更新日 2026年11月1日
EUタクソノミーは環境の面で持続可能な経済活動をEUが定めた分類です。CSRD(企業サステナビリティ報告指令)の対象の事業会社は、売上・設備投資・事業費のうち分類に合う割合を開示します。2026年1月1日からは重要性の基準と簡単な様式を入れた改正が適用されています。分類の条件、開示の指標、改正の中身、日本企業のEU子会社への影響を、
根拠はタクソノミー規則(規則(EU)2020/852)です。2020年6月22日にEU官報に載り、7月12日に発効しました。規則が大枠を定め、活動ごとの細かい基準は欧州委員会の委任規則が定めます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何を | 環境の面で持続可能な経済活動を、EU共通の基準で分類する |
| 誰に | CSRDで報告する会社(会計指令の第19a条・第29a条の会社)、金融商品を出す金融機関など |
| 開示の場所 | 年次報告書(マネジメントレポート)の中のサステナビリティ報告 |
| いつから | 気候の2目的は2022年1月1日、ほかの4目的は2023年1月1日から開示の規定を適用 |
| 2026年の改正 | 委任規則(EU)2026/73。2026年1月1日から適用 |
規則第1条は適用の範囲を3つ挙げています。環境に良いとうたう金融商品や社債の基準を定めるEUや加盟国の措置、金融商品を出す金融機関、非財務情報を公表する会社です。このページでは主に会社の開示を扱います。
規則第3条は、ある経済活動が持続可能と認められる条件を4つ定めています。4つすべてを満たす活動を「適合」と呼びます。委任規則に載っている活動は、条件を満たすかにかかわらず「適格」と呼びます。
| 条件 | 中身 |
|---|---|
| 実質的な貢献 | 6つの環境目的のうち1つ以上に、実質的に貢献する |
| 著しい害を与えない | ほかの環境目的に、著しい害を与えない(DNSH) |
| 最低限の保護措置 | 人権などの国際指針に沿った手続きを持つ |
| 技術基準 | 欧州委員会が委任規則で定めた、活動ごとの基準を満たす |
6つの環境目的は第9条が定めています。開示の様式では目的ごとに略号を使います。
| 環境目的 | 略号 | 基準を定める委任規則 |
|---|---|---|
| 気候変動の緩和 | CCM | 気候委任規則(EU)2021/2139 |
| 気候変動への適応 | CCA | 同上 |
| 水と海洋資源の持続可能な利用と保全 | WTR | 環境委任規則(EU)2023/2486 |
| 循環経済への移行 | CE | 同上 |
| 汚染の防止と管理 | PPC | 同上 |
| 生物多様性と生態系の保護と回復 | BIO | 同上 |
活動には番号が付いています。たとえば新しい建物の建設は「CCM 7.1」、植林は「CCM 1.1」です。
実質的な貢献には2つの特別な型があります。1つは気候変動の緩和での移行活動で、低炭素の代わりがまだない活動です(第10条2項)。その分野で最も良い排出の水準であることなどが条件です。もう1つはほかの活動の貢献を直接可能にする「実現活動」です(第16条)。
著しい害の中身は、第17条が目的ごとに定めています。たとえば温室効果ガスを大きく増やすことや、生態系の状態を大きく損なうことです。製品やサービスの一生を通じた影響で判断します。
技術基準は確かな科学の根拠に基づき、できるだけ数値の基準にします(第19条)。移行活動の基準は少なくとも3年ごとに見直します。
規則第18条は活動を行う会社に手続きを求めています。OECD多国籍企業行動指針と、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿う手続きです。ILO(国際労働機関)の8つの基本条約と、国際人権章典の原則も含みます。
欧州委員会の助言機関であるサステナブル・ファイナンス・プラットフォームは、2022年10月に報告書を出しました。この報告書は確かめる分野を4つにまとめています。人権(労働者の権利を含む)、贈収賄・汚職、税、公正な競争です。
| 報告書が示す、満たさないと見る目安 | 例 |
|---|---|
| 手続きがない | 4分野について、適切なデューデリジェンス(調査と対策の手続き)がない |
| 結果として違反がある | 労働法や人権の裁判で、最終的に責任を認められた |
| 対話に応じない | OECDの各国の窓口(NCP)が受理した案件で、相手との対話を拒む |
| 指摘に答えない | ビジネスと人権リソースセンターの指摘に、3か月以内に答えない(2年以内の指摘が対象) |
この報告書は助言で、法律上の拘束力はありません。
規則第8条は事業会社に3つの割合の開示を求めています。売上、設備投資(CapEx)、事業費(OpEx)のうち、分類に合う活動に関わる割合です。計算の方法と様式は、開示委任規則(EU)2021/2178が定めます。
| 指標 | 何の割合か |
|---|---|
| 売上 | 適合する活動に関わる製品・サービスから得た売上の割合 |
| 設備投資(CapEx) | 適合する活動に関わる資産や工程への設備投資の割合 |
| 事業費(OpEx) | 適合する活動に関わる資産や工程への事業費の割合 |
改正後の附属書IIでは、事業会社の様式は2つです。様式1は3つの指標をまとめた表です。様式2は指標ごとに活動の内訳を示す表です。
| 様式1の主な列 | 書くこと |
|---|---|
| 合計(2) | 各指標の分母 |
| 適格の割合(3) | 適格な活動の割合。適合かどうかは問わない |
| 適合の金額と割合(4)(5) | 適合する活動の金額と割合 |
| 目的別(6)〜(11) | 6つの目的ごとの適合の割合。合計は(5)と同じ |
| 実現活動・移行活動(12)(13) | 適合のうち、それぞれの型に当たる割合 |
| 重要でない活動(14) | 重要でないとして評価しなかった活動の割合 |
| 前年度(15)(16) | 前の年度の適合の金額と割合 |
1つの活動が複数の目的に貢献する場合、様式2では各目的の列に書きます。様式1と様式2の「合計」の行では、二重に数えないよう、最も関係の深い目的1つだけで数えます。
適格な割合がゼロの指標は、その指標の様式2を省けます。
欧州委員会は2025年7月4日、開示・気候・環境の各委任規則を改める委任規則を採択しました。これが委任規則(EU)2026/73で、2026年1月8日にEU官報に載りました。
| 項目 | 改正の内容 |
|---|---|
| 重要性の基準 | 合計で売上・CapEx・OpExの10%未満の活動は、適格・適合の評価を省ける。指標ごとに判断する |
| 省いた活動の開示 | 様式1の列(14)に割合を書く。業種と、重要でない理由も開示する |
| OpExの扱い | OpEx全体が事業の形に照らして重要でなければ、OpExの割合を出さなくてよい。総額と理由は書く |
| 様式 | データの項目を事業会社で64%、金融機関で89%減らした |
| 原子力とガス | 専用の様式(附属書XII)を削除した。指標ごとの項目は166から4に減る |
| DNSHの化学物質の基準 | 汚染の防止に関する共通の基準(付録C)を差し替えた |
OpExを重要でないとする判断の方法は、委任規則に決まっていません。欧州委員会の手引きの案は会計指令の重要性の考え方とそろえるよう求めています。
付録Cの差し替えでは、電気電子機器の有害物質の規制(RoHS指令)と、オゾン層を壊す物質の例外を明確にしました。CLP規則(化学品の分類と表示の規則)で会社が自ら分類した物質を問う規定は、削られています。
新しい付録Cは、活動が特定の物質の製造や使用につながらないことを求めます。その中には0.1%を超える濃度の高懸念物質も入ります。対象は候補に載ってから18か月以上たった物質です。代わりの物質や技術がないことを評価して記録し、管理された条件で使う場合は除かれます。
金融機関の指標の代表はGAR(グリーン資産比率)です。GARは銀行の資産のうち適合する活動に向かう割合を示します。
| 項目 | 改正の内容 |
|---|---|
| 2年間の免除 | 2027年12月31日まで、決まった一文を年次報告書に載せれば、詳しい指標を出さなくてよい |
| 計算から外すもの | CSRDで報告しない会社への貸出や投資(任意で報告する会社などを除く)。デリバティブ、現金、のれんなども外す |
| 重要性の基準 | 使い道が分かる資産の合計の10%未満は、評価を省ける |
| 指標を出さない選択 | 銀行は、指標に関わる活動の純売上高が、グループの売上の10%未満なら、その指標を出さなくてよい |
| 延期した指標 | 手数料の指標と売買目的の資産の指標は、2028年1月1日から |
2年間の免除を使うには、タクソノミーに沿う活動があると主張しない旨の一文を載せます。免除は「すべてか無しか」で、一部の指標だけを出すことはできません。
使い道が決まっていない貸出は、事業会社が開示した指標をそのまま使って評価します。事業会社の開示が銀行の指標の材料になる仕組みです。
| 年度 | 使うルール |
|---|---|
| 2024年度まで | 改正前のルール |
| 2025年度(2026年に公表) | 原則は改正後のルール。改正前のルールを選ぶこともできる |
| 2026年度以後 | 改正後のルール |
| 金融機関の2025・2026年度 | 条件を満たせば、詳しい指標の開示を免除 |
改正前のルールを選ぶ場合は、そのルールをすべて使います。たとえば銀行は詳しい様式と、改正前のGARの計算方法を使います。どちらのルールを使ったかは、報告の中に書きます。
決算期が暦年と違う会社も、2026年に公表する報告では改正前のルールを選べます。手引きの案は10月に始まり10月に終わる年度を例に挙げています。
改正後のルールで2025年度を報告すると、前年度の列には2025年に公表した数字を書きます。計算の方法が違うので、その旨を説明します。改正後の方法で計算し直した数字を、補足として載せることもできます。
委任規則は欧州議会と理事会の審査を経て官報に載りました。審査の期間は4か月で、2か月延ばせます。発効は官報に載った日から20日目で、数えると2026年1月28日です。
3つの監督機関のうち、EBA(欧州銀行監督機構)は銀行を受け持ちます。ESMA(欧州証券市場監督機構)は証券、EIOPA(欧州保険年金監督機構)は保険です。
タクソノミーの開示義務はCSRDの対象と同じ会社にかかります。規則第8条が会計指令の第19a条と第29a条の会社を対象にしているためです。2026年のCSRDの見直しで、この対象は純売上高4.5億ユーロ超かつ平均従業員1,000人超に絞られました。
| 論点 | 扱い |
|---|---|
| 開示の場所 | サステナビリティ報告の中で、タクソノミーの開示をする |
| 保証 | 監査人などの限定的保証の意見は、第8条の開示が守られているかも対象にする |
| 電子タグ | 第8条の開示にもタグを付ける。タグのルールができるまでは不要 |
| 対象外になった会社 | CSRDの義務がなくなれば、第8条の開示義務もかからない |
タクソノミーはほかのEUの制度でも使われています。SFDR(金融機関のサステナビリティ開示規則)では、金融商品の適合の割合の開示に使います。
最低限の保護措置はSFDRの「著しい害を与えない」原則に沿うことも求めています(第18条2項)。
日本企業がタクソノミーに関わる道は、主に3つです。
| 関わり方 | 条件と中身 |
|---|---|
| EU子会社が開示する | 子会社の単体か、EUの中間持株会社の連結で、CSRDの基準を超える場合。売上・CapEx・OpExの割合を開示する |
| グループ全体の報告をEUで出す | EU域内の売上が大きい域外のグループ。基準の案(ESRS-40a)では、タクソノミーの項目を削っている |
| EUの銀行の指標に使われる | 使い道が決まっていない貸出は、借り手が開示した指標で評価される。CSRDで報告しない会社への貸出は、原則として計算に入らない |
域外のグループ向けの報告基準の案は、ESRS-40aと呼ばれます。ESRSは欧州サステナビリティ報告基準の略です。EFRAG(欧州委員会に報告基準を助言する団体)が2026年7月に公表しました。案の説明によれば、タクソノミーの報告義務はこの報告には当たりません。ESRS-40aはまだ案で、内容は決まっていません。
10%の基準は開示する会社自身の売上・CapEx・OpExの合計に対して判定します。
Q. 太陽光の売上が4%、風力が5%です。合計9%なので、評価を省けますか。
A. 手引きの案はIFRS第8号(事業セグメントの開示の基準)との整合を求めています。2つを「再生可能エネルギー」の報告セグメントにしているなら、重要でないとは扱えません。報告セグメントにしていなければ、合計が10%を超えないので評価を省けます。
Q. 1つの活動のうち、適合しない一部の国の分だけを重要でないとして外せますか。
A. 外せません。様式の注記は、重要な活動はその全体を評価するよう定めています。手引きの案は、一部を外すと適格や適合の割合がゆがむと説明しています。
Q. ある国の事業の売上が10%未満です。その国の事業をまとめて外せますか。
A. 手引きの案は条件付きで認めています。IFRS第8号の開示と食い違わないこと、重要な活動を全体で評価すること、外した活動の業種を開示することです。
Q. 業種の書き方に決まりはありますか。
A. NACE(EUの統計用の産業分類)を使うことが勧められていますが、義務ではありません。
Q. 取引先が重要でないとした活動について、銀行が自分でデータを持っています。適合として数えられますか。
A. 手引きの案では、どちらも選べます。取引先の開示に合わせて重要でないとするか、手元のデータで適合として報告するかです。
Q. グリーンボンドを出す金融機関も、2年間の免除を使えますか。
A. 使えません。2026年と2027年にグリーンボンドを出す金融機関は、免除の対象外です。SFDRで適合の割合をうたう金融商品を扱う場合も同じです。
| 予定 | 状況 |
|---|---|
| 活動ごとの基準の見直し | 2026年3月に案を公表。2026年夏までの採択を予定していた。採択は確認日時点で未確認 |
| 開示委任規則の見直し | 3つの監督機関が2026年10月に助言を出す予定。改正の時期は未定 |
| 手引き(よくある質問) | 2025年12月に案を原則承認。正式な版は確認日時点で未確認 |
| 新しい活動の追加 | 今回の見直しには入れず、後の取り組みで扱う |
| 金融機関の免除の終了 | 2027年12月31日。欧州委員会はそれまでに基準と開示の見直しを終える計画 |
基準の見直しの案は、表現の整理、基準を満たすことの示し方、最近の法律や技術への対応を扱います。EBAの討議資料はOpExの指標を銀行の指標の計算でどう扱うかも論点にしています。