更新日 2026年11月3日
国のエネルギー基本計画は、2021年の第6次から2025年の第7次で、「エネルギー安全保障」の出てくる割合が3倍、「電力需要」が約4倍になりました。上場企業の有価証券報告書でも、この1年で「電力の安定確保」を書く会社が22%増え、「脱炭素」は5%増にとどまります。脱炭素をやめたのではなく、その上に「電気をどう確保するか」が乗ってきました。
第7次は「2050年カーボンニュートラル」を軸にした書き方から、データセンターや半導体で増える電力需要を、安全保障を保ちながら脱炭素の電源でまかなう書き方に移りました。
| 言葉(1万字あたりの回数) | 第6次(2021年) | 第7次(2025年) |
|---|---|---|
| エネルギー安全保障 | 0.8 | 2.4 |
| 電力需要 | 1.1 | 4.2 |
| データセンター | 0.5 | 2.0 |
| 半導体 | 0.8 | 2.3 |
| 安定供給 | 6.7 | 9.8 |
| 脱炭素 | 15.6 | 23.3 |
| カーボンニュートラル | 11.2 | 6.4 |
| 2050年 | 8.6 | 4.9 |
| 水素 | 16.5 | 10.5 |
「脱炭素」はむしろ増えています。減ったのは「カーボンニュートラル」「2050年」「水素」で、遠い目標を語る言葉から、いまの電源の話に重心が移っています。
第6次は原子力について「可能な限り原発依存度を低減する」と書いていました。第7次では、再生可能エネルギーと原子力を、エネルギー安全保障に役立ち脱炭素の効果が高い電源として「最大限活用する」と書いています。
資源エネルギー庁の契約を使い道で分けると、金額の85%以上が国家石油備蓄の管理や石油・天然ガスの探査でした。この割合は3年続けてほとんど動いていません。お金の面では、安定確保がずっと本体です。
| 使い道(資源エネルギー庁の契約金額) | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|
| 備蓄・資源の確保(石油・ガス・鉱物) | 86% | 85% |
| 原子力・次世代炉 | 7% | 9% |
| 脱炭素(再エネ・省エネ・水素・CCS) | 6% | 5% |
| 電気・ガス・燃料の価格の手当て | 1% | 0% |
脱炭素の契約は、件数では約4割を占めます。小さな調査や事業が多く、1件の金額が小さいためです。2025年度の総額は1,329億円でした。
同じ3,924社の有価証券報告書を1年前と比べると、伸びたのは電気の確保と需要の言葉でした。
| サステナビリティの欄に書いた会社 | 1年前 | 今 | 増え方 |
|---|---|---|---|
| 電力需要の増加 | 19社 | 29社 | +53% |
| 電力の安定確保・安定供給 | 200社 | 243社 | +22% |
| データセンター | 121社 | 145社 | +20% |
| 蓄電池 | 131社 | 152社 | +16% |
| 電力・燃料の価格の上昇 | 524社 | 568社 | +8% |
| 脱炭素 | 1,452社 | 1,531社 | +5% |
| カーボンニュートラル | 1,184社 | 1,210社 | +2% |
会社の言葉は、国の言葉とも違います。「エネルギー安全保障」と書いた会社は12社だけで、多いのは「電気代と燃料費が上がる」(568社)と「電気を確保したい」(243社)でした。国は安全保障と呼び、会社は自分のコストと調達の話として書いています。
脱炭素を書く会社はまだ1,500社を超え、電気の確保を書く会社の6倍以上います。軸足が入れ替わったのではありません。脱炭素の計画に、どの電源を、いくらで、どれだけ確保するかの話が重なってきました。
サステナの担当に求められることも、排出量の算定や開示に加えて、電気の調達の契約や、電力需要の見通しに広がります。PPA(発電事業者との長期の電力契約)や再エネの調達を書いた会社は、この1年で192社から210社に増えました。