更新日 2026年11月1日

制度の解説|削減目標

SBTiの企業ネットゼロ基準 第2版

SBTi(企業の温室効果ガスの削減目標を審査して認める国際団体)が、目標の立て方を定めた基準を改め、第2版を公表しました。法令ではない任意の基準ですが、目標がパリ協定(気温上昇を抑える国際合意)に沿っていると外部に示せるため参加が広がり、日本は2,580社と国別で最も多くなっています。参加していない会社にも、参加企業の取引先として、削減目標や排出量の数字を求める依頼が回ってきます。

制度の解説SBTi

あなたの会社はどれか

立場見分け方すること
SBTiに参加している会社SBTiのサイトの企業一覧(Target dashboard。英語の社名で検索する)に社名がある。目標を認められた会社のほか、コミット(2年以内に目標の認定を受けると公に宣言すること)した会社も載る第2版に切り替える時期と、規模の区分(要件の重いカテゴリーAか、軽いB)を確かめる
参加していないが、取引先から求められる会社一覧に載っていない。営業と購買に、削減目標や排出量を問う取引先のアンケートが届いていないかを聞く自社の排出量を数え、目標の有無を答えられるようにする
いまは関係が薄い会社一覧になく、アンケートも届いていない当面することはない。主な納め先が一覧に載っているかは見ておく

何が変わるか

  1. Scope3の目標が必須に カテゴリーAの企業は、Scope3(仕入れ、輸送、販売した製品の使用など、自社の外で出る排出)の目標が必須になります。Scope3は15の分類に分かれ、全体の5%以上を占める分類はすべて対象です。目標の型には、直接取引する仕入れ先や顧客のうち、排出ゼロに向けて動いている先の割合を高めるものもあります。
  2. 電力の買い方 低炭素の電力(再エネや原子力など)として数えられる契約は、新しい発電所を増やす買い方を数えるため、運転開始から15年以内の発電所のものに限られます。今の契約は契約期間中は制限の対象外です。
  3. 大きな会社の確認と計画 SBTiは企業の排出量のデータを自ら確かめないため、カテゴリーAの企業は、基準にする年の排出量に第三者保証(外部の機関が数字を確かめること)を受けます。移行計画(目標を実行する取組みと前提を書いた計画)は、目標の審査が終わってから15か月以内に開示します。

いつ、何をするか

時期すること
2026年6月11日(済)SBTiが第2版を公表
2027年1月31日企業が今の版で、短期目標とネットゼロ目標(排出を実質ゼロにする目標)に別々にコミットできる最後の日。第2版では2つの目標が1つの基準にまとまる
2027年2月1日〜2028年1月31日第2版での審査が始まる。企業は今の版と第2版のどちらでも目標を出せる
2028年2月1日から企業の新しい提出はすべて第2版。認定済みの企業も、次の目標期間(2030〜35年)の目標を第2版で立てる

すでに認められた短期目標は取り消されず、目標期間の終わりまで有効です。

まず確かめること

SBTiに参加している会社

  1. グループ連結の売上高や従業員数を下の表と比べ、カテゴリーAかBかを判定します(経理)。
  2. Aなら、基準年の排出量の第三者保証と、移行計画の開示の準備を始めます(サステナ・経理)。
  3. 今の目標の目標年と、5年ごとの見直しの日から、再審査の期限を確かめます(サステナ)。
  4. 電力の契約ごとに発電所の運転開始の年を確かめ、新しく結ぶ契約の選び方を決めます(総務・調達)。
条件区分
純売上高4億5,000万ユーロ以上か、従業員1,000人以上A(どの国の会社も)
Scope1・2(自社の燃料と、買った電気・熱による排出)が1万t(CO2換算)以上日本に親会社があればA
総資産2,500万ユーロ、純売上高5,000万ユーロ、従業員250人のうち二つ以上を満たす日本に親会社があればA
どれにも当たらないB

2・3行目は、親会社の国が世界銀行の所得分類(国を所得の水準で分けた区分)で高所得国のときの条件で、日本はこれに当たります。

参加していないが、取引先から求められる会社 届いた依頼文の言葉から返すものを決めるなら「取引先からのCO2の問い合わせ」へ。

  1. 届いたアンケートで、聞かれているのが削減目標の有無か、排出量か、その両方かを確かめます(営業・購買)。
  2. 電気と燃料の請求書から1年分の使用量を集め、国が公表する係数を掛けてScope1・2の排出量を出します(総務・経理)。手順は「Scope1・2は請求書12か月分と国の係数で出せる」にあります。
  3. SBTiへの参加の義務はないので、目標を立てていなければその旨と、出した排出量を答えます(サステナ・営業)。

よく迷うところ

Q 日本の子会社が自社だけで目標を立てる場合、区分はどう決まりますか。
A 親会社のグループ全体の連結の数字で判定します。

Q 目標を達成できなかったら、SBTiから外されますか。
A 条件を満たせば外されません。使える手段を使い、妨げる要因と対応を毎年報告していれば、枠組みに残れます。基準はこれを、目標を「最善の努力」で追うことと呼んでいます。

細かい決まり条文・例外・数字の根拠(実務の人向け)

基準と審査の組織 SBTは、パリ協定と整合する削減目標を指します。企業ネットゼロ基準はCNZS、第2版はV2.0とも書かれます。今の基準は、ネットゼロの第1.3.1版と短期目標の第5.3版です。第2版は、この2つを一つにまとめた新しい版です。

参加企業は2026年8月時点で世界に13,969社あり、日本の2,580社はその約18%です。

項目内容
何が削減目標の立て方、実行の方法、進み具合の報告と評価を定める基準
発効日改訂履歴の発効日は2027年2月1日
審査する組織SBTi Services(SBTiの完全子会社)。2027年2月1日に第2版での審査を始める
法令との関係基準への適合は法規制の順守の代わりにならないと、免責事項に書かれている

SBTi Servicesの移行ガイドでは、第2版の審査用資料は2026年10月1日に公表する予定とされていました。

第1.3.1版で出せる締切 SBTi Servicesの移行ガイドが示す締切は2028年1月31日で、2028年2月1日以降の提出は第2版です。SBTiのFAQと基準の要約は「2027年末まで」と書いています。

第2版で必須になる3つの中身 純売上高4億5,000万ユーロ以上か従業員1,000人以上のグループなど、カテゴリーAの企業には、取引先を含む排出(Scope3)の目標、基準年の排出への外部の確認、移行計画の開示がそろって必須になります。Scope3の目標はScope3全体の5%以上を占めるカテゴリーをすべて対象にし、基準年のScope1〜3の排出には少なくとも限定的な第三者保証を受けます。Scope1は自社での燃料の燃焼、Scope2は買った電気や熱の使用による排出です。

削減目標の水準は、電力の証書(非化石証書など)などを差し引かない排出で決まります。Scope2は、ロケーション基準(地域の電力網の平均の排出係数で計算する方法)で計算します。

ネットゼロ目標(排出を残余排出まで減らし、残りを炭素除去で相殺する目標)は任意になります。立てる場合は3つのScopeすべてに短期と長期の目標を立て、残余排出(削り切れずに残る排出)を炭素除去(大気からCO2を取り除くこと)で相殺します。2035年からは、まだ出している排出の1%以上に相当する炭素除去を支えることが求められるので、ネットゼロを掲げる企業は炭素除去の手当てを計画に入れます。

第1.3.1版から変わる10の点 比べる相手は、第1.3.1版と短期目標の基準(第5.3版)です。SBTi Servicesの移行ガイドの対照表では、次のとおりです。

項目第1.3.1版まで第2版
企業の区分一般企業、中小企業、金融機関カテゴリーAとB
基準年2015年以降の年から選ぶデータがそろう直近の年。サイクルごとに新しくする
短期目標の期間提出から5〜10年5年。初回は5年より短くてもよい
Scope1・2合わせて95%以上を対象に含める必要があるScope1とScope2を分け、それぞれ100%を対象
算定から外せる量Scope1・2とScope3で、それぞれ5%まで外せない
Scope3の目標全体の40%以上なら必須。短期は67%以上、長期は90%以上を対象Aは必須。5%以上のカテゴリーをすべて対象。条件つきで除外できる
第三者保証求めていないAは基準年の排出などに限定的保証が必要。Bは推奨
移行計画明確な義務はない全社に作成の義務。Aは開示も必要
進み具合の評価正式な仕組みはない目標サイクルの終わりに評価を受ける
バリューチェーン外の貢献BVCMとして推奨任意の認定制度(OER)に変更

限定的保証は、合理的保証より手続きの範囲が狭い保証です。BVCMはバリューチェーンの外で行う排出削減への投資です。

目標年が2030年以降の企業は、今の目標を保つよう勧められています。

コミット中の企業が使える版 コミット中で、まだ目標が認められていない企業が使える版は次のとおりです。

コミットの期限使える版
2027年1月31日より前第1.3.1版
2027年2月1日〜2028年1月31日第1.3.1版か第2版
2028年1月31日より後第2版

第1.3.1版までの基準で目標を持つ企業の再審査の期限は、次のとおりです。

きっかけ期限
目標年に達した目標年の翌年の年末(例:2026年が目標年なら2027年12月31日)
5年ごとの見直し見直しは基準日から6か月以内。新しい目標が要るなら12か月以内に提出
2027年2月より前に第2版で出したいSBTi Servicesに延長を申し込める

第2版の一部は、経過措置として第1.3.1版の利用者にも開かれます。新しい総量削減の計算、最善の努力の考え方、企業カテゴリーの利用などです。Aの基準に届かない企業は、第1.3.1版のもとで中小企業の扱いを申し出ることができます。

第1.3.1版の改定は、SBTiの公表が2026年4月14日で、環境省の資料では4月29日です。この改定で、短期目標の総量削減の計算を新しい基準年に対応させました。2050年のネットゼロと年4.2%の最低削減率は維持され、従来の方法で認められた目標も有効です。

2035年からの炭素除去の要件は基準に条文があり、移行ガイドはカテゴリーAの要件と説明しています。対象とする量はネットゼロの年に向けて直線で増やし、ネットゼロの年には残余排出の100%を炭素除去で相殺します。

審査のサイクル 第2版は、5年ごとのサイクルで審査と評価をくり返します。

1登録SBTiに登録し、目標を立てられるか、カテゴリーAかBかを確かめる
2コミット(任意)目標を立てる意思を公表する
3目標審査認定された審査機関が、基準に合うかを審査する(「目標審査」は日本語版の訳語)
4毎年の報告審査の次の報告から、進み具合を毎年公表する。抜き取りの確認を受けることがある
5サイクル終了時の評価目標期間が終わってから12か月以内に終える。Aは第三者保証を受けた進捗評価を出す
6次の目標審査前の目標期間の終わりの24か月前から12か月後までに提出する
SBTi企業ネットゼロ基準 第2版 B.4節、SBTi Services「第2版への移行ガイド」から作成

目標の情報は審査の次の報告で公表し、SBTiのダッシュボードへの掲載にも審査から6か月以内に同意します。SBTiも審査機関も、企業の排出量のデータを自ら検証はしません。データの正確さは、企業と保証の提供者が責任を持ちます。

カテゴリーの判定の決まり 第2版の企業の区分はカテゴリーAとBの2つで、規模の大きいAは要件が重く、Bは軽くなります。

条件対象か
SBTiの審査を受けて削減目標を認めてもらう企業対象。法令ではない任意の基準
純売上高4億5,000万ユーロ以上、または従業員1,000人以上(どちらか一つ)カテゴリーA。最終親会社がどの国にあっても同じ
Scope1・2の排出が1万tCO2e(CO2に換算したトン数)以上。または、総資産2,500万ユーロ以上、純売上高5,000万ユーロ以上、従業員250人以上のうち二つ以上最終親会社が世界銀行の所得分類で高所得国にあれば、カテゴリーA
上のどれにも当たらないカテゴリーB
化石燃料の探査や採掘、生産に直接関わる企業当面は目標の審査を受けられない
金融機関の投融資の排出別の基準が扱う

従業員1,000人以上のグループは、売上高にかかわらずカテゴリーAです。従業員数は、常勤に換算した年平均の人数(FTE)です。

  1. 連結で判定 グループ会社は、グループ全体の連結の数字で判定します。目標を子会社の単位で立てる場合も同じです。ただし、複合企業の中で別の事業として運営する子会社は、別の会社とみなされることがあります。
  2. 2期の平均 直近2期の財務諸表などの平均を使います。
  3. ユーロ換算 ユーロ以外で決算する会社は、財務諸表の公表日のロイターの為替レートで換算します。
  4. 地域 最終親会社の設立地で決めます。世界銀行の所得分類を使います。
  5. 時点 登録時に判定し、目標審査のときに確かめます。区分は5年の目標サイクルの間変わりません。

化石燃料の探査や採掘、生産に直接関わる企業のうち、化石燃料の販売や関連サービスからの収入が売上の50%未満の企業などは例外です。

短期目標と長期目標 第2版の短期目標は5年の目標です。長期目標は、遅くとも2050年までに排出を残余の水準まで減らす目標です。

目標Scope1Scope2Scope3
短期目標(5年)全社に必須全社に必須Aに必須
長期目標(2050年まで)目標の立て方による任意任意
ネットゼロ目標任意。立てる場合は3つのScopeすべてに短期と長期の目標を立てる

短期目標の期間は、提出時点で最新の報告期間の初めから5年です。次のサイクルは、前の目標年の翌年から5年です。

Scope短期目標の選び方
Scope1(1) 2050年まで直線で減らす総量目標、(2) 業種別の原単位目標、(3) 設備の入れ替え計画による資産移行目標
Scope2(1) 低炭素電力の割合を高める目標、(2) 総量の削減目標

Scope1で原単位か資産移行の目標を選んだ場合は、長期目標も立てます。この場合は、目標審査の時点で移行計画を公表します。

低炭素電力には、再生可能エネルギー、原子力、CO2の回収・貯留を備えた発電が含まれます。Aの企業は、目標期間の電力使用量の見通しを出します。年平均の伸びが20%を超える見込みなら、Scope2の排出量の目標が必要です。

Aの企業はScope1、2、3の目標を別々に立て、Bの企業もScope1と2を分けます。伝えるために合算して示すことはできますが、評価は目標ごとに行います。

Scope3で外せる排出と目標の型 GHGプロトコル(排出量の算定の国際基準)の15カテゴリーのうち、1〜14が企業ネットゼロ基準の対象です。カテゴリー15(投融資)は、金融機関向けの基準が扱います。次の排出は、条件を満たせば目標から外せます。

カテゴリー外せる排出
1・2(購入品、資本財)中古品の製造までの排出
3(燃料・エネルギー関連)Scope1・2の目標でエネルギー使用を減らして抑える場合
7(通勤)カテゴリー全体
8(借りている資産)運用の管理権がなく、エネルギーの使い方に影響を与える手段もない場合
9(下流の輸送)燃料、経路、輸送手段を左右する契約上の手段がない場合
10(販売した製品の加工)加工の工程が分からないか、加工する会社と契約がない場合
14(フランチャイズ)加盟店の施設やエネルギー使用に影響を与えられない場合

外した場合は、理由、外した量と割合、減らすための取組みを報告します。目標の立て方は、次の3つから選びます。

  1. 全体の総量目標 Scope3の排出を直線で減らします。2050年以前のネットゼロの年に、残余排出をおよそ10%以下にする道筋です。
  2. 取引先の整合目標 直接取引する仕入れ先や顧客のうち、移行中またはネットゼロに整合する先の割合を高めます。
  3. カテゴリーや活動ごとの目標 鉄鋼やセメントなどの調達、輸送、販売した製品の使用など、排出が集中する部分に絞って立てます。

3つ目では、低炭素の素材の調達割合や、低炭素の製品の販売割合を目標にできます。販売した製品の使用(カテゴリー11)にどの方法も使えない場合は、例外の申請ができます。その場合は長期目標と削減の計画が必要です。

Aの企業は、バリューチェーンにある排出集約型活動(EIA)を特定し、量を算定します。EIAは、基準の附属書に列挙された排出の多い活動です。

目標づくりのほかに求められること

  1. 経営の承認 取締役会など最高の意思決定機関が目標に責任を負い、実行を監督します。
  2. 基準年の算定 京都議定書の7種類のガスを含め、GHGプロトコルに沿って算定します。
  3. 実行の順序 自社とバリューチェーンでの直接の削減を優先します。次に、電力網など共有の仕組みでの取組み、最後に業界単位の取組みです。
  4. 毎年の報告 目標ごとの進み具合、取った行動、進捗を妨げる要因を公表します。
  5. 電力の時間ごとの一致 年1万MWh(10GWh)以上の電力を使う地域では、低炭素電力と時間単位で一致した割合を報告します。

電力の証書やカーボンクレジットなどの市場手段は、物理的な排出の算定とは分けて報告します。削減の主張は物理的な排出の算定の変化にもとづき、業界単位の取組みなどは別に報告して、システムへの貢献として主張します。

ほかの制度との関係

制度第2版との関係
GHGプロトコル算定の土台。改訂作業が進んでいる間はSBTiが暫定の指針を出し、経過措置を検討する
ISOのネットゼロ規格SBTiは補い合う関係と説明。両方の認証を受けられる可能性に触れている
EUのESRS E1-1、TPT移行計画を作るときの参考として推奨。ESRSはEUのサステナビリティ開示の基準、TPTは英国の移行計画タスクフォース
金融機関向けネットゼロ基準投融資の排出(カテゴリー15)を扱う別の基準
業種別の基準第2版に合わせて改訂中。移行期間は今の業種別の基準を使う

第2版では、規制が求める開示を満たす責任は企業にあります。

そのほかの今後の予定

時期項目状態
2026年末Scope1の市場手段、電力網など共有の仕組み(活動プール)での取組みの実施ガイダンスFAQに見込みとして記載
2026年後半OER(まだ出している排出への貢献を認める任意の制度)の詳細の公表未公表
2027年OERの開始。第1.3.1版までの目標を持つ企業も参加できるSBTiの計画
未定GHGプロトコルの改訂に合わせた経過措置SBTiが検討する

まだ決まっていないこと

時期項目状態
2026年10〜12月目標の立て方の選択肢に加える方法を確定FAQに見込みとして記載
2027年初め〜年末業種ごとの目標の立て方(業種別の基準)の第2版対応。案を作り、年内に確定SBTiの計画
未定2回目以降の目標期間でどこまで進んでいればよいか(最低進捗基準)、第三者保証の進め方の手引き、削減や貢献を外部にどう言ってよいか(主張に関する方針)公表日は未定