更新日 2026年11月2日
株式会社みずほフィナンシャルグループは、2026年3月期の有価証券報告書(有報)を出しました。サステナビリティの欄は、SSBJ基準に「準拠して作成」したと書いています。SSBJ基準は、日本のサステナビリティ開示の基準です。このページでは、欄に何がどう書かれているかを、有報の記載から整理します。
有報は2026年6月19日に、関東財務局長に提出されました。第24期で、期間は2025年4月1日から2026年3月31日までです。サステナビリティの欄は、全306ページのうち26〜65ページにあります。
| 項目 | 有報の記載 |
|---|---|
| 事業 | 銀行業務、信託業務、証券業務、その他の金融サービス |
| 準拠の表明 | SSBJが公表する基準に「準拠して作成しております」 |
| 根拠の規定 | 2026年2月20日の改正府令の附則第2条第1項ただし書きにより、開示府令第19条の9第1項に基づく |
| 使った基準 | 2026年3月13日に改正された、適用基準・一般基準・気候基準の3つ |
| 報告期間 | 2025年4月1日〜2026年3月31日(連結会計年度と同じ) |
| 承認 | 2026年6月17日、ディスクロージャー委員会が承認 |
開示府令は、上場会社の開示を定めた内閣府令です。第19条の9は、一定の会社にSSBJ基準での記載を求める規定です。改正府令の附則第2条第1項は、まず義務の始まる年度を決めています。平均時価総額3兆円以上の会社では、2027年3月31日以後に終わる年度からです。ただし書きは、施行日以後に出す有報にも適用できると定めています。施行日は2026年2月20日です。
制度の全体は、SSBJ基準の有価証券報告書への適用で解説しています。
欄は「(1) サステナビリティ関連記載事項」と「(2) 人的資本に関する開示」に分かれています。(1)の見出しは次の順です。
(2)は、有報の「従業員の状況等」を見るよう案内しています。
2〜4の見出しは、まず「全社共通」の記載から始まります。そのあとに、テーマごとの記載が続きます。テーマは、環境の持続性、人的資本、人権尊重、公正・誠実な企業活動、情報セキュリティの5つです。
テーマを選ぶ手がかりには、SASBスタンダードを使っています。SASBスタンダードは、産業ごとに開示の項目をまとめた基準です。商業銀行や投資銀行・ブローカーなど、7つの産業を特定しています。そのうえで、財務的影響と発生可能性を評価して、次のリスクと機会を識別しています。
| テーマ | トピック | 区分 |
|---|---|---|
| 環境の持続性 | 気候変動 | リスク・機会 |
| 環境の持続性 | 自然資本、サーキュラーエコノミー | 機会 |
| 人的資本 | 人材基盤 | リスク・機会 |
| 人的資本 | 労働環境 | リスク |
| 人権尊重 | 人権尊重 | リスク |
| 公正・誠実な企業活動 | 企業倫理、AML/CFT/金融犯罪 | リスク |
| 情報セキュリティ | データセキュリティ、サイバーセキュリティ | リスク |
AML/CFTは、マネー・ローンダリング対策とテロ資金供与対策のことです。気候以外のテーマには、SSBJ基準に個別の定めがありません。そのため、SASBスタンダードを考慮したと書いています。SASBの指標は、業績の測定やモニタリングに使っていないため開示していません。
取締役会が、サステナビリティのリスクと機会の監督に責任を負うと書いています。取締役会の諮問機関として、リスク委員会を置いています。外部有識者の知見を活用する体制だと説明しています。
執行側では、執行役社長が委員長のサステナビリティ推進委員会が審議・調整します。経営会議や経営政策委員会も、関連する事項を審議します。執行側で議論した主な事項は、年1回以上、取締役会に報告されます。
環境の取り組みは、グループCSuOが企画・推進すると書いています。気候関連リスク管理の枠組みは、グループCROが作り、運営します。CROは、最高リスク管理責任者(Chief Risk Officer)の略です。
取締役会全体が備えるべきスキルの1つに「サステナビリティ」を挙げています。役員報酬では、「株式報酬Ⅱ」の評価指標に「サステナブルファイナンス額」などを入れています。気候の評価項目だけを区分して識別することはできない、と書いています。
リスク管理では、リスクと機会を「潜在的な財務的影響」と「発生可能性」で評価します。財務への影響が出るまでの流れは、「シナリオパス」として分析しています。選んだ重要なリスクと機会は、全社の「トップリスク」との整合を定期的に確認しています。
全体の管理は、リスクアペタイト・フレームワーク(RAF)の中で行うと書いています。RAFは、事業戦略・財務戦略とリスク管理を一体で運営する枠組みです。2026年4月現在のトップリスクには、次のものなどが含まれます。「環境・気候変動影響の深刻化と各国政策の多様化への対応」と「サイバー攻撃」です。
人的資本、人権尊重、公正・誠実な企業活動、情報セキュリティでは、シナリオ分析をしていません。手法が「一般的に確立されていない」ためと書いています。
時間軸は、短期を1年以下、中期を1年超5年以下、長期を5年超と定めています。単年度の業務計画と、3〜5年のKPIの設定に合わせたと説明しています。
気候のリスクは、「お客さまに対する投融資(信用リスク)に集中」していると書いています。特に、電力や資源など排出の多いセクター向けです。物理的リスクについては、集中している部分はないとしています。お客さまが国内外に広く分布しているためです。
当期の財務への影響は、移行リスク、物理的リスク、機会のいずれも「重大な影響はありません」と書いています。将来の影響は、数字で示していません。不確実性が極めて高く、「定量的に捉えることは有用ではありません」としています。そのかわり、影響の中身を文章で説明しています。
シナリオ分析は、NGFSのシナリオを使っています。NGFSは、Network for Greening the Financial Systemの略です。有報は、各国の金融機関が採用しているシナリオだと説明しています。
| 項目 | 移行リスク | 物理的リスク |
|---|---|---|
| シナリオ | Net Zero 2050、Delayed Transition、Below 2℃、Current Policies | |
| 時間軸 | 2050年まで | 2100年まで |
| 対象のリスク | 規制や技術、市場などの変化 | 急性(風水災、山火事)、慢性(気温変化) |
| 分析の範囲 | 与信取引。電力、石油・ガス、石炭、鉄鋼、自動車、海運、航空、セメント、化学の9セクター | 与信取引、担保不動産、自社の資産(建物、備品等) |
| 見たもの | お客さまの業績悪化に伴う与信コスト | 自社の資産の毀損額、担保不動産の毀損に伴う与信コスト、お客さまの業績悪化に伴う与信コスト |
| 実施時期 | 2026年3月期 | 2026年3月期 |
炭素価格は、NGFSの値を排出のコストと仮定しています。お客さまが価格に転嫁する率を一定に置いて、財務への影響を推定しています。エクスポージャーと資産額は、基準年度末の値で2050年・2100年まで一定としています。エクスポージャーは、リスクにさらされている投融資の額のことです。
結果は、移行リスクでは「単年度の平均与信コストは期間損益の範囲内」と書いています。物理的リスクでは「期間損益を大きく下回り」と書いています。どちらも、レジリエンスへの影響は「限定的」としています。与信コストの金額は書かれていません。
移行計画としては、「〈みずほ〉のネットゼロ移行計画」を策定していると書いています。
排出量はGHGプロトコル(2004年)で測っています。GHGプロトコルは、排出量算定の国際基準です。Scope1は自社の直接の排出です。Scope2は、買った電気や熱を作るときの排出です。Scope3は、それ以外の取引先などでの排出です。
| 区分 | 2026年3月期(単位:Mt-CO2e) |
|---|---|
| Scope1 | 0.02 |
| Scope2(ロケーション基準) | 0.14 |
| Scope2(マーケット基準) | 0.05 |
| Scope3(カテゴリー15:投資のみ) | 1,012.89 |
Mt-CO2eは、CO2に換算した百万トンです。範囲を決める方法は、経営支配力アプローチです。運用の方針や業務管理を実際に左右できる事業体の排出を集める方法です。自社の排出が気候のリスクと機会に与える影響は「限定的」だと書いています。
国内のScope2は、環境省の「電気事業者別排出係数」を使っています。ロケーション基準は全国平均係数、マーケット基準は基礎排出係数です。海外のロケーション基準は、国際エネルギー機関(IEA)の国別係数です。
Scope3は、カテゴリー15(投資)を、PCAFスタンダードで測っています。PCAFは、金融機関が投融資先の排出を測る方法を定めた枠組みです。投融資先の排出に、帰属係数をかけて求めます。帰属係数は、投融資の残高が投融資先の企業価値に占める割合です。住宅ローンでは物件価値を、ソブリン債では購買力平価で調整したGDPを使います。こうして求めた量を、ファイナンスド・エミッションと呼びます。
| 活動 | ファイナンスド・エミッション | 算定の対象 |
|---|---|---|
| 資産運用 | 233.32 Mt-CO2e | 運用資産残高の81.7%(64,785,561百万円) |
| 商業銀行 | 779.58 Mt-CO2e | グロス・エクスポージャーの89.6%(140,673,073百万円) |
対象外の資産は、算定の手法が未確立か、データの入手が困難なものだと書いています。商業銀行の対象には、未実行のローン・コミットメントを含みます。対象のグロス・エクスポージャーのうち、その割合は28.2%です。産業別の内訳は、TCFD提言などの19セクターとその他に分けています。TCFDは、気候関連財務情報開示タスクフォースの略です。
そのほかの気候の指標と目標は次のとおりです。
| 項目 | 2026年3月期の実績 | 目標 |
|---|---|---|
| 石炭火力発電所向け与信残高 | 2,399億円(与信残高全体の0.15%、2019年度比▲30.2%) | 2030年度に2019年度比50%削減、2040年度までに残高ゼロ。みずほ銀行・みずほ信託銀行が対象 |
| 環境・気候変動対応ファイナンスの組成額 | 約8.0兆円 | 2019〜30年度の累計で50兆円 |
| トランジション出資枠・価値共創投資の総額 | 54億円(期末までの累積投資実行額) | 記載なし |
| 内部炭素価格 | 意思決定に用いていない | ― |
サステナブルファイナンス全体では、2019〜2030年度の累計で100兆円を目標にしています。そのうち50兆円が、環境・気候変動対応ファイナンスの目標です。
気候以外のテーマでは、次の指標を出しています。人的資本、人権尊重、公正・誠実な企業活動、情報セキュリティでは、目標を設定していないと書いています。
| テーマ | 指標 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 人的資本 | エンゲージメントスコア | 65% |
| 人的資本 | インクルージョンスコア | 69% |
| 人的資本 | 女性管理職比率 | 22% |
| 人的資本 | 海外現地採用社員の管理職比率 | 87% |
| 人権尊重 | 強化DD実施件数 | 4件 |
| 公正・誠実な企業活動 | コンプライアンスに係る金銭的損失の適時開示件数 | 0件 |
| 情報セキュリティ | データセキュリティに係る金銭的損失の適時開示件数 | 0件 |
| 情報セキュリティ | 役員のサイバーセキュリティ研修参加率 | 100% |
強化DDは、取引先が重大な人権侵害に関わる場合に、事実や対応を確かめる手続きです。DDはデューデリジェンス(詳しい調査)の略です。
有報が経過措置として名前を挙げているのは、比較情報の省略だけです。比較情報は、前の年度の数字のことです。
| 措置 | 有報の記載 |
|---|---|
| 比較情報の省略 | 使った。適用基準第93項、一般基準第42項、気候基準第102項の経過措置により、比較情報を開示していない |
| 気候だけの開示 | 使った旨の記載はない。気候以外の4つのテーマも書いている |
| Scope3の省略 | 使った旨の記載はない。Scope3はカテゴリー15を開示している |
| 二段階開示 | 使った旨の記載はない。SSBJ基準の部分は有報の中に書いている |
| 産業別の内訳 | 気候基準C7項に基づき、GICS別の内訳は開示していない |
二段階開示は、SSBJ基準の部分を後から訂正報告書で出せる措置です。GICSは、世界で広く使われる産業の分類です。
サステナビリティの欄に、第三者保証を受けた旨の記載は見当たりませんでした。各指標の注記には、「第三者によって認証されたものではありません」とあります。2つの気候の目標にも、「第三者による認証は受けておりません」と書いています。
有報の監査報告書は、EY新日本有限責任監査法人が出しています。対象は、連結財務諸表などと内部統制報告書です。
欄の内容は、2026年6月17日にディスクロージャー委員会が承認しました。この委員会は、情報開示態勢について審議・調整する会議体です。コーポレート・ガバナンスの欄には、情報開示統制の強化のために設置したとあります。
Scope3の数字には、次の確認の手順を書いています。
Scope3の数字は、有報の提出日現在で判断したものだと書いています。データの誤りが後で分かると、記載が変わる可能性があるとも書いています。投融資先が算定の前提を変えた場合も同じです。
サステナブルファイナンスの集計では、各カンパニー業務部がチェックリストで対象を確かめます。その結果を受けて、サステナビリティ企画部が対象を特定します。