更新日 2026年11月1日
SBTi(企業の温室効果ガスの削減目標を審査して認める国際団体)が、目標の立て方を定めた基準を改め、第2版を公表しました。法令ではない任意の基準ですが、目標がパリ協定(気温上昇を抑える国際合意)に沿っていると外部に示せるため参加が広がり、日本は2,580社と国別で最も多くなっています。参加していない会社にも、参加企業の取引先として、削減目標や排出量の数字を求める依頼が回ってきます。
| 立場 | 見分け方 | すること |
|---|---|---|
| SBTiに参加している会社 | SBTiのサイトの企業一覧(Target dashboard。英語の社名で検索する)に社名がある。目標を認められた会社のほか、コミット(2年以内に目標の認定を受けると公に宣言すること)した会社も載る | 第2版に切り替える時期と、規模の区分(要件の重いカテゴリーAか、軽いB)を確かめる |
| 参加していないが、取引先から求められる会社 | 一覧に載っていない。営業と購買に、削減目標や排出量を問う取引先のアンケートが届いていないかを聞く | 自社の排出量を数え、目標の有無を答えられるようにする |
| いまは関係が薄い会社 | 一覧になく、アンケートも届いていない | 当面することはない。主な納め先が一覧に載っているかは見ておく |
| 時期 | すること |
|---|---|
| 2026年6月11日(済) | SBTiが第2版を公表 |
| 2027年1月31日 | 企業が今の版で、短期目標とネットゼロ目標(排出を実質ゼロにする目標)に別々にコミットできる最後の日。第2版では2つの目標が1つの基準にまとまる |
| 2027年2月1日〜2028年1月31日 | 第2版での審査が始まる。企業は今の版と第2版のどちらでも目標を出せる |
| 2028年2月1日から | 企業の新しい提出はすべて第2版。認定済みの企業も、次の目標期間(2030〜35年)の目標を第2版で立てる |
すでに認められた短期目標は取り消されず、目標期間の終わりまで有効です。
SBTiに参加している会社
| 条件 | 区分 |
|---|---|
| 純売上高4億5,000万ユーロ以上か、従業員1,000人以上 | A(どの国の会社も) |
| Scope1・2(自社の燃料と、買った電気・熱による排出)が1万t(CO2換算)以上 | 日本に親会社があればA |
| 総資産2,500万ユーロ、純売上高5,000万ユーロ、従業員250人のうち二つ以上を満たす | 日本に親会社があればA |
| どれにも当たらない | B |
2・3行目は、親会社の国が世界銀行の所得分類(国を所得の水準で分けた区分)で高所得国のときの条件で、日本はこれに当たります。
参加していないが、取引先から求められる会社 届いた依頼文の言葉から返すものを決めるなら「取引先からのCO2の問い合わせ」へ。
Q 日本の子会社が自社だけで目標を立てる場合、区分はどう決まりますか。
A 親会社のグループ全体の連結の数字で判定します。
Q 目標を達成できなかったら、SBTiから外されますか。
A 条件を満たせば外されません。使える手段を使い、妨げる要因と対応を毎年報告していれば、枠組みに残れます。基準はこれを、目標を「最善の努力」で追うことと呼んでいます。
基準と審査の組織 SBTは、パリ協定と整合する削減目標を指します。企業ネットゼロ基準はCNZS、第2版はV2.0とも書かれます。今の基準は、ネットゼロの第1.3.1版と短期目標の第5.3版です。第2版は、この2つを一つにまとめた新しい版です。
参加企業は2026年8月時点で世界に13,969社あり、日本の2,580社はその約18%です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何が | 削減目標の立て方、実行の方法、進み具合の報告と評価を定める基準 |
| 発効日 | 改訂履歴の発効日は2027年2月1日 |
| 審査する組織 | SBTi Services(SBTiの完全子会社)。2027年2月1日に第2版での審査を始める |
| 法令との関係 | 基準への適合は法規制の順守の代わりにならないと、免責事項に書かれている |
SBTi Servicesの移行ガイドでは、第2版の審査用資料は2026年10月1日に公表する予定とされていました。
第1.3.1版で出せる締切 SBTi Servicesの移行ガイドが示す締切は2028年1月31日で、2028年2月1日以降の提出は第2版です。SBTiのFAQと基準の要約は「2027年末まで」と書いています。
第2版で必須になる3つの中身 純売上高4億5,000万ユーロ以上か従業員1,000人以上のグループなど、カテゴリーAの企業には、取引先を含む排出(Scope3)の目標、基準年の排出への外部の確認、移行計画の開示がそろって必須になります。Scope3の目標はScope3全体の5%以上を占めるカテゴリーをすべて対象にし、基準年のScope1〜3の排出には少なくとも限定的な第三者保証を受けます。Scope1は自社での燃料の燃焼、Scope2は買った電気や熱の使用による排出です。
削減目標の水準は、電力の証書(非化石証書など)などを差し引かない排出で決まります。Scope2は、ロケーション基準(地域の電力網の平均の排出係数で計算する方法)で計算します。
ネットゼロ目標(排出を残余排出まで減らし、残りを炭素除去で相殺する目標)は任意になります。立てる場合は3つのScopeすべてに短期と長期の目標を立て、残余排出(削り切れずに残る排出)を炭素除去(大気からCO2を取り除くこと)で相殺します。2035年からは、まだ出している排出の1%以上に相当する炭素除去を支えることが求められるので、ネットゼロを掲げる企業は炭素除去の手当てを計画に入れます。
第1.3.1版から変わる10の点 比べる相手は、第1.3.1版と短期目標の基準(第5.3版)です。SBTi Servicesの移行ガイドの対照表では、次のとおりです。
| 項目 | 第1.3.1版まで | 第2版 |
|---|---|---|
| 企業の区分 | 一般企業、中小企業、金融機関 | カテゴリーAとB |
| 基準年 | 2015年以降の年から選ぶ | データがそろう直近の年。サイクルごとに新しくする |
| 短期目標の期間 | 提出から5〜10年 | 5年。初回は5年より短くてもよい |
| Scope1・2 | 合わせて95%以上を対象に含める必要がある | Scope1とScope2を分け、それぞれ100%を対象 |
| 算定から外せる量 | Scope1・2とScope3で、それぞれ5%まで | 外せない |
| Scope3の目標 | 全体の40%以上なら必須。短期は67%以上、長期は90%以上を対象 | Aは必須。5%以上のカテゴリーをすべて対象。条件つきで除外できる |
| 第三者保証 | 求めていない | Aは基準年の排出などに限定的保証が必要。Bは推奨 |
| 移行計画 | 明確な義務はない | 全社に作成の義務。Aは開示も必要 |
| 進み具合の評価 | 正式な仕組みはない | 目標サイクルの終わりに評価を受ける |
| バリューチェーン外の貢献 | BVCMとして推奨 | 任意の認定制度(OER)に変更 |
限定的保証は、合理的保証より手続きの範囲が狭い保証です。BVCMはバリューチェーンの外で行う排出削減への投資です。
目標年が2030年以降の企業は、今の目標を保つよう勧められています。
コミット中の企業が使える版 コミット中で、まだ目標が認められていない企業が使える版は次のとおりです。
| コミットの期限 | 使える版 |
|---|---|
| 2027年1月31日より前 | 第1.3.1版 |
| 2027年2月1日〜2028年1月31日 | 第1.3.1版か第2版 |
| 2028年1月31日より後 | 第2版 |
第1.3.1版までの基準で目標を持つ企業の再審査の期限は、次のとおりです。
| きっかけ | 期限 |
|---|---|
| 目標年に達した | 目標年の翌年の年末(例:2026年が目標年なら2027年12月31日) |
| 5年ごとの見直し | 見直しは基準日から6か月以内。新しい目標が要るなら12か月以内に提出 |
| 2027年2月より前に第2版で出したい | SBTi Servicesに延長を申し込める |
第2版の一部は、経過措置として第1.3.1版の利用者にも開かれます。新しい総量削減の計算、最善の努力の考え方、企業カテゴリーの利用などです。Aの基準に届かない企業は、第1.3.1版のもとで中小企業の扱いを申し出ることができます。
第1.3.1版の改定は、SBTiの公表が2026年4月14日で、環境省の資料では4月29日です。この改定で、短期目標の総量削減の計算を新しい基準年に対応させました。2050年のネットゼロと年4.2%の最低削減率は維持され、従来の方法で認められた目標も有効です。
2035年からの炭素除去の要件は基準に条文があり、移行ガイドはカテゴリーAの要件と説明しています。対象とする量はネットゼロの年に向けて直線で増やし、ネットゼロの年には残余排出の100%を炭素除去で相殺します。
審査のサイクル 第2版は、5年ごとのサイクルで審査と評価をくり返します。
目標の情報は審査の次の報告で公表し、SBTiのダッシュボードへの掲載にも審査から6か月以内に同意します。SBTiも審査機関も、企業の排出量のデータを自ら検証はしません。データの正確さは、企業と保証の提供者が責任を持ちます。
カテゴリーの判定の決まり 第2版の企業の区分はカテゴリーAとBの2つで、規模の大きいAは要件が重く、Bは軽くなります。
| 条件 | 対象か |
|---|---|
| SBTiの審査を受けて削減目標を認めてもらう企業 | 対象。法令ではない任意の基準 |
| 純売上高4億5,000万ユーロ以上、または従業員1,000人以上(どちらか一つ) | カテゴリーA。最終親会社がどの国にあっても同じ |
| Scope1・2の排出が1万tCO2e(CO2に換算したトン数)以上。または、総資産2,500万ユーロ以上、純売上高5,000万ユーロ以上、従業員250人以上のうち二つ以上 | 最終親会社が世界銀行の所得分類で高所得国にあれば、カテゴリーA |
| 上のどれにも当たらない | カテゴリーB |
| 化石燃料の探査や採掘、生産に直接関わる企業 | 当面は目標の審査を受けられない |
| 金融機関の投融資の排出 | 別の基準が扱う |
従業員1,000人以上のグループは、売上高にかかわらずカテゴリーAです。従業員数は、常勤に換算した年平均の人数(FTE)です。
化石燃料の探査や採掘、生産に直接関わる企業のうち、化石燃料の販売や関連サービスからの収入が売上の50%未満の企業などは例外です。
短期目標と長期目標 第2版の短期目標は5年の目標です。長期目標は、遅くとも2050年までに排出を残余の水準まで減らす目標です。
| 目標 | Scope1 | Scope2 | Scope3 |
|---|---|---|---|
| 短期目標(5年) | 全社に必須 | 全社に必須 | Aに必須 |
| 長期目標(2050年まで) | 目標の立て方による | 任意 | 任意 |
| ネットゼロ目標 | 任意。立てる場合は3つのScopeすべてに短期と長期の目標を立てる | ||
短期目標の期間は、提出時点で最新の報告期間の初めから5年です。次のサイクルは、前の目標年の翌年から5年です。
| Scope | 短期目標の選び方 |
|---|---|
| Scope1 | (1) 2050年まで直線で減らす総量目標、(2) 業種別の原単位目標、(3) 設備の入れ替え計画による資産移行目標 |
| Scope2 | (1) 低炭素電力の割合を高める目標、(2) 総量の削減目標 |
Scope1で原単位か資産移行の目標を選んだ場合は、長期目標も立てます。この場合は、目標審査の時点で移行計画を公表します。
低炭素電力には、再生可能エネルギー、原子力、CO2の回収・貯留を備えた発電が含まれます。Aの企業は、目標期間の電力使用量の見通しを出します。年平均の伸びが20%を超える見込みなら、Scope2の排出量の目標が必要です。
Aの企業はScope1、2、3の目標を別々に立て、Bの企業もScope1と2を分けます。伝えるために合算して示すことはできますが、評価は目標ごとに行います。
Scope3で外せる排出と目標の型 GHGプロトコル(排出量の算定の国際基準)の15カテゴリーのうち、1〜14が企業ネットゼロ基準の対象です。カテゴリー15(投融資)は、金融機関向けの基準が扱います。次の排出は、条件を満たせば目標から外せます。
| カテゴリー | 外せる排出 |
|---|---|
| 1・2(購入品、資本財) | 中古品の製造までの排出 |
| 3(燃料・エネルギー関連) | Scope1・2の目標でエネルギー使用を減らして抑える場合 |
| 7(通勤) | カテゴリー全体 |
| 8(借りている資産) | 運用の管理権がなく、エネルギーの使い方に影響を与える手段もない場合 |
| 9(下流の輸送) | 燃料、経路、輸送手段を左右する契約上の手段がない場合 |
| 10(販売した製品の加工) | 加工の工程が分からないか、加工する会社と契約がない場合 |
| 14(フランチャイズ) | 加盟店の施設やエネルギー使用に影響を与えられない場合 |
外した場合は、理由、外した量と割合、減らすための取組みを報告します。目標の立て方は、次の3つから選びます。
3つ目では、低炭素の素材の調達割合や、低炭素の製品の販売割合を目標にできます。販売した製品の使用(カテゴリー11)にどの方法も使えない場合は、例外の申請ができます。その場合は長期目標と削減の計画が必要です。
Aの企業は、バリューチェーンにある排出集約型活動(EIA)を特定し、量を算定します。EIAは、基準の附属書に列挙された排出の多い活動です。
目標づくりのほかに求められること
電力の証書やカーボンクレジットなどの市場手段は、物理的な排出の算定とは分けて報告します。削減の主張は物理的な排出の算定の変化にもとづき、業界単位の取組みなどは別に報告して、システムへの貢献として主張します。
ほかの制度との関係
| 制度 | 第2版との関係 |
|---|---|
| GHGプロトコル | 算定の土台。改訂作業が進んでいる間はSBTiが暫定の指針を出し、経過措置を検討する |
| ISOのネットゼロ規格 | SBTiは補い合う関係と説明。両方の認証を受けられる可能性に触れている |
| EUのESRS E1-1、TPT | 移行計画を作るときの参考として推奨。ESRSはEUのサステナビリティ開示の基準、TPTは英国の移行計画タスクフォース |
| 金融機関向けネットゼロ基準 | 投融資の排出(カテゴリー15)を扱う別の基準 |
| 業種別の基準 | 第2版に合わせて改訂中。移行期間は今の業種別の基準を使う |
第2版では、規制が求める開示を満たす責任は企業にあります。
そのほかの今後の予定
| 時期 | 項目 | 状態 |
|---|---|---|
| 2026年末 | Scope1の市場手段、電力網など共有の仕組み(活動プール)での取組みの実施ガイダンス | FAQに見込みとして記載 |
| 2026年後半 | OER(まだ出している排出への貢献を認める任意の制度)の詳細の公表 | 未公表 |
| 2027年 | OERの開始。第1.3.1版までの目標を持つ企業も参加できる | SBTiの計画 |
| 未定 | GHGプロトコルの改訂に合わせた経過措置 | SBTiが検討する |
| 時期 | 項目 | 状態 |
|---|---|---|
| 2026年10〜12月 | 目標の立て方の選択肢に加える方法を確定 | FAQに見込みとして記載 |
| 2027年初め〜年末 | 業種ごとの目標の立て方(業種別の基準)の第2版対応。案を作り、年内に確定 | SBTiの計画 |
| 未定 | 2回目以降の目標期間でどこまで進んでいればよいか(最低進捗基準)、第三者保証の進め方の手引き、削減や貢献を外部にどう言ってよいか(主張に関する方針) | 公表日は未定 |