロリットルの基準は同じ。定期報告のエネルギー起源CO2は温対法の報告とみなす |
| GX-ETS(排出量取引制度) | 対象はCO2の直接排出だけ。他者に供給した電気・熱の分を含み、小さな排出源の裾切りはない。登録確認機関の確認がある |
| SSBJ基準 | SHK制度の方法で測った排出量を、スコープ1・2の開示に使う場合の扱いを実務対応基準第1号が定める |
| フロン法の算定漏えい量報告 | 業務用の冷凍空調機器からのフロン類の漏えいを報告する別の制度。報告する者や算定の範囲が違う |
GX-ETSとの違い GX-ETSは、改正GX推進法にもとづく排出量取引制度です。経済産業省の2026年4月の説明会資料は、SHK制度との違いを比べています。SHK制度には、第三者による確認がなく、クレジットの使用に上限もありません。GX-ETSでは、クレジットは排出量の10%までです。
GX-ETSでは、事業所内の割当ての区分ごとに排出量を報告します。そのため、SHK制度の区分よりも細かく、CO2を分けて算定する場合があります。2027年度の届出に必要な情報として、SHK制度で報告した事業所ごとのCO2排出量が挙げられています。早期の削減を勘案する場合の根拠です。
SSBJ基準との関係
SHK制度の対象企業は、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)の気候関連開示基準の第49項ただし書きを選べます。選ぶと、SHK制度の方法で測った排出量を開示に使えます。2026年6月11日公表の実務対応基準第1号は、その場合の量を次のように定めています。
| 開示する項目 | 使うSHK制度の量 |
|---|---|
| スコープ1(自社の直接排出) | 基礎排出量のうち、電気・熱の使用によるエネルギー起源CO2を除いた量(直接排出) |
| スコープ2(マーケット基準) | 基礎排出量のうち、電気・熱の使用によるエネルギー起源CO2(間接排出) |
| スコープ2(ロケーション基準) | 間接排出の活動量に、環境大臣と経済産業大臣が公表する平均的な排出係数をかけた量 |
スコープ2は買った電気や熱による排出です。マーケット基準は契約した電気の係数で、ロケーション基準は地域の平均の係数で計算します。
どの量も、期間の調整のほかには追加の調整をしません。SHK制度は年度で数えるため、決算の期間と違う場合は期間の調整をします。適用は、2027年3月31日以後に終わる年次報告期間の開示からで、それより前の期間に適用することもできます。有報での扱いはSSBJ基準の解説にまとめています。
問 子会社の排出量も、親会社の報告に合わせて出しますか。
答 判定も報告も、事業者(法人)ごとです。フランチャイズチェーンの本部は、加盟店の事業所の分も含めます(法第26条第2項)。
問 清掃工場の廃熱を使っています。2025年度の実績から計上しなくてよいのですか。
答 はい。廃熱の扱いは、2026年度報告(2025年度の実績)から適用されます。廃熱の係数は0です。ほかの産業用蒸気は、これまでどおり係数をかけて計上します。
問 社有林の吸収量を、今年度(2026年度)の報告に入れられますか。
答 入れられません。算定できるのは2026年度の活動の実績からで、報告は2027年度からです。
問 森林の量を一度報告したら、翌年からやめられますか。
答 環境省の資料では、一度報告した特定事業所排出者は、報告の初年度以降は毎年度の報告が必要になります。
問 非化石証書の分は、どちらの排出量から、どこまで差し引けますか。
答 2025年度の報告から、基礎排出量と調整後排出量の両方に反映します。差し引けるのは、電気事業者から小売供給された電気の使用によるCO2の量までです。差し引く量は、証書の量に全国平均係数と補正率をかけて求めます。2026年度の報告に使う全国平均係数は、1キロワット時あたり0.000423トンです。
問 自社の排出量を非公表にできますか。
答 2022年度の報告から、開示請求の手続きなしに公表されています。権利利益の保護の請求が認められた場合は、合計した量で大臣に通知されます。
問 SSBJ基準の開示には、基礎排出量と調整後排出量のどちらを使いますか。
答 実務対応基準第1号は、直接排出と間接排出を基礎排出量の一部として定義しています。スコープ1とスコープ2には、この量を使います。
| 時期 | 項目 | 状態 |
|---|---|---|
| 未定 | 2024年度の実績の集計結果の公表 | 2026年11月1日時点で、制度のサイトのお知らせに掲載はない |
| 未定 | 2027年度の報告に使う電気・ガス・熱の事業者別の係数(2025年度の実績) | 公表日は未定 |
制度の見直しは、環境省と経済産業省の算定方法検討会と制度検討会で議論されています。