更新日 2026年11月1日
強制労働で作られた製品は、2027年12月14日から、EUで売ることもEUから輸出することもできなくなります。会社の大きさや業種、製品の産地による除外はありません。疑いのある製品は当局が調べ、強制労働が使われたと判断すると、販売の禁止と撤去、廃棄を命じます。
この規則は、規則(EU)2024/3015です。EU理事会が2024年11月19日に採択し、2024年11月27日に署名されました。2024年12月12日にEUの官報に載り、翌日の12月13日に発効しました。
第3条は、強制労働で作られた製品について2つの行為を禁じています。EUの市場に出すか提供することと、EUから輸出することです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何が | 強制労働で作られた製品を、EUの市場に出すこと、提供すること、EUから輸出することを禁じる |
| 誰に | 製品をEUの市場に出すか提供する、または輸出する、すべての事業者 |
| いつから | 2027年12月14日(発効から36か月後) |
| 調べる側 | EUの外の疑いは欧州委員会、加盟国の中の疑いはその国の所管の当局 |
| 違反の扱い | 販売と輸出の禁止、市場からの撤去、廃棄を命じる決定を出す |
| 罰則 | 決定に従わない事業者への罰則を、加盟国が定める |
強制労働の定義は、ILO(国際労働機関)の第29号条約の第2条によります。処罰の脅しのもとで求められ、本人が自ら申し出ていない労働やサービスのことです。子どもの強制労働も含みます。
規則は、国の当局が課す強制労働も扱います。これはILOの第105号条約の第1条が定める形の強制労働です。
製品とは、お金で値段を付けられ、取引の対象になるものすべてです(第2条6号)。採掘、収穫、生産、製造のどれで得たものかは問いません。前文18項は、業種、産地、EUの中で作ったか輸入したかを問わないとしています。部品も含みます。
「強制労働で作られた製品」は、一部にでも強制労働が使われた製品を指します(第2条7号)。採掘から製造までのどの段階かは問いません。サプライチェーンの途中の加工も入ります。
事業者の定義は、製品をEUの市場に出すか提供する、または輸出する人や法人です(第2条9号)。従業員数や売上高による線引きはありません。中小企業も対象です。
| 判定の基準 | 規則の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 会社の大きさ | 除外なし。調査や期限では大きさを考える | 第2条9号、第14条4項、第18条4項 |
| 業種・産地 | 除外なし。EUの中で作った製品も対象 | 前文18項 |
| 行為 | 市場に出す、提供する、輸出する | 第3条 |
| オンライン販売 | EUの利用者に向けた販売は、EU市場での提供とみなす | 第4条 |
| 利用者の手元の製品 | すでに利用者に届いた製品の撤去は扱わない | 第1条2項 |
| 輸送サービス | 対象外 | 前文18項 |
オンライン販売では、事業者が何らかの方法でEUの加盟国に向けて活動していれば、EUの利用者向けとみなします(第4条)。
1 強制労働で作られた製品を扱わない(第3条) 事業者に課されるのは、この禁止を守ることです。規則は、EU法や加盟国の法律にある義務のほかに、新しいデューデリジェンスの義務を作らないとしています(第1条3項)。デューデリジェンスは、問題を見つけて防ぎ、止めるための取り組みです。
欧州委員会の説明のページも、監査や報告の義務はないとしています。製品に強制労働がないようにする方法は、会社が選ぶとしています。
2 当局の求めに答える(第17条、第18条) 当局は調査の前に、事業者に取り組みの内容を尋ねます。強制労働のリスクを見つけ、防ぎ、減らし、止め、救済するために何をしたかです。事業者は30営業日以内に答えます。
調査が始まると、当局は製品を特定する情報を求めます。製造者、生産者、製品供給者、輸入者、輸出者の情報も含みます。期限は30営業日以上、60営業日以内で、当局が決めます。
3 決定に従う(第20条、第22条、第23条) 違反と決まると、次の命令が出ます。
廃棄は、まずリサイクルで行います。できなければ、使えない状態にします。傷みやすい製品は、慈善や公益の目的に寄付し、できなければ使えない状態にします(第25条)。
EUにとって戦略上重要なサプライチェーンでは、廃棄の代わりに保留を命じられます(第20条5項)。保留の期間に強制労働をなくしたと示せれば、決定は見直されます。示せなければ、廃棄の命令がかかります。保留の費用は事業者が負います。
期限までに従わない場合は、当局が撤去や廃棄を執り行います(第23条)。費用は事業者の負担です。当局は罰則も科します。
強制労働が使われたことを立証するのは、調べる当局の側です(前文47項)。当局は、予備段階と調査で集めた情報と証拠をもとに判断します。事業者には、すべての段階で意見を述べる権利があります(第16条2項)。
ただし、情報が集まらない場合は例外があります(第20条2項)。事業者や公的機関が次のことをすると、当局はほかの事実だけで違反と判断できます。
調べる当局は、強制労働の場所で決まります(第15条)。EUの外なら欧州委員会、加盟国の中ならその国の所管の当局です。加盟国の当局の決定は、ほかの加盟国も認めて執行します(第20条8項)。
「根拠のある懸念」は、客観的で確かめられる情報にもとづく、強制労働の疑いの合理的な兆しです(第2条16号)。当局は、疑いの規模と深刻さ、EUで売られる量、最終製品に占める疑いのある部分の割合で、優先度を決めます(第14条2項)。
懸念がないか、取り組みで懸念の理由がなくなったと判断すると、当局は調査を始めません(第17条5項)。その旨を事業者に知らせます。
税関も、決定を手がかりに輸入と輸出の製品を確かめます(第26条〜第30条)。該当しそうな製品は、通関を一時止めます。4営業日以内に所管の当局が継続を求めなければ、ほかの手続きが済んでいる限り通します。傷みやすい製品や動植物は2営業日です。決定の対象と確かめられた製品は通さず、廃棄されます。
リスクのデータベース(第8条) 欧州委員会が、強制労働のリスクがある地域や製品の情報をまとめます。ILOや国連、研究機関などの、独立した確かめられる情報にもとづきます。国が課す強制労働の確かな証拠がある地域の業種も示します。
データベースの情報は、目安であり、すべてを網羅したものではありません。事業者の名前を直接示す情報は公開しません。規則は、発効から18か月以内の公開を求めていました。欧州委員会のページでは、2026年11月1日の時点で「開発中」と表示されています。
指針(第11条) 欧州委員会は、2026年6月14日までに指針を出すよう求められていました。指針に入れる内容は、規則に並んでいます。
デューデリジェンスなどの手引きは、特に中小企業を助ける内容にすることも求められています。欧州委員会は、2026年6月30日に準備のための資料一式を公開しました。共通の窓口のサイト(Forced Labour Single Portal)も、同じ日に始まりました。指針は、このサイトから欧州委員会の告示として読めます。
情報の届け出の窓口(第9条) だれでも、違反の疑いを欧州委員会の窓口に届け出られます。窓口は2027年12月14日に開きます。明らかに不完全な届け出や、根拠のない届け出、悪意のある届け出は退けます。届け出た人の身元は秘密として扱います(第32条)。
中小企業の支え(第10条) 各国の当局は、中小企業向けの相談の窓口を置きます。欧州委員会のサイトには、中小企業向けの準備の点検表もあります。
規則の大半は、2027年12月14日から適用されます(第39条)。当局の体制や情報のシステム、データベース、指針などの条文は、発効の日から適用されています。
| 時期 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2024年12月13日 | 発効。第5条3項、第7条、第8条、第9条2項、第11条、第33条、第35条、第37条3項はこの日から適用 | 第39条 |
| 発効から12か月以内(2025年12月) | 加盟国が、所管の当局の名前と連絡先、担当の範囲を知らせる | 第5条3項 |
| 2026年6月14日まで | データベースの公開と、指針の公開 | 第8条3項、第11条 |
| 発効から24か月以内(2026年12月) | 加盟国が、罰則の決まりを欧州委員会に知らせる | 第37条3項 |
| 2027年12月14日 | 禁止と調査、決定、税関の手続きなどを含む規則全体の適用 | 第39条 |
規則の条文には、適用日より前に作られた製品や在庫についての、別の経過の決まりは置かれていません。すでに利用者に届いた製品は、もともと撤去の対象外です(第1条2項)。
米国のUFLPAとの違い UFLPA(ウイグル強制労働防止法)は、2021年12月23日に成立した米国の法律です。中国の新疆ウイグル自治区で作られた製品などは、輸入が禁じられたものと推定されます。この推定は2022年6月21日から適用されています。
| 項目 | EUの規則 | 米国のUFLPA |
|---|---|---|
| 対象の行為 | EUの市場に出す、提供する、輸出する | 米国への輸入 |
| 地域の限定 | なし。EUの中で作った製品も対象 | 新疆ウイグル自治区で作られた製品と、一覧に載った事業体の製品 |
| 立証 | 当局が強制労働の使用を立証する | 違反と推定される。輸入者が反証する |
| 例外の条件 | ― | 指針に完全に従い、照会にすべて答え、明確で説得力のある証拠で強制労働がないと示す |
| 実施する機関 | 欧州委員会、加盟国の当局、税関 | 米国の税関・国境警備局(CBP) |
| 対象の一覧 | リスクのデータベース。会社の名前は公開しない | UFLPAの事業体の一覧。事業体の名前を載せる |
CSDDDとの関係 CSDDD(企業持続可能性デューデリジェンス指令)は、会社にデューデリジェンスの手順を求めるEUの指令です。欧州委員会は、2つの制度は補い合うとしています。CSDDDで集めた情報は、製品に強制労働がないかを調べる手がかりになると説明しています。
EUの公益通報者保護指令との関係 規則の違反の通報と通報者の保護には、指令(EU)2019/1937が適用されます(第9条7項)。規則の第36条は、この指令の対象の法令に規則を加えました。
市場監視と税関の制度との関係 当局は、製品の安全などで使う市場監視の情報システムを使います(第7条)。税関の手続きは、EUの関税法典(規則(EU)No 952/2013)の仕組みの中で行います(第26条)。
日本で作った製品をEUに売る場合、EUで製品を最初に市場に出す輸入者などが事業者になります。日本の会社がEUの利用者に向けてオンラインで売る場合は、第4条の遠隔販売の決まりが関わります。
規則は、特定の記録を作って保存する義務を定めていません。一方で、当局は調査の前に、事業者に加えて、必要に応じてほかの製品供給者にも情報を求めます(第17条1項)。製品供給者は、サプライチェーンの中で製品やその一部を作ったり加工したりする者です(第2条12号)。日本の部品や素材の供給者も、これに当たりえます。
規則の条文からは、当局が求めうる情報として次のものが読み取れます。
| 場面 | 求められうる情報 | 根拠 |
|---|---|---|
| 予備段階 | 強制労働のリスクを見つけ、防ぎ、減らし、止め、救済するために取った行動。法令、欧州委員会の指針、国連・ILO・OECD(経済協力開発機構)の手引きにもとづく取り組みなど | 第17条1項 |
| 調査 | 製品を特定する情報。調べる部分の特定。製造者、生産者、製品供給者、輸入者、輸出者の情報 | 第18条3項 |
| 税関(指定された製品) | 製品を特定する情報、製造者や生産者の情報、製品供給者の情報 | 第27条2項 |
税関への情報の提出は、欧州委員会が委任規則で指定した製品だけにかかります(第27条1項)。前文56項は、その情報の例を挙げています。製品の名前やブランド、型式やロット番号、製造番号、デジタル製品パスポートの識別子です。製造者や供給者については、名前、商号、連絡先、所在国の識別番号を挙げています。
答えの期限は、予備段階で30営業日、調査で30〜60営業日です。EUの事業者がこの期限で答えるには、取引先の情報が必要になる場合があります。
Q 中小企業も対象ですか。
A 対象です。事業者の定義に大きさの線引きはありません(第2条9号)。当局は、調査の相手や期限を決めるときに、中小企業かどうかを考えます(第14条4項、第18条、第22条1項)。
Q デューデリジェンスをしないと違反になりますか。
A 規則は、新しいデューデリジェンスの義務を作らないとしています(第1条3項)。違反になるのは、強制労働で作られた製品を扱った場合です。ただし当局は、予備段階で取り組みの内容を尋ねます(第17条1項)。取り組みでリスクがなくなったと判断すれば、調査を始めません(第17条5項)。
Q 部品の一部だけに強制労働が使われていたら、どうなりますか。
A 一部でも使われていれば、強制労働で作られた製品に当たります(第2条7号)。違反の部品を取り替えられるときは、その部品の廃棄を命じられます(第20条4項)。決定には、取り替える部品が示されます。
Q データベースに載った地域から仕入れると、すぐ違反ですか。
A データベースは目安で、網羅したものではありません(第8条1項)。当局がリスクを評価するときの情報源の1つです(第14条3項)。違反かどうかは、調査を経た決定で決まります。
Q 通関で止められたら、どうなりますか。
A 所管の当局が4営業日以内に継続を求めなければ、通関されます(第29条1項)。傷みやすい製品や動植物は2営業日です。通関されても、規則に合うことの証明にはなりません(第29条2項)。
Q すでに消費者に売った製品も回収しますか。
A 規則は、利用者に届いた製品の撤去を扱いません(第1条2項)。
| 時期 | 予定 | 状態 |
|---|---|---|
| 2026年11月〜 | 欧州委員会の業種別の説明会(11月12日 電子・半導体、17日 農業・食品、19日 自動車、24日 水産) | 決定 |
| 未定 | リスクのデータベースの公開 | 欧州委員会のページは「開発中」と表示。公開日の記載なし |
| 2026年12月まで | 加盟国が罰則の決まりを欧州委員会に知らせる | 規則で決定(第37条3項)。各国の内容は未定 |
| 2027年12月14日 | 規則の適用と取り締まりの開始。情報の届け出の窓口が開く | 決定 |
| 未定 | 税関に情報を出す製品を指定する委任規則(第27条) | 採択は確認できていない |
| 2029年12月まで | 欧州委員会による最初の評価。以後は5年ごと | 規則で決定(第38条) |
最初の評価では、対象を、製品の採掘や製造に付随するサービスに広げる必要があるかも検討します(第38条2項)。強制労働を救済する専用の仕組みが必要かどうかも検討します(第38条4項)。