更新日 2026年11月1日

制度の解説|海外

EUのCSRDとESRS(オムニバス後)

CSRDは、会社が人や環境に与える影響と、サステナビリティの問題が業績に与える影響を、年次報告書の中で報告させるEUの法律です。会社のサステナビリティの情報を、財務の情報のように比べられて信頼できる形にするのが目的です。EUは見直しで対象を大きな会社に絞りましたが、日本企業もEUの子会社やEUでの売上が大きければ報告し、届かない会社も取引先として情報を求められます。

制度の解説CSRDESRS

あなたの会社はどれか

立場見分け方すること
義務がかかる会社EUの子会社(中間持株会社なら連結)が、純売上高4.5億ユーロ超かつ平均従業員1,000人超。またはEU域内の売上が2年続けて同じ売上の基準を超え、純売上高2億ユーロ超のEU子会社か支店があるグループ。EUの子会社ごとの決算と、グループのEU域内の売上で確かめる(経理)ESRS(CSRDの報告に使うEUの基準)で報告する
義務はないが取引先から求められる会社CSRDの対象の会社(EUの取引先や、日本の取引先のEU子会社)から、排出量(温室効果ガスの量)などの調査票が届く求められた情報を出す。従業員が少なければ一部を断れる
いまは関係が薄い会社EUに子会社も支店もなく、EUの取引先もない当面することはない。こうした会社を対象に加えるかを、EUが2031年までに検討する

両方に当たるなら、義務がかかる会社の手順から進めます。

何が変わるか

  1. 取引先として受ける依頼に上限ができ、日本の取引先も文面上は守られます。保護対象の会社(従業員が一定以下の取引先)の定義に、所在地の条件が書かれていないためです。
  2. 基準を超えるEUの子会社は、改訂ESRS(項目を減らして2026年に採択した版)で報告します。
  3. EU域内の売上が大きい日本のグループは、日本の最終親会社が用意したグループ全体の報告書を、EUの子会社か支店から公表します。

いつ、何をするか

時期すること
2026年3〜7月(済)CSRDを見直す指令が発効し、欧州委員会が改訂ESRSと任意の報告基準を採択した
2026年中に始まる年度すでに報告している会社が、旧ESRS(2023年に定めた版)と改訂ESRSのどちらかを選んで報告する
2027年1月1日以後に始まる年度基準を超えるEUの会社とグループが、改訂ESRSで報告する
2027年3月19日加盟国が自国の法律を改める期限
2028年度EU域外の企業グループの最初の対象年度。EU子会社か支店が、2029年にグループ全体の報告を公表する

まず確かめること

義務がかかる会社

  1. EUの子会社ごとに、純売上高と平均従業員数の両方が基準を超えるかを確かめます(経理)。
  2. グループのEU域内の売上が2年続けて基準を超え、基準を超えるEUの子会社か支店があるかを確かめます。当たれば、その報告書の準備を始めます(経理)。
  3. 子会社の国が複数なら、細部は国の法律で決まるため、国ごとに改めた法律の中身を確かめます(法務)。

義務はないが取引先から求められる会社 届いた依頼文の言葉から返すものを決めるなら「取引先からのCO2の問い合わせ」へ。

  1. 調査票の項目が、任意の報告基準(中小企業向けの基準をもとにした上限)を超えていないかを見ます。超えて頼む側は、超えた箇所と断れることを伝える決まりです。
  2. 自社の排出量は、電気・燃料の請求書にある使用量に国の係数を掛けて出します(経理)。手順は「Scope1・2は請求書12か月分と国の係数で出せる」にあります。
  3. 上限の中の項目から答え、超える部分は出すかを決めます。従業員数の条件は自己申告で伝えれば足ります。

よく迷うところ

Q EUの取引先から、細かい排出量のデータを求められました。断れますか。
A 前の年度の平均従業員数が1,000人以下なら、任意の報告基準を超える部分を断れます。ただし、デューデリジェンス(取引先まで含めた人権や環境の調査と対策)のための依頼は、この上限の対象外です。

Q EUの子会社の売上は基準を超え、従業員は900人です。対象になりますか。
A 単体では対象に入りません。純売上高と平均従業員数の両方が基準を超える必要があるためです。EUの親会社のグループが連結で両方を超える場合は、その親会社が報告します。

細かい決まり条文・例外・数字の根拠(実務の人向け)

根拠

項目内容
もとの指令指令(EU)2022/2464。会計指令(2013/34/EU)を改め、年次報告書の中で報告させる
見直しの指令指令(EU)2026/470。2025年2月に欧州委員会が出した負担を減らす一連の法案(オムニバス、簡素化パッケージ)のうち、CSRDを改める部分。2026年2月24日に採択、2月26日にEU官報に掲載、3月18日に発効
見直しの中身CSRDの対象の縮小、取引先への情報要求の上限、保証の簡素化など
時期中身
2026年3月18日(済)CSRDを見直す指令が発効した
2026年7月3日(済)欧州委員会が改訂ESRSと任意の報告基準を採択した
2026年11月10日改訂ESRSが発効する(採択日から数えた日付)
2027年7月1日欧州委員会が限定的保証(合理的保証より手続きが少ない保証)の基準を定める期限
2029年4月30日欧州委員会が指令の見直しを報告する期限

対象の判定の細部 平均従業員数は、その年度の平均で見ます。

EUの会社は、決算日に2つの基準をどちらも超えると対象です。親会社は、グループ全体の連結の数字で同じ判定をします。EUの子会社の売上が4.5億ユーロを超えても、従業員が1,000人以下なら単体では対象外です。

区分扱い
EUの上場中小企業報告の義務の対象から外れた
金融持株会社子会社どうしの事業が独立していれば、報告しないことを選べる

域外の企業グループの判定では、EU域内の売上をグループ単位で見ます。グループの単位がない場合は、その会社単体の数字で見ます。支店で判定するのは、条件に当たるEU子会社がない場合だけです。欧州委員会は、物価の上昇に合わせて、売上の基準を少なくとも5年ごとに見直します。

会計指令には、親会社の報告に含まれる子会社を免除する規定もあります(第19a条9項、第29a条8項)。見直しの指令は、この免除を公益事業体(会計指令が公益性の高い会社として定めるもの)にも広げました。EU子会社の報告の細部は、子会社がある国の法律で決まります。

報告の中身と、保証・省略の決まり 対象の会社は、年次報告書(マネジメントレポート)の中で、2つの情報を報告します。会社が人や環境に与える影響と、サステナビリティの問題が会社の業績や財政状態に与える影響です。

項目求められること
報告の基準ESRSに沿って報告する。重要でない情報は、原則として報告しない
保証監査人などが限定的保証で意見を出す
保証の基準限定的保証の基準は欧州委員会が定める。合理的保証の基準を定める義務はなくなった
電子タグ報告に電子タグを付ける。タグ付けのルールができるまでは不要
取引先の情報最初の3年は、集められなかった理由と今後の計画を説明すればよい
省略できる情報商業上の立場を著しく損なう情報、営業秘密、秘密指定の情報などは、条件付きで省略できる
買収と売却年度中に買収や合併をした会社、グループを出た子会社の情報を、連結の報告から外せる
業種別の基準業種別の基準を作る規定は削除された

省略の制度を使ったときは、使ったことを開示します。省略を続けてよいかは、報告のたびに見直します。買収や売却で報告から外した場合も、子会社に起きた大きな出来事は記載します。グループの影響やリスクに関わる出来事が対象です。

取引先に求められる情報の上限

ルール内容
上限任意の報告基準に書かれた範囲を超える情報は、求めることができない
断る権利保護対象の会社は、上限を超える情報の提供を断れる
契約上限を超える情報を求める契約の条項は、拘束力を持たない
知らせる義務上限を超えて頼むときは、どこが超えているかと、断れることを伝える
自己申告1,000人以下かどうかは、取引先の自己申告で判断してよい

任意の報告基準を定める委任規則は、2026年7月3日に採択されました。この上限は、CSRDの報告のための依頼にだけかかります。

改訂ESRSで変わった点 改訂ESRSは委任規則C(2026) 5010で、2023年に定めたESRSの本文を、まるごと差し替える形です。原案は、EFRAG(欧州委員会に報告基準を助言する団体)が2025年12月2日に提出しました。この原案は、義務の開示項目を61%減らしています。欧州委員会は、原案にいくつかの修正を加えて採択しました。

論点改訂後の扱い
重要性重要でない情報は、決められた場合を除き「報告しない」と定めた
重要性の評価上から絞る方法を使えば、多くの場合、影響やリスクを1つずつ評価しなくてよい
適正な表示報告全体にかかり、項目ごとにはかからないと明記した
財務への影響の見込み見積もりの更新は誤りに当たらない。開示の猶予を1年延ばした
温室効果ガス集計の範囲を、財務支配か経営支配のどちらかで決められる
移行計画目標が1.5℃の目標と合わない場合は、そのことを示す
マイクロプラスチック製品として作るものに限り、劣化してできるものは対象外
高懸念物質含む製品を使う会社には、開示の猶予を1年設けた
人権の事案確認された事案だけを報告する
資産運用顧客から預かって運用する投資の情報は、開示しなくてよい

EFRAGの費用の分析では、報告の費用は5年間の平均で34%減ります。ただしこれはEFRAGの原案での見積もりで、採択された規則での数字ではありません。

改訂ESRSの発効と、移行の扱い 改訂ESRSの委任規則は採択日から4か月と1週間後に発効すると定めており、計算すると2026年11月10日です。欧州議会と理事会は、通知から2か月(さらに2か月延長できる)の間に異議を出せます。見直しの前から報告していた会社などは、次のように扱います。

対象2026年度まで2027年度から
2024年度から報告している会社旧ESRSで報告を続ける。2025・2026年度は、2024年度より項目を増やさなくてよい新しい基準を超えれば続けて報告。超えなければ対象外
基準に届かなくなる会社2025・2026年度の報告を、加盟国が免除できる。免除するかどうかは加盟国の法律による対象外
新しく対象になる会社報告の義務はない2027年1月1日以後に始まる年度から報告
EU域外の企業グループ報告の義務はない2028年度から報告(2029年に公表)

旧ESRSで使える負担軽減には、上から絞る重要性の評価や、取引先の範囲を一部に限る報告などがあります。

2026年度の報告は、旧ESRSと改訂ESRSのどちらかを選べます。旧ESRSに改訂版の負担軽減の一部を組み合わせることもでき、使った版は報告の中に明記します。

域外企業向けの基準(ESRS-40a)の案 会計指令の第40a条は、EU域外の企業グループのサステナビリティ報告を定めています。報告に使う基準の案を、EFRAGが2026年7月23日に公表しました。名前は条文の番号からとったESRS-40aです。意見募集は2026年10月31日に締め切られました。

論点案の内容
報告の対象会社が人や環境に与える影響だけ。リスクと機会の開示は外した
基準の構成改訂ESRSと同じ12本(共通2本、テーマ別10本)
範囲の選択気候以外のテーマは、条件付きでEUに関わる影響だけに絞れる
削った項目EUタクソノミー(環境に良い事業の分類)に関する項目
保証報告書に保証の意見を付ける
猶予生物多様性や取引先の労働者などの開示は、最初の2年は省ける
親会社が情報を出さない場合子会社は親会社に必要な情報を求める。得られなければ、手元にある情報で報告書を作り、足りないことを明記する
同等の基準親会社がESRSか「同等の基準」で報告すれば、EUの子会社は別に報告しなくて済む。同等かどうかは、EUの別の法律に基づく決定で判断する

EUに関わる影響とは、EUで売られる製品やサービスによる影響と、EUでの事業による影響です。絞れるのは、EUの分を意味のある形で切り分けられる場合だけです。EFRAGの理事会は、この「混合方式」に懸念を示したうえで、案の公表を承認しました。欧州委員会の求めに沿って入れた方式だと説明しています。

SSBJ基準・ISSB基準・CSDDDとの関係 SSBJ基準は、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)が作った日本のサステナビリティ開示の基準です。SSBJによれば、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の基準との整合を基礎にしています。

比べる点ESRSSSBJ基準
開示する内容人や環境への影響と、会社へのリスクと機会サステナビリティ関連のリスクと機会
主な読み手投資家に加え、取引先や労働組合、NGOなど投資家、融資者などの債権者
日本での義務―東証プライムで平均時価総額1兆円以上の会社。2028年3月期から

平均時価総額3兆円以上の会社は、1年早い2027年3月期から適用されます。

ESRSとISSB基準の関係について、EFRAGとISSBは2024年5月2日に相互運用の手引きを出しました。欧州委員会は、ESRSで報告する会社は少しの追加の手間で国際基準も満たせると述べています。改訂ESRSでも、温室効果ガスの集計範囲を国際基準に寄せています。

CSDDD(企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令)も、同じオムニバスの指令で改められました。対象は従業員5,000人超かつ純売上高15億ユーロ超の会社です。加盟国の法律の期限は2028年7月26日です。

今後の検討 業種別の手引きについては、指令の前文が、欧州委員会が出す可能性に触れています。対象の拡大は2031年4月30日までに検討し、結論は未定です。この検討では、基準を下回る大会社と、EUに子会社も支店もない域外の会社を、対象に加えるかを調べます。

まだ決まっていないこと

項目状態
EUの各国が改める法律の中身(子会社の報告の細部)内容は国によって異なる
日本の親会社がグループ全体の報告に使う基準(ESRS-40a)EFRAGの助言は2027年1月の予定。欧州委員会が採択する時期は未定
日本の基準(SSBJ基準)での報告で、EUの子会社が別に報告しなくて済むか未定