更新日 2026年11月1日
改正GX推進法により、2026年4月1日から排出量取引が法律上の義務になりました。CO2の直接排出が年10万トン以上の事業者は、排出量と同じ量の排出枠を毎年度持つ必要があります。
GX推進法は「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」の略称です。2025年6月4日に改正法(令和7年法律第52号)が公布されました。排出量取引の部分は、2026年4月1日に施行されています。
GX-ETSは、この法律にもとづく排出量取引制度の呼び名です。国はCO2を出してよい量を「排出枠」として会社に割り当てます。会社は、1年間に出したCO2と同じ量の排出枠を、期限までに口座に持っておく義務を負います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何が | 排出枠の保有の義務、排出量の届出と報告、移行計画の提出 |
| いつから | 2026年4月1日(2026年度が初年度) |
| 誰に | CO2の直接排出が前3年度の平均で年10万トン以上の事業者 |
| 所管 | 経済産業大臣(割当ての事務と市場の運営はGX推進機構) |
| 規模の見込み | 300〜400社程度。国内の温室効果ガス排出の60%近く |
GX推進機構は、同じ法律にもとづく法人です。正式名は脱炭素成長型経済構造移行推進機構です。2023年度から2025年度までは、自主参加のGXリーグで排出量取引が試行されていました。
判定は工場ごとではなく、法人ごとに行います。国の資料は、省エネ法や温対法との整合性などを理由に挙げています。
| 判定の要素 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 単位 | 事業者(法人) | 法第33条 |
| 数える排出 | CO2の直接排出。他者に売る電気・熱の分も含む。小さな排出源の裾切りはない | 施行令第1条、国の説明資料 |
| 期間 | 届出年度の前3年度の平均。2026年度は2023〜2025年度の平均 | 施行規則第4条 |
| しきい値 | 年度平均排出量が10万トン以上 | 施行令第2条 |
| 設立が新しい会社 | 前々年度の設立なら2年度の平均。前年度の設立なら前年度の量 | 施行規則第4条 |
| クレジット | 判定の量には、カーボン・クレジットによる相殺を反映しない | 国の説明資料 |
グループで共同して届け出る場合も、対象かどうかは各社単独の量で判定します。判定に使う年度平均排出量は、登録確認機関の確認の対象外です。
対象の事業者には、次の7つの義務や手続きがあります。手続きは、国の排出量取引管理システム(ERMS)で行います。ERMSの利用には、行政手続きの共通IDであるGビズIDが必要です。
国は届出の内容を実施指針に照らして審査し、排出枠を無償で割り当てます(法第34条)。実施指針は、経済産業大臣が定める割当てのルールです。割当量の計算は、次の2つの方式が基本です。
| 方式 | 計算 | 対象 |
|---|---|---|
| ベンチマーク(BM) | 基準活動量 × 目指すべき排出原単位 | 鉄鋼、化学、セメント、発電など20業種 |
| グランドファザリング(GF) | 基準排出量 ×(1 − 削減率 × 経過年数) | BMの対象外の排出源 |
BMは、同じ業種の中で製品あたりの排出を比べる方式です。BMの20業種は、主務省令で定められています。国の資料では、20業種で対象事業者の排出の90%をカバーするとしています。
BMの水準は、業種内の上位50%から始まります。5年後には、上位32.5%の水準まで引き下げる設計です。GFは過去の排出量を基準に、毎年度1.7%ずつ割当量を減らします。基準の期間は、どちらも2023〜2025年度の3年度です。
割当量は、次の事情で増減します。
| 勘案事項 | 内容 |
|---|---|
| 早期の削減 | 制度開始前に基準を超えて減らした量を、基準排出量に加える(GFの排出源) |
| カーボンリーケージ | 海外移転のおそれがある業種で、枠の調達コストが一定水準を超えると、不足分の一定割合を追加 |
| 研究開発への投資 | 前年度のGX関連の研究開発費に応じて、不足分の範囲で追加。2027年度から適用 |
| 活動量の変動 | 事業所の新設・廃止や生産量の大きな増減があれば調整 |
登録確認機関は、経済産業大臣の登録を受けて確認の業務を行う機関です(法第58〜60条)。登録には、適合性評価の機関に関する国際規格などに合うことが求められます。登録の有効期間は5年です。
確認の方法について、国の資料は二つの基準を例に挙げています。ISO 14064-3(温室効果ガスの検証の国際規格)と、ISSA 5000(サステナビリティ保証の国際基準)です。
| 届け出る量 | 確認 |
|---|---|
| 排出目標量(BM・GFによる量) | 限定的水準の確認 |
| 早期の削減を勘案した量 | 合意された手続 |
| 排出実績量 | 限定的水準の確認 |
| 年度平均排出量、勘案事項による調整量、移行計画 | 不要 |
確認報告書の結論は、無限定、限定付、否定的の3種類です(施行規則第13条)。重要な手続きができなかった場合は、結論を出さない旨と理由を書きます。事業者は届出や報告に、この報告書を添付します。
排出量取引制度ポータルサイトの一覧には、2026年10月13日までに登録された15機関が載っています。
移行計画は、CO2の削減目標と、脱炭素への投資などをまとめた計画です。毎年度、届出年度の9月末までに提出します。提出先は、経済産業大臣と事業を所管する大臣です。
| 記載事項 | 公表 |
|---|---|
| 前年度のCO2排出量(直接排出と間接排出) | 公表する |
| CO2排出量の目標(公表は2030年度の値のみ) | 公表する |
| 投資などの計画の内容と期待される効果 | 個別には公表しない |
| 研究開発の内容(2026年度は記載不要) | 公表する |
| その他の取組み | 公表する |
| 前年度の計画との比較(2026年度は記載不要) | 公表しない |
間接排出は、他社から買った電気や熱にともなう排出です。目標の欄には、2026年度から2030年度までの各年度の見通しを書きます。投資計画は、設備投資の案件ごとに内容、金額、工場、期間、削減効果を書きます。
移行計画を出さない場合や、うその記載をした場合は、20万円以下の過料の対象です(法第148条)。
排出枠の価格が極端に動かないよう、法律は上限と下限の仕組みを置いています。どちらも経済産業大臣が毎年度、その年度が始まる前に定めます。2026年度分は、附則により2026年4月1日に定めることとされました。
| 仕組み | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 参考上限取引価格 | 上限の基礎となる価格。産業構造審議会の意見を聴いて定め、告示する | 法第39条 |
| 上限価格による支払い | 取引が難しいと大臣が告示したときに限り、不足分に上限価格をかけた額を払えば枠を持つとみなす | 法第40条 |
| 調整基準取引価格(下限) | 市場の平均価格が一定期間これを下回ると、GX推進機構が枠を買い入れられる | 法第116〜117条 |
| 未償却相当負担金 | 2月1日以降、持っていなかった量に上限価格の1.1倍をかけた額を徴収 | 法第41条 |
上限価格での支払いが認められるのは、施行令第6条の場合です。市場の平均価格が上限を一定期間上回り続けた場合や、上限以下の売り注文がとても少ない場合です。災害などで取引が難しい場合も含まれます。
支払える量は、通知された保有量が割当量を上回る分までです。機構が下限で買い入れた枠は、決まった基準に従って事業者に売り渡します。2026年度の金額は、経済産業省の告示で定められています。
| 事項 | 原則 | 2026年度の扱い |
|---|---|---|
| 排出目標量などの届出 | 届出年度の9月末 | 2026・27年度分をまとめて2027年9月末 |
| 排出枠の割当て | 届出年度の11月末 | 2027年11月末 |
| 年度平均排出量の届出 | 届出年度の9月末 | 2026年9月末(終了) |
| 移行計画 | 届出年度の9月末 | 2026年9月末(終了)。研究開発の記載は不要 |
| 確認 | 届出・報告の前 | 2026年度に確認が必要な手続きはない |
| 上限・下限価格 | 年度の開始前に決定 | 2026年4月1日に決定する定め |
| 研究開発による追加割当て | 前年度の研究開発費に応じて追加 | 適用なし(2027年度から) |
根拠は、改正法の附則第4条と、改正施行規則の附則第2・3条です。登録確認機関の登録は、施行前の2026年1月5日から受け付けられました。
毎年度の流れは、次のとおりです。T年度は排出を数える年度、T+1年度はその翌年度です。
償却とは、国が口座の排出枠を減らして消すことです。枠の過不足は、保有量が決まる前から市場で売買できます。余った枠は、翌年度に持ち越せます。
届出と報告の期限は、災害など、やむを得ない理由があり大臣が承認すれば延ばせます。延長の上限は、届出が1年、報告が2か月です。
| 違反 | 罰則 | 根拠 |
|---|---|---|
| 届出をしない、うその届出 | 50万円以下の罰金 | 法第143条 |
| 実績の報告をしない、うその報告 | 50万円以下の罰金 | 法第143条 |
| 移行計画を出さない、うその記載 | 20万円以下の過料 | 法第148条 |
| 制度 | GX-ETSとの関係 |
|---|---|
| 省エネ法の定期報告、温対法のSHK制度 | SHK制度は温室効果ガスの排出量を国に報告する制度。GX-ETSはCO2の直接排出に限り、第三者の確認がある |
| J-クレジット、JCM | 無効化した量を排出実績量から差し引ける。上限は実排出量の10% |
| 化石燃料賦課金 | 同じ法律の制度。2028年度から化石燃料の輸入者などに課す |
| 発電の有償割当て | 2033年度から、排出の多い発電事業者に排出枠を有償か無償で割り当てる |
| 自治体の条例 | 排出量の報告などを条例で定めることを妨げない(法第76条) |
J-クレジットは、国内の排出削減量を国が認証したものです。JCMは二国間クレジット制度の略称です。省エネ法で国に出した報告書の一部は、GX-ETSの届出に添付します(施行規則第10条)。
海外の制度と比べると、対象の決め方が違います。
| EU | 英国 | 韓国 | 日本 | |
|---|---|---|---|---|
| 単位 | 設備 | 設備 | 事業者 | 事業者 |
| 規模 | おおむね2万5千トン以上(直接) | おおむね2万5千トン以上(直接) | 12万5千トン(直接・間接) | 10万トン(直接) |
| 国内排出の捕捉率 | 40% | 27% | 79% | 60%程度(見込み) |
表は、東北経済産業局の資料(2026年5月)の比較表によります。海外の捕捉率は2022年の値です。
問 グループ会社とまとめて対応できますか。
答 できます。発行済株式の全部を持つ会社など、密接関係者と共同で届け出られます(法第33条第4項)。密接関係者は、子会社、関連会社、兄弟会社のうち、自らも届出義務がある会社です(施行規則第14条)。共同の届出では、一体で行う投資の内容も書きます。
問 買った電気の排出は、保有義務の量に入りますか。
答 入りません。算定の対象はCO2の直接排出です。一方、移行計画には、買った電気や熱による間接排出も書きます。
問 2026年度に登録確認機関と契約する必要はありますか。
答 2026年度の手続きには、確認が必要なものはありません。ただし、2026年4月から排出実績量の算定が始まっています。国は、2026年度から契約を進めるよう勧めています。
問 クレジットはいつまでに無効化すれば反映できますか。
答 報告する年度の6月末までに無効化した分を反映します。4月1日から6月30日の無効化分は、前の年度か当年度のどちらか一方にだけ反映できます。
問 合併や事業の譲渡があった年はどうなりますか。
答 その年度は、合併後の会社や事業を引き継いだ会社が義務を負います。数える排出は、消えた会社や引き継いだ事業の分に限られます(法第44条)。
問 排出枠は誰でも取引できますか。
答 排出枠は、持っている者の間で取引できます。ただし、投機的な取引の対象にしてはならないと定められています(法第38条)。
問 届け出た内容に誤りが見つかったら。
答 次の届出のときに、訂正を報告します。重大な変更なら、訂正にも登録確認機関の確認が要ります(施行規則第19条)。
| 時期 | 予定 | 状況 |
|---|---|---|
| 2027年3月まで | 2027年度の上限・下限価格を定める | 法律で決まっている。金額は告示で示される |
| 2027年9月30日 | 2026・27年度分の排出目標量などの届出、2026年度の実績報告、2027年度の移行計画 | 省令で決まっている |
| 2027年11月30日 | 2026・27年度分の割当て、保有量の通知 | 省令で決まっている |
| 2027年11月ごろ | GX推進機構の取引市場が開く | 国の資料の図による目安。開設日を定めた条文は見当たらない |
| 2028年1月31日 | 2026年度分の排出枠の保有期限 | 法律で決まっている |
| 2028年度 | 化石燃料賦課金の徴収が始まる | 法律で決まっている |
| 2031年3月まで | 施行後5年以内に施行状況を検討する | 検討の中身は未定 |
| 2033年度 | 発電事業者への有償割当て(入札)が始まる | 入札の詳細は別の法律で定めるとされ、未定 |
市場価格が下限を下回って低迷する場合について、国の資料は二つの対応を挙げています。GX推進機構による枠の買入れ(リバースオークション)と、割当基準の強化の検討です。強化の中身は、まだ示されていません。