更新日 2026年11月1日

制度の解説|開示

サステナビリティ情報の第三者保証

2026年7月の金融商品取引法の改正で、一部の上場会社はサステナビリティ情報に第三者の保証を受けることになりました。保証をする会社は国に登録します。対象の会社、保証の範囲と時期、担い手のルール、保証の基準を、法律と金融庁の資料でたどります。

制度の解説第三者保証

制度の概要

第三者保証は会社が開示した情報を、会社の外の専門家が確かめて結論を出すことです。

2026年7月に成立した改正金融商品取引法(金商法)が、保証の義務と、保証をする会社の登録制を定めました。改正法は令和8年法律第64号で、7月23日に公布されました。

項目内容
何を確かめるか有価証券報告書(有報)のサステナビリティ情報。当初2年間は、Scope1・2の排出量と、ガバナンス、リスク管理の記載
誰が受けるかSSBJ基準で有報を書く義務がある、プライム市場の上場会社
いつからSSBJ基準の義務が始まった翌年度。時価総額3兆円以上の会社は2028年3月期から
誰が保証するか国に登録した法人。監査法人でなくても、要件を満たせば登録できる
保証の水準限定的保証
法律の施行開示と保証の部分は2027年4月1日

SSBJ基準はサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が2025年3月に公表した日本の開示基準です。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の基準と、機能の面でそろえてあります。

Scope1は自社が直接出した温室効果ガスです。Scope2は買った電気や熱をつくるときに出た温室効果ガスです。

条文では保証を「監査証明」と呼びます。保証の対象の情報は「特定非財務情報」、登録した会社は「特定非財務情報監査証明業者」です。このページでは金融庁の審議会の資料にならって「保証」と書きます。

保証を受ける会社

保証を受けるのはSSBJ基準で有報を書く義務がある会社です。条文では「特定提出者」と呼び、範囲は政令で定めます。

開示の義務は東京証券取引所のプライム市場の上場会社に、時価総額の大きい順にかかります。時価総額は前期末からさかのぼった5事業年度末の平均で測ります。

平均時価総額SSBJ基準の義務保証の義務決まり方
3兆円以上2027年3月期2028年3月期開示は内閣府令で決定済み。保証の時期は審議会の報告と意見書案
1兆円以上3兆円未満2028年3月期2029年3月期同上
5千億円以上1兆円未満2029年3月期2030年3月期審議会の報告の方針。内閣府令ではまだ定めていない
5千億円未満今後検討今後検討企業の開示の状況や投資家のニーズを踏まえて検討

表は3月決算の場合です。内閣府令では、3兆円以上の会社は「2027年3月31日以後に終わる事業年度」から適用です。

保証の時期は金融審議会のワーキング・グループ(WG)の報告(2026年1月)が示しました。WGは審議会の中で論点ごとに置く会議です。

義務の対象でない一部の会社も、同じ仕組みの保証を任意に受けられます(金商法第26条の5第6項)。

保証の範囲と水準

有報のサステナビリティ情報は、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4つに分けて書きます。保証の制度が始まってから2年間は、このうちScope1・2、ガバナンス、リスク管理だけが義務の対象です。

3年目以降の範囲は国際動向などを踏まえて今後検討するとされています。範囲を広げるかどうかはまだ決まっていません。

金商法第26条の5第1項は、投資判断への影響が少ない情報を、内閣府令で保証の対象から外せる作りです。意見書案は保証の範囲と、評価に使う基準(適合する規準)を法令ではっきりさせる必要があるとしています。

保証の水準は限定的保証です。限定的保証は手続きの種類、時期、範囲が、合理的保証より限られる保証です。決算書の監査は合理的保証にあたります。

限定的保証では重要な誤りがあると考えさせる事項が見つかったかどうかを、結論として報告します。WGの報告は合理的保証への移行は検討しないことが適当としています。

保証をする会社は保証の対象でない記載(その他の記載内容)も読み、保証の対象との食い違いがないかを検討します。範囲の外のサステナビリティ情報も、このその他の記載内容に入ります。

保証をする会社の登録

保証をする会社は内閣総理大臣の登録を受けます。実際の審査と監督は金融庁が担います。登録できるのは法人だけで、個人は登録できません。

登録の要件条文
法人であること第26条の9第1号
業務を公正・適確に行う人の体制などが整っていること(中身は内閣府令)同第5号
資本金か出資の総額が、政令で定める額以上であること同第6号
国内に営業所か事務所があること同第7号
業務執行担当者が、知識と経験の基準を満たすこと(基準は内閣府令)同第10号ニ
登録の取消しから5年たっていない法人などでないこと同第2号ほか

業務執行担当者は保証の業務の執行を担当する役員や使用人です。WGの報告はこの担当者を公認会計士に限る必要はないとしています。

WGの報告は品質管理の部門か担当者を置くことも、登録の要件にすべきだとしています。審査担当者を十分に確保することも同じです。審査担当者はチームの重要な判断と結論を、チームとは別の立場から評価する人です。

登録した会社の一覧(登録簿)は、誰でも見られるように公開されます(第26条の8第2項)。

独立性と業務のルール

登録した会社と役員、使用人は、独立した立場で公正かつ誠実に業務を行う義務を負います(第26条の11)。主なルールは次のとおりです。

ルール内容条文
利害関係のある会社の保証の禁止株式や出資の関係、役員の行き来、情報の作成業務などで継続して報酬を受ける関係があると、保証できない第26条の5第2項、第26条の16
担当者の交代(ローテーション)同じ会社を、7事業年度の範囲内で政令が定める期間続けて担当したら、その後の一定期間は外れる第26条の17
就職の制限担当者は、対象の年度の翌年度が終わるまで、その会社や子会社の役員に就けない第26条の18
秘密の保持職務で知った秘密を漏らしたり盗用したりしない。辞めたあとも同じ第26条の12
名義貸しの禁止自分の名義で、他人に保証の業務をさせない第26条の14
研修担当者に、資質を高める研修を受けさせる第26条の19
書類と報告業務の書類を作って保存する。毎年度の終わりから3か月以内に、計算書類と事業報告書を出す第26条の20、第26条の21

保証は内閣府令で定める基準と手続きで行います(第26条の5第3項)。登録した会社は担当者にその基準どおりに業務をさせる義務を負います(第26条の15)。

監督と責任

金融庁は登録した会社に報告を求め、立ち入って検査できます。保証を受けた会社や、業務の委託先も検査の対象です(第26条の27)。

虚偽の記載を見逃して保証した場合などには、行政処分があります。処分は業務の体制の改善命令、2年以内の業務停止、登録の取消しです(第26条の24)。

不正な保証があったときは、その会社が保証した書類を、1年以内の期間受け付けないこともできます(第26条の5第4項)。

金融庁の法案の説明資料によると、改正法には課徴金と民事責任の規定もあります。民事責任では故意や過失がなかったことを、保証をした会社の側が証明します。

会社の側にはセーフハーバー・ルールがあります。将来の情報、見積りの情報、Scope3のように第三者から得た情報について、一定の条件で民事責任を負わない決まりです。会社にこのルールが当てはまる場合、保証をした会社も民事責任を負いません。

法律には登録した会社がつくる協会を国が認定する規定もあります(第26条の29)。それでも当面の検査と監督は、自主規制の団体でなく金融庁が行う方針です。

保証の基準

保証の基準を議論しているのは、企業会計審議会のサステナビリティ情報保証部会です。部会は2026年4月に設けられ、5月から審議しています。

2026年10月29日の第3回部会に、基準の作り方を示す意見書の案が出されました。案は日付が空欄で、まだ確定していません。

分野名称の案もとになる国際基準もとになる国内の文書
保証JSSA 5000(サステナビリティ保証業務基準5000)ISSA 5000日本公認会計士協会「サステナビリティ保証業務実務指針5000」(2026年3月)
品質管理JSQM 1(保証業務実施者の品質管理基準)ISQM 1同協会「品質管理基準報告書第1号」(2026年3月)
倫理と独立性JESSA(保証の倫理と独立性の基準)IESSA国際倫理基準の改訂の翻訳(2026年4月)

ISSA 5000はサステナビリティ情報の保証の国際基準です。国際監査・保証基準審議会(IAASB)が2024年11月に公表しました。2026年12月15日以後に始まる期間から適用されます。

ISSA 5000は会計士以外の保証の担い手も使える前提で作られています。限定的保証と合理的保証の両方を扱います。

IESSAは国際会計士倫理基準審議会(IESBA)が2025年1月に公表した、倫理と独立性の国際基準です。ISQM 1はIAASBの品質管理の国際基準です。

意見書案は日本の基準を原則として国際基準と同じ内容にし、日本の事情に合わせた調整を加える方針です。基準を作るのは金融庁が適当としています。保証の担い手の自主規制の団体が、いまはないためです。

意見書案が基準に入れるべき点として挙げた主な事項です。

  1. 経営者がサステナビリティ情報の作成に責任を負い、保証をする会社は独立の立場から保証する
  2. 決算書の監査人と別の会社が保証する場合、両者が連絡をとる。そのため、秘密保持を解く条件を会社と前もって合意する
  3. 保証をする会社が連絡する相手(ガバナンスに責任を負う者)を、契約の前に決めておく。取締役会や監査役等が例
  4. 審査を求める。国際品質マネジメント基準第2号(ISQM 2)を踏まえる
  5. 保証をする会社が代わるときの引継ぎと、複数社による共同の保証を、要求事項にする

意見書そのものは新しい要求事項を定めるものではないとされています。守る対象はこれから作る基準です。

適用の時期と経過措置

時期出来事
2026年2月20日SSBJ基準の開示の対象と時期を定める内閣府令が公布・施行
2026年7月23日改正金商法が公布(7月に成立)
2026年10月29日保証部会に意見書案
2027年3月期3兆円以上の会社でSSBJ基準の開示が始まる
2027年3月末保証の基準ができていることが望まれる時期(意見書案)
2027年4月1日開示と保証の部分を施行。保証をする会社の登録制が始まる
2028年3月期3兆円以上の会社で保証が始まる。1兆円以上の会社でSSBJ基準の開示が始まる
2029年3月期1兆円以上の会社で保証が始まる(方針)
2030年3月期5千億円以上の会社で保証が始まる(方針)

経過措置として、SSBJ基準を使う最初の年度と翌年度は、二段階開示が認められます。有報の提出時にはSSBJ基準の情報を省き、あとで訂正報告書で出す方法です。

訂正報告書は翌期の半期報告書の提出期限までに出します。金融庁の説明資料の図では、3兆円以上の会社の2028年3月期に、保証の義務と二段階開示が重なります。

有報の提出期限は期末から3か月以内のまま変わりません。WGの報告はやむを得ない理由があるときの延長の承認を、柔軟に使えるようにすることを示しました。

手続きと期限

1保証をする会社を選ぶ登録した法人の中から、利害関係のない会社を選ぶ
2契約で決める連絡する相手(取締役会や監査役等)と、監査人との連絡のための秘密保持の扱いを合意する
3情報をつくる作成の責任と、関連する内部統制の責任は経営者にある
4保証の手続き保証をする会社が証拠を集め、範囲の外の記載も読む
5有報を出す期末から3か月以内。二段階開示なら、翌期の半期報告書の期限までに訂正報告書を出す
金商法第26条の5、WGの報告(2026年1月8日)、意見書案(2026年10月29日)、内閣府令の公表資料(2026年2月20日)から作成

保証をする会社の側にも期限があります。登録の内容が変わったら2週間以内に届け出ます。毎年度の終わりから3か月以内に、計算書類と事業報告書を出します。

ほかの制度との関係

SSBJ基準はISSB基準と機能の面でそろえてあります。保証の基準のもとになるISSA 5000はISSB基準、欧州の基準、SSBJ基準のどれにも使えるとされています。

EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)も、開示とあわせて第三者の保証を義務づけています。見直し後のCSRD(2026年2月採択)は、限定的保証の基準を2027年7月1日までに採択するよう求めています。

国・地域保証の範囲水準担い手
日本当初2年間はScope1・2、ガバナンス、リスク管理限定的保証監査法人と、それ以外の登録業者
フランス欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)の全ての開示限定的保証監査法人と、認定を受けたそれ以外の業者
ドイツ(案)ESRSの全ての開示限定的保証監査法人
オーストラリア気候の開示の全て段階を踏んで合理的保証へ監査法人
英国(案)今後検討今後検討監査法人と、それ以外の業者(任意の登録)

表は金融庁が企業会計審議会総会(2026年4月24日)に出した資料をもとにしています。日本の欄はWGの報告によります。

決算書の監査との関係では、保証をする会社と監査人が別になる場合があります。保証をする会社が読む「その他の記載内容」には、決算書と監査報告書も入ります。

実務で迷いやすい点

Q. Scope3の排出量にも保証が要りますか。

当初2年間の義務の範囲はScope1・2、ガバナンス、リスク管理です。Scope3は取引先など、自社の外で出た排出量です。WGの報告は義務の対象の会社がScope3の保証を受けることを「任意の保証」の例に挙げています。

Q. いま受けている任意の保証の報告書を、有報に付けられますか。

付けられるのは3つの条件を満たす場合です。SSBJ基準の情報であること、登録した会社の保証であること、国際基準と整合する基準による保証であることです。

条件を満たさない場合、WGの報告は添付を認めるべきでないとしています。有報に書くなら、保証をした会社の名前、登録の有無、準拠した基準、結論を示すよう求めるべきだとしました。制度の保証ではないことも示します。

Q. 決算書の監査法人と別の会社に保証を頼めますか。

頼めます。意見書案は保証をする会社と監査人が異なる場合を想定しています。そのうえで、両者の連絡のため、秘密保持を解く条件を前もって会社と合意するよう求めています。

Q. 開示の作成を手伝った会社に、保証も頼めますか。

情報の作成業務などで継続して報酬を受けている関係は、法律上の「特別の利害関係」です(第26条の5第2項第5号)。この関係がある会社の保証はできません(第26条の16)。対象の業務の詳細は内閣府令で定めます。

Q. 保証の担当者は公認会計士でなければなりませんか。

WGの報告は公認会計士に限る必要はないとしています。担当者に求める知識と経験の基準は、内閣府令で定めます。

Q. 範囲を絞る「2年間」は、会社ごとに数えますか。

WGの報告と意見書案は「第三者保証制度の適用開始時期から2年間」と書いています。会社ごとに数えるかどうかは、確認した資料には書かれていません。

Q. 期末から3か月で保証が間に合わないときは、どうなりますか。

最初の2年度は二段階開示で訂正報告書を後から出せます。有報の提出期限の延長は、やむを得ない理由があり、承認を受けた場合に限られます。

今後の予定

項目状況(2026年11月1日時点)
意見書の確定案の段階。確定の日付は未定
保証の基準(JSSA 5000など)2027年3月末までの策定が望まれるとされる。金融庁が関係者と協議して作る
保証の範囲と基準を定める内閣府令確認した金融庁の公表資料では、案はまだ見当たらない
ローテーションの年数、資本金の額政令で定める。未定
3年目以降の保証の範囲国際動向などを踏まえて今後検討。未定
5千億円未満の会社開示と保証の両方とも今後検討。未定
保証をする会社の選任理由と報酬の開示WGの報告が「求めることが考えられる」とした段階。未定
自主規制の協会法律に認定の規定がある。当面は金融庁が検査と監督をする

出典

  1. 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月)https://www.fsa.go.jp/common/diet/221/02/03.pdf
  2. e-Gov法令検索「金融商品取引法」(令和8年法律第64号による改正、2027年4月1日施行の条文)https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025
  3. 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 報告」(2026年1月8日)https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20260108/01.pdf
  4. 企業会計審議会 第3回サステナビリティ情報保証部会 資料1「サステナビリティ情報の保証業務に関する基準、品質管理に関する基準及び倫理・独立性に関する基準の設定について(意見書案)」(2026年10月29日)https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/hoshou/20261029/01.pdf
  5. 金融庁「事務局説明資料(サステナビリティ情報の開示・保証)」企業会計審議会総会(2026年4月24日)https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/kaikei/20260424/01.pdf
  6. 金融庁「『企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令』等の公布及びパブリックコメントの結果について」(2026年2月20日)https://www.fsa.go.jp/news/r7/shouken/20260220/20260220.html
  7. IAASB「Understanding the International Standard on Sustainability Assurance 5000」https://www.iaasb.org/focus-areas/understanding-international-standard-sustainability-assurance-5000