更新日 2026年11月1日

制度の解説|金融

ESG評価・格付けの規制(EUの規則と金融庁の行動規範)

ESG評価は、会社の環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)への取り組みを、外部の機関が点数や段階で表すものです。EUでは2026年7月2日から、ESG評価を出す会社に認可を求める規則が適用されています。日本では、金融庁が2022年に行動規範を定め、受け入れた機関の一覧を出しています。2つの制度の中身と、評価を受ける企業にとっての変化を、

制度の解説ESG格付け

評価を受ける会社がまず確かめること

  1. 自社を評価している機関を一覧にします。ESMA(欧州証券市場監督局)の名簿に載っているかも確かめます。
  2. 評価機関からの連絡を受ける窓口を決め、メールアドレスなどを公表します。EUの規則では、評価を出す2営業日前に連絡が来ます。
  3. 各機関が公表している評価の方法と、苦情の受付の手順を読み、社内で共有します。

概要

EUの規則は、規則(EU)2024/3005です。正式な題は「ESG評価活動の透明性と健全性に関する規則」です。2024年12月12日にEU官報に載り、2025年1月1日に発効しました。

日本の行動規範は、金融庁の「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範」です。法律ではなく、受け入れるかどうかは各機関が決めます。

項目EUの規則金融庁の行動規範
性格EU全体に直接かかる法律受け入れを表明した機関だけが従う規範
いつから2026年7月2日に適用開始2022年12月15日に公表
誰にEUで事業をするESG評価の会社日本で事業をするESG評価とデータの機関
監督ESMAが認可し、検査し、罰金を科す監督や罰則はない
守り方すべての規定を守る原則ごとに、実施するか、しない理由を説明する
対象のサービス評価のみ。ESGデータの提供は対象外評価とデータの両方

EUの規則は、IOSCO(証券監督者国際機構)の勧告をもとにしたと、欧州委員会が説明しています。金融庁の行動規範も、IOSCOの2021年11月の報告書を踏まえて作られました。

対象:何が「ESG評価」に当たるか

規則は、ESG評価を「意見か点数、またはその組み合わせ」と定めています。決まった方法と、段階の区分に基づくものが当たります。「評価」「意見」「スコア」と、どう呼んでいるかは問いません。

ESMAの質問と回答集(Q&A)は、段階の区分を説明しています。最低と最高を含む2つ以上の区分があり、順位を表すものです。区分は数字、文字、色などで表せます。

区分規則の扱い
EUの会社が、評価をウェブサイトなどで公表する対象
EUの会社が、契約でEUの金融機関などに配る対象
EU域外の会社が、契約でEUの金融機関などに配る対象
公表も配布もしない内部向けの評価対象外
ESGデータそのものの公表や配布対象外
信用格付けと、その中で使うESGの点数対象外
債券の外部評価(セカンドパーティ・オピニオン)ESG評価を含まなければ対象外
認証のためだけの評価で、投資の分析に使わないもの対象外
認可を受けた会社の評価を、第三者が載せ直す対象外
非営利の団体が、商業目的でなく出す評価対象外。ただし企業や利用者から料金を取ると対象

配る先の「金融機関など」には、EUの会計指令の対象の会社や、EUと加盟国の公的機関も入ります。

評価を受ける側は「評価対象」と呼ばれます。会社、金融商品、公的機関などで、評価を頼んだかどうかは問いません。情報を出したかどうかも問いません。

対象:EUで事業をするための道

EUで評価を出すには、次のどれかが必要です。EUの会社か、EU域外の会社かで、使える道が分かれます。

道使える会社中身
認可EUの会社ESMAが審査し、EU全体で有効な認可を出す
小規模な会社の軽い制度EUの小規模な会社届け出てESMAの名簿に載る。3年間
同等性EU域外の会社その国の規制がEUと同等と、欧州委員会が決めた場合
承認(エンドースメント)EU域外の会社同じグループのEUの認可会社が、域外の評価を引き受ける
承認(レコグニション)EU域外の小さな会社EUに法定代理人を置き、ESMAが認める

エンドースメントでは、EUの会社が自前の事務所と銀行口座を持つことが条件です。分析と判断をする体制がEUにあることも求められます。引き受けた評価の責任は、EUの会社が負います。

レコグニションを使えるのは、売上が小さい域外の会社です。会計指令が小会社に定める上限額を、直近3年続けて下回ることが条件です。グループに属する場合は、グループの連結の売上で判定します。

規則は、同等性の決定を出す権限を欧州委員会に与えています。

小規模な会社の軽い制度

EUに拠点がある小規模な評価会社は、認可の代わりに届け出で事業ができます。ESMAは、会計指令の小会社の基準で判定します。

基準(ESMAの説明)上限
総資産500万ユーロ以下
純売上高1,000万ユーロ以下
平均従業員数50人以下

3つのうち2つを超えなければ、小規模に当たります。個社と、必要な場合はグループの両方で見ます。中規模以上のグループに属する小さな会社は使えない、というのがESMAのQ&Aの考え方です。

軽い制度でかかる規定は、一部に限られます。独立性、事業の利益が評価をゆがめない手続き、評価の方法の質です。方法の開示(第23条・第24条)と、ESMAの監督(第32〜37条)もかかります。

ESMAは届け出から90営業日以内に、登録するかを決めます。登録から3年たつか、小規模でなくなると、規則のすべてがかかります。その場合は、6か月以内に認可を申請します。

求められること(EUの規則)

認可を受けた会社には、組織、方法の開示、利益相反の管理などの規定がかかります。評価を受ける企業に関わる規定を中心に並べます。

項目求められること条文
独立性政治や経済の影響から独立して評価する15条1項
方法の見直し評価の方法を、少なくとも年1回見直す15条8項
自社の意見の明示評価が自社の意見だと、はっきり書く15条11項
事前の連絡初めて評価を出す2営業日以上前に、評価対象に知らせる15条12項
データの提供評価対象が求めれば、使ったデータなどを無料で見せる15条12項
苦情の受付苦情の手順をウェブサイトで公表し、評価に関わらない人が調べる19条
懸念への回答名前を示した懸念に、30営業日以内の回答に努める(小規模を除く)20条
方法の公表方法、モデル、主な前提をウェブサイトの別の区画で公表する23条1項
E・S・Gの分割E、S、Gを別々に評価する。まとめる場合は配分の比率を示す23条2項・3項
利用者と評価対象への開示より細かい方法とデータの扱いを、継続して知らせる24条
記録評価の記録を5年以上残し、後から再現できる形にする18条
料金料金を公正で、差別のないものにする27条

事前の連絡で見せる情報には、業種の区分、データの出どころ、推計の使い方が入ります。データを最後に更新した日も入ります。ただし、営業秘密に当たる情報までは開示しなくて構いません。

公表する方法の中身は、附属書IIIの1に17項目で並んでいます。主なものは次のとおりです。

公表する項目(抜粋)中身
方法の概要過去を見る評価か将来を見る評価か、対象とする期間
データの出どころCSRD(EUの企業サステナビリティ報告指令)の報告を使うか
評価の目的リスク、影響、またはその両方のどれを測るか
表し方絶対評価か、相対評価か
AI(人工知能)使っているか、その限界とリスク
利益相反主なリスクと、その対策

評価対象から頼まれずに出す評価は、その旨を目立つように書きます。評価対象が知らされていたか、手続きに加わったかも書きます。

利益相反の管理と、事業の分離

規則は、評価の会社が自ら行えない事業を定めています(第16条)。

事業扱い
投資家や企業へのコンサルティング行えない
信用格付け行えない
財務諸表の法定監査、サステナビリティ報告の保証行えない
ベンチマーク(指数)の提供原則行えない。対策をESMAが認めれば可
投資サービス、銀行や保険の業務業務を分け、利益相反を防ぐ対策をとれば可

ESMAのQ&Aは、分けるべきコンサルティングの例を挙げています。開示やKPI(重要な業績の指標)について助言し、評価を上げる手伝いをすることです。一方、税務や会計の助言のように評価から遠いものは、この例に当たりません。

評価に直接関わる担当者には、個人の取引も制限されます。担当する会社の株などは売買できません。評価した会社の幹部には、評価から9か月は就けません。

規則に違反すると、ESMAは罰金を科せます。上限は、その会社の年間の純売上高の10%です。

求められること(金融庁の行動規範)

行動規範は6つの原則と、その下の指針でできています。受け入れた機関は、指針ごとに守り方を説明します。

原則主な指針
1 品質の確保方法を定めて開示する。データの取得と更新の時期を開示する
2 人材の育成専門の人材を確保し、能力を育てる
3 独立性と利益相反営業と評価の部門を分ける。有償サービスを使わないと答えられない調査にしない
4 透明性の確保評価の目的と基本の方法を一般に明らかにする
5 守秘義務非公開の情報を守る方針と手続きを定める
6 企業とのコミュニケーション調査の時期を前もって伝える。統一した窓口を置く

原則6の指針は、評価を受ける企業に直接関わります。主な中身は次の4つです。

  1. 公開情報などを前もって入力し、企業には確認を求めます。
  2. 評価を出すときは、重要な情報源を企業に伝えます。事実の誤りを確かめる時間を取ります。
  3. 企業から重要な指摘があれば、データの正確さを確かめさせ、誤りは直します。
  4. 企業とどう関わるかを「対話の手順」として開示します。

行動規範には、企業への提言も参考として載っています。ESG情報を分かりやすく開示し、更新日を示すことが挙がっています。評価機関からの問い合わせの窓口を開示することも求めています。

受け入れ表明の一覧

金融庁は、受け入れを表明した機関の一覧を、原則として半期ごとに更新しています。最新の一覧は2026年6月30日時点で、30機関です。

一覧には、評価とデータのどちらで受け入れたかが載っています。各機関の表明のページと、原則ごとの対応を書いたページのアドレスもあります。

一覧には、CDP、MSCI Solutions、FTSE Russellが載っています。サスティナリティクス・ジャパン、エコバディスなども入っています。

金融庁は2026年6月30日、行動規範の対応の状況を調べた結果を公表しました。行動規範に「3年後をめどに見直しを検討する」とあったためです。

報告書によると、企業からは改善を認める声がありました。一方で、方法の透明性、アンケートの事務の負担、データの正確さに注文が続いています。金融庁は、日本での規制の導入や規範の改訂を「現時点では慎重に検討」とまとめました。代わりに、各機関の対応の事例集を付けています。

適用の時期と経過措置

規則の発効の時点ですでにEUで事業をしていた会社には、経過措置があります。届け出をした会社は、ESMAが決めるまで事業を続けられます。

会社期限期限を過ぎると
既存の会社(小規模以外)2026年8月2日までに続ける意思を届け、11月2日までに申請する事業をやめる
既存の小規模な会社2026年11月2日までに軽い制度の届け出をする事業をやめる
発効後に始めた会社経過措置は使えない。始める前に認可などを受ける―

ESMAのQ&Aは、発効後にできた会社でも経過措置を使える場合を示しています。発効時に事業をしていた会社と、子会社などのつながりがある場合です。

ESMAは、小規模な会社に9月2日までの届け出を勧めていました。小規模以外の会社には、9月2日から11月2日の間の申請を勧めていました。

2営業日前の連絡の義務は、2026年7月2日以後に出す評価にかかります。それより前に出た評価は、7月2日以後に更新するとき、少なくとも1回は連絡します。

手続きと期限

2024年12月12日規則がEU官報に載る
2025年1月1日規則が発効
2025年10月15日ESMAが細則(認可、事業の分離、開示)の最終案を公表
2026年7月2日規則の適用が始まる。届け出の受付が始まる
2026年8月2日小規模以外の既存の会社が、続ける意思を届ける期限
2026年8月13日小規模な会社の最初の登録
2026年11月2日認可などの申請と、小規模な会社の届け出の期限
2028年1月1日方法の開示などを、EUの共通の情報窓口(ESAP)にも出す
規則(EU)2024/3005、欧州委員会とESMAの公表資料から作成

認可の申請では、ESMAが25営業日以内に、書類がそろっているかを確かめます。そろったと知らせてから90営業日以内に、認可するかを決めます。期間は120営業日まで延ばせます。

ESMAは、届け出た会社の一覧を公表しています。2026年10月16日の更新では114社です。小規模な会社として登録された会社は、10月28日の更新で51社です。

ESMAは、11月2日より後の第三者の扱いも示しました。申請か届け出をして、名簿に載る会社の評価だけを、第三者は載せたり配ったりできます。

評価を受ける企業にとっての変化

どちらの制度も、評価を受ける企業には義務を課していません。変わるのは、評価機関の側の手順です。

場面EUの規則金融庁の行動規範
評価を出す前2営業日以上前に連絡が来る。求めればデータを無料で見られる重要な情報源を伝え、確かめる時間を取るとする
評価の方法17項目の公表が義務。E・S・G別の評価が原則目的と基本の方法を開示するとする
評価に不満があるとき苦情の手順に沿って申し立てられる。ESMAにも苦情を出せるデータの正確さを確かめさせ、誤りは直すとする
評価機関の営業評価を上げるための助言はできない有償サービスを使わないと答えられない調査にしないとする
守られなかったときESMAが監督し、罰金を科せる監督や罰則はない

規則の附属書IIIの2は、評価対象に知らせる細かい情報を定めています。見出しは「会計指令の範囲内の評価対象」です。

ESMAのQ&Aの見解では、評価機関が企業の指摘で評価を直す義務はありません。ただし、出す前に受けた指摘は、よく検討するよう求めています。

ほかの制度との関係

制度関係
EUの信用格付けの規則信用格付けは対象外。評価の会社は信用格付けを行えない
SFDR(EUのサステナブル金融の開示規則)運用会社が宣伝資料で自社の評価を見せるとき、方法の情報をウェブに載せる
CSRDとESRS(欧州サステナビリティ報告基準)評価がCSRDの報告を使うか、ESRSの項目に合うかを開示する
EUタクソノミー(環境に良い事業の分類)E評価がタクソノミーの適合率とどう関係するかを、利用者などに知らせる
英国の規制金融庁の報告書によると、2028年6月の適用開始を目指している
シンガポールと香港金融庁の報告書によると、規制ではなく行動規範で対応を続けている

EUの規則はESGデータの提供を対象にしていません。金融庁の行動規範は、データの提供も対象にしています。規則は、データ提供を対象に加えるべきかを、見直しの論点に挙げています。

実務で迷いやすい点

Q. 評価機関から「2営業日後に評価を出す」と連絡が来ました。何ができますか。

A. 事実の誤りを評価機関に知らせられます。求めれば、使われたデータを無料で見られます。2営業日がたてば、評価機関は返事を待たずに評価を出せます。

Q. 誤りを伝えても、評価が変わりません。

A. ESMAのQ&Aによると、評価機関に評価を直す義務はありません。納得できない場合は、各機関の苦情の手順で申し立てられます。データの出どころ、方法の当てはめ方、評価が実態を表すかが対象です。

Q. 連絡を受ける窓口を決めていません。連絡はどこに来ますか。

A. ESMAのQ&Aは、窓口がない場合の連絡先の例を挙げています。IR(投資家向け広報)の部門や広報の部門です。金融庁の行動規範も、企業に問い合わせの窓口の開示を求めています。

Q. 小規模な評価会社からも、事前の連絡は来ますか。

A. 軽い制度でかかる規定に、事前の連絡(第15条12項)は入っていません。規則の文面上、軽い制度の会社にこの義務はかかりません。

Q. 行動規範を受け入れた機関は、すべての原則を守っていますか。

A. すべてを守ることは求められていません。実施しない指針は、その理由を説明します。説明は、各機関が一覧に載せたページで読めます。

Q. 評価機関から、評価を上げるための有料の助言を勧められました。

A. EUで認可を受ける評価の会社は、企業へのコンサルティングを行えません。ESMAのQ&Aは、評価を上げる手伝いをその例に挙げています。

今後の予定

予定状況
ESMAの認可の決定書類がそろってから90営業日(最長120営業日)以内。各社の決定の時期は未定
小規模な会社の3年の期限登録から3年。最初の登録の会社は2029年8月13日
ESAPへの提出2028年1月1日から
規則の見直し欧州委員会が、発効から4年以内に評価する。中身は未定
英国の規制2028年6月の適用開始を目指している(金融庁の報告書による)
金融庁の行動規範の改訂現時点では慎重に検討。動向の分析を続け、必要なら検討する。時期は未定
受け入れ表明の一覧原則として半期ごとに更新

日本の行動規範が、EUの規制と同等と認められるかは、まだ決まっていません。