更新日 2026年11月2日
MUFGは2026年3月期の有価証券報告書(有報)で、SSBJ基準の「すべての定めには準拠していません」と明記しました。当期は「同基準のすべての定めを社内で検討のうえ作成」したとしています。経過措置を使ったとは書いていませんが、比較情報は開示していません。サステナビリティの欄には、第三者保証を受けた旨の記載はありません。
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の有報は、2026年6月24日に関東財務局長に提出されました。第21期で、期間は2025年4月1日から2026年3月31日までです。サステナビリティの欄は、全328ページのうち16〜80ページにあります。
| 項目 | 有報の記載 |
|---|---|
| 報告期間 | 2025年4月1日〜2026年3月31日(連結会計年度と同じ) |
| 基準との関係 | SSBJ基準の「すべての定めには準拠していません」 |
| 作り方 | 当期は「同基準のすべての定めを社内で検討のうえ作成」 |
| 今後の予定 | 「2027年3月期からのSSBJ基準の適用に向けて準備を進めて」いる |
| 比較情報 | 開示していない |
| 承認 | 2026年6月24日(公表承認日)、経営会議が承認 |
基準の定めを検討したため、基準が参照を求めるガイダンスにも言及しています。参照したのは、SASBスタンダード(2025年12月最終改訂)などです。
金融庁の改正府令は、平均時価総額3兆円以上の会社の義務を、2027年3月31日以後に終わる年度からと定めています。制度の全体は、SSBJ基準の有価証券報告書への適用で解説しています。
リスク管理では、リスクと機会を影響の性質、発生可能性、規模で評価します。関連する産業には、SASBの3つの産業を特定しています。商業銀行、資産運用及び管理業務、投資銀行及び仲介です。そのうえで、次のリスクと機会を識別しています。
| テーマ | 区分 | 中身 |
|---|---|---|
| 気候 | 移行リスク | 信用リスク、オペレーショナル(法令等)リスク、評判リスク |
| 気候 | 物理的リスク | 信用リスク |
| 気候 | 機会 | ファイナンスを含む気候関連ビジネス |
| 人的資本 | 機会 | プロ度追求、エンゲージメントの向上、DEIの推進、健康経営 |
| サイバーセキュリティ | リスク | 情報通信システムの障害や情報の流出など |
| 企業倫理(コンプライアンス) | リスク | コンプライアンスに関するリスク |
気候以外の3つのテーマには、SSBJ基準に個別の定めがありません。そのため、SASBスタンダードや同業他社の開示を参照しました。最も重大な影響を与える判断には、リスクと機会の識別を挙げています。
サステナビリティのリスクは、全社のリスク管理の中で「トップリスク管理」の手法で扱います。トップリスクは、今後約1年間で最も注意すべきリスク事象を指します。「気候変動に関するリスク」と、サイバーを含む「ITリスク」をトップリスクにしています。
シナリオ分析は、気候のリスクだけに使っています。リスク管理のプロセスに、前の年度からの重要な変更はありません。
時間軸は、短期を1年以内、中期を1年超5年以内、長期を5年超と定めています。中期経営計画は3年です。それでも、リスクと機会はより長期の要因で生じるため、中期の上限を5年にしました。
移行リスクが集中している領域には、石炭火力発電関連与信を挙げています。物理的リスクについては、集中している領域はないとしています。
当期の財務への影響は、気候のリスクについて「重要な影響は識別されておりません」という結果です。機会の影響は、気候だけの影響額を区分できないため、数字を出していません。将来の影響も、不確実性が高いとして数字を出していません。
シナリオ分析は、4つのリスクごとに行っています。数字の結果があるのは、信用リスクの2つです。
| 項目 | 移行リスク(信用リスク) | 物理的リスク(信用リスク) |
|---|---|---|
| シナリオ | NGFSのNet Zero 2050、Delayed Transition、Current Policies | IPCC第6次報告書のSSP1-2.6(2℃)、SSP5-8.5(4℃) |
| 手法 | 炭素価格などの上昇が、貸出先の信用格付に与える影響を分析 | 洪水による貸出先のデフォルト確率の変化を計測 |
| 時間軸 | 2025年3月末を基準に2050年まで | 2025年3月末を基準に2100年まで |
| 範囲 | 三菱UFJ銀行と、商業銀行業務を営む海外現地法人の全セクターの法人向け貸出(Bank of AyudhyaとBank Danamonを除く) | |
| 結果 | 累積与信費用(Current Policiesとの差分)5,500億円程度 | 2100年累積与信費用3,000億円程度 |
| 実施時期 | 2026年3月期 | 2026年3月期 |
NGFSは、中央銀行・金融監督当局のネットワークです。移行リスクの分析には、外部専門家の検証結果も反映しています。
オペレーショナル(法令等)リスクと評判リスクは、定性的に分析しました。結果は、どちらも「将来の影響を推定することは難しい」です。全体としては、事業活動に「直ちに重大な影響を与えるものではない」としています。
移行計画は、GFANZ(ネットゼロを目指す金融機関の連合)のガイダンスの枠組みに沿って作っています。戦略は、自社排出削減など4つです。
詳しくは会社のサイトの「Transition Progress 2026」を見るよう案内しています。ただし、この資料は「本開示を構成しません」。
測り方はGHGプロトコル(2004年)に従っています。範囲を決める方法は、経営支配力アプローチです。
| 区分 | 当連結会計年度(単位:千t-CO2e、CO2換算の千トン) |
|---|---|
| Scope1 | 26 |
| Scope2(ロケーション基準) | 247 |
| Scope2(マーケット基準) | 101 |
| Scope3(カテゴリー15) | 1,357,610 |
| うち資産運用 | 328,921 |
| うち商業銀行 | 1,028,689 |
Scope1・2は、7種類の温室効果ガスをまとめた量です。第4四半期の使用量は、前年同月の値で代えた見積りです。国内のScope2は、ロケーション基準に全国平均係数を使います。マーケット基準には事業者別排出係数を使います。
Scope3は、重要性を踏まえてカテゴリー15(投資)だけを測っています。方法は、2022年12月公表のPCAFスタンダードPart Aを踏まえています。PCAFは、金融機関向け炭素会計パートナーシップです。こうして測った量を、ファイナンスド・エミッションと呼びます。
基準年度は2024年度で、残高は原則2025年3月末時点です。報告期間と違う期間の情報を使う根拠には、気候基準第64項を挙げています。債券・株式の引受やシンジケートローンに起因する排出は除いています。デリバティブに起因する排出も除いています。
| 活動 | 算定の対象 |
|---|---|
| 資産運用 | 運用資産残高127.2兆円のうち90.9兆円(71%) |
| 商業銀行 | 関連するグロス・エクスポージャー214.4兆円。総額に対する割合は68% |
商業銀行の対象のうち、未実行のローン・コミットメントの割合は18%です。
主な気候の目標と実績は次のとおりです。
| 目標 | 実績 |
|---|---|
| 自社のScope1・2:2030年ネットゼロ。中間目標は2026年度168千t-CO2e | 2025年度128千t-CO2e |
| 投融資ポートフォリオ:2050年ネットゼロ | 対象の資産などの詳細な定義は、期末時点で行っていない |
| サステナブルファイナンス:2019〜2030年度の累計100兆円、うち環境分野50兆円 | 2025年度12.9兆円、累計56.5兆円。環境分野は2025年度6.3兆円、累計24.8兆円 |
| 石炭火力発電向けプロジェクト・ファイナンス:2040年度目途にゼロ。2030年度に2019年度比50%削減 | 2025年度末1,849百万米ドル |
| 石炭火力発電所向けコーポレートファイナンス:2040年度目途にゼロ | 2025年度末約600億円 |
このほか、電力や鉄鋼など9つのセクターに2030年度の中間目標を置いています。実績は2024年度の値です。たとえば電力セクターは、目標239〜270gCO2e/kWhに対して265gCO2e/kWhです。内部炭素価格は、重要な意思決定に用いていません。
SASBなどの産業別の指標は、会社が使っている指標と異なるため適用していません。
有報は、SSBJ基準に準拠したとも、経過措置を使ったとも表明していません。経過措置に関係する点の記載は、次のとおりです。
| 論点 | 有報の記載 |
|---|---|
| 比較情報(前の年度の数字) | 「比較情報を開示していません」。根拠の条項は書いていない |
| 気候だけの開示 | 気候に加えて、人的資本、サイバーセキュリティ、企業倫理を書いている |
| Scope3 | カテゴリー15を開示。重要性を踏まえて測ったと書いている |
| 報告期間と違う期間の情報 | 気候基準第64項の要件をすべて満たすとして使っている |
| 将来の財務的影響 | 不確実性が高いとして、数字を出していない |
二段階開示(SSBJ基準の部分を後から訂正報告書で出せる措置)も、使ったと書いていません。
サステナビリティの欄には、第三者保証を受けた旨の記載はありません。指標の表の多くには、「認証されていない」か「第三者認証なし」とあります。
有報の監査報告書は、有限責任監査法人トーマツが出しています。対象は、連結財務諸表などと内部統制報告書です。
サステナビリティのリスクと機会の監督は、取締役会が責任を負います。取締役会の議長は執行役会長です。構成は、社外取締役9名、社内非業務執行取締役2名、業務執行取締役5名です。
取締役会の傘下には、リスク委員会があります。委員長は社外取締役です。社外取締役3名と外部専門家3名などで構成しています。
執行側では、経営会議の傘下にサステナビリティ委員会があります。委員長はグループCSuO(最高サステナビリティ責任者)で、原則年1回開きます。
2025年度は、全9回の取締役会で審議・報告をしました。内訳は、気候関連4回、人的資本関連2回、サイバーセキュリティ関連4回、企業倫理関連4回です。
役員報酬では、株式報酬の一部にESGの独自評価指標を入れています。指標は次の3つです。
主要なESG評価機関5社の外部評価の改善度も、相対評価で使います。中計達成度等評価部分のうち、ESG評価の評価ウェイトは10%です。そのうちGHG自社排出量削減は2.5%です。気候の評価項目だけを区分して識別することはできないとしています。
欄の内容は、2026年6月24日に経営会議が承認しました。この日は有報の提出日と同じです。サステナビリティの内部統制は、既存の内部統制の枠組みに含まれ、統合されています。
数字は、次の手順で確かめています。
コーポレート・ガバナンスの欄には、開示情報の適正性と開示の内部統制を審議する情報開示委員会があります。サステナビリティの欄は、この委員会の関わりを書いていません。
欄は6つの節でできています。(2)は会社全体の話で、(3)〜(6)はテーマごとの話です。
(3)〜(6)にも、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標の4つの見出しがあります。
準拠の表明、経過措置、第三者保証などを4社で並べた表があります。