更新日 2026年11月1日

制度の解説|カーボンクレジット

カーボンクレジットの制度と使い方

カーボンクレジットは、温室効果ガスの削減量や吸収量を、第三者の審査を経て取引できる単位にしたものです。国内のJ-クレジット、海外でつくるJCM、民間の制度があります。どの制度のクレジットを何に使えるかは、使う先の制度ごとに決まっています。

制度の解説カーボンクレジット

概要

クレジットは、対策をしなかった場合の排出量と、対策後の排出量の差から計算します。対策をしなかった場合の排出量を、ベースラインと呼びます。クレジットを買った会社は、無効化の手続きをして、自社の排出の相殺に使います。無効化とは、同じクレジットを二度と使えないよう、登録簿の上で使用済みにすることです。

項目J-クレジットJCM(二国間クレジット制度)
何が日本国内の削減・吸収量を、国がクレジットとして認証する日本とパートナー国が協力した海外の削減・吸収量を、両国で配分する
いつから2013年4月1日(告示では2031年3月31日までの制度)2013年1月8日にモンゴルと最初の署名
運営経済産業省・環境省・農林水産省日本と相手国の合同委員会。日本側の事務はJCM実施機構
誰がつくる国内で省エネ・再エネ・森林管理などをする企業や自治体パートナー国で事業をする日本企業など
誰が使うGX-ETSの対象事業者、温対法の報告をする事業者、自らの判断で相殺する企業同左。日本政府は国の削減目標の達成にも使う

GX-ETSは、GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)にもとづく排出量取引制度です。2026年4月1日に義務の制度が始まりました。温対法は地球温暖化対策推進法の略称です。

対象:クレジットになる活動の基準

どの制度も、削減が対策のおかげで生まれたことを確かめます。この考え方を追加性と呼びます。追加性があるとは、クレジットの収入がなければ行われなかった対策であることです。

基準J-クレジットJCM
場所日本国内で実施するパートナー国(32か国)で実施する
計算の決まり制度で承認された方法論が適用できる合同委員会が承認した方法論にもとづく
設備の時期登録申請日の2年前以降に稼働した設備機器の調達か建設を始める前に、事業概要(PIN)を相手国政府に出す
追加性追加性があることクレジットによる動機づけが必要なこと。一律の数値基準は置かない
重複の禁止グリーン電力証書など類似の制度で、同じ活動を登録していない日本に移転した量は、相手国の削減量に数えない
審査審査機関の第三者審査を受ける第三者機関(TPE)の妥当性確認と検証を受ける

PINはProject Idea Noteの略で、相手国に事業の概要を示す書類です。JCMの適用基準は、2025年12月8日に関係省庁と実施機構が示しました。この基準を満たしても、相手国政府の同意がなければJCMにはなりません。

求められること:J-クレジットの方法論と認証

方法論は、技術ごとに適用範囲、削減量の計算方法、モニタリングの方法を定めたものです。2026年1月時点で、74の方法論が承認されています。当てはまる方法論がなければ、方法論策定規程に従って新しく提案できます。

分野方法論の例
省エネ設備の導入ボイラー、照明、空調、コージェネレーション
再エネの導入バイオマス燃料で化石燃料を置き換える、太陽光発電
森林の管理森林経営計画にもとづく間伐や植林

プロジェクトを登録する人には、次の要件があります。

  1. 認証の期間 登録申請日かモニタリングができる日の遅い方から8年間です。森林経営活動は最大16年間です。
  2. 期間の延長 ベースラインを設定し直しても削減が見込めれば、最大16年まで延ばせます。過去の分は含みません。
  3. モニタリング 計画書に沿ってデータを集め、削減量を計算して報告書にまとめます。
  4. 森林の永続性 森林のプロジェクトは、終了後も10年間、適切な管理を続けて報告します。
  5. 主張の制限 クレジットを他者に移転した場合、その削減の価値は自社で主張できなくなります。

登録の形には、通常型とプログラム型があります。プログラム型は、同じ種類の小さな活動を束ねて1つのプロジェクトにする形です。家庭の太陽光発電のように、単独では登録が難しい活動も扱えます。活動を後から加えるときに、計画の変更や審査は要りません。

国と事務局は、計画書や報告書の作成の支援と、審査費用の支援を用意しています。支援には利用の条件があります。

求められること:JCMの仕組み

JCMのクレジットは、リファレンス排出量とプロジェクト排出量の差から発行されます。リファレンス排出量は、成り行きの排出(BaU)を十分に下回るよう、控えめに置く値です。BaUはBusiness as Usualの略です。

削減量の配分は、両国で構成する合同委員会が決めます。配分では資金に加え、技術の提供や運営面の貢献も考えます。クレジットにならない削減量も、両国の削減目標の達成に役立ちます。

パリ協定第6条との関係内容
移転の承認日本への移転量、使い道、対象期間を両国政府が承認する。移転された量はITMOsになる
国連への報告初期報告、年次情報、定期情報で報告し、審査を受ける
相当調整日本に移転した量を日本の排出量から引き、同じ量を相手国の排出量に足す。2021年以降の削減分が対象

パリ協定第6条は、国どうしが協力して削減の成果をやりとりする決まりです。ITMOsは「国際的に移転される緩和成果」の略称です。相当調整は、同じ削減を両国で二重に数えないための調整です。

温対法の改正(令和6年法律第56号)で、JCMは法律に位置づけられました。法律上は「国際協力排出削減量」と呼びます。日本政府指定JCM実施機構(JCMA)が、登録からクレジット発行までの事務を担います。運営は公益財団法人地球環境センターです。

GX-ETSでクレジットを使うときの決まり

GX-ETSの対象は、CO2の直接排出が年10万トン以上の事業者です。対象の事業者は、排出実績量と同じ量の排出枠を持つ義務を負います。クレジットを無効化すると、その量を排出実績量から差し引けます。

項目決まり
使えるクレジットJ-クレジットとJCMクレジット
上限無効化による控除は、実排出量の10%まで
反映の期限報告する年度の6月末までに無効化した分
重なる期間4月1日〜6月30日の無効化分は、前年度か当年度のどちらか一方にだけ反映
報告に書くこと無効化量か移転量、その日付、クレジットの番号、無効化を確かめられる資料
対象かどうかの判定判定に使う排出量には、クレジットによる相殺を反映しない

経済産業省の説明資料では、排出実績量は次の式で示されています。燃料と原材料に由来するCO2排出から、クレジットの無効化量を引きます。そこに、クレジットの移転量を足します。

施行規則第16条は、国内・海外の認証排出削減量を加減したときに、その資料を出すよう定めています。

省エネ法や温対法の報告では、クレジットの使用に上限はありません。GX-ETSでは10%が上限です。

適用の時期と経過措置

制度クレジットに関する定め時期
J-クレジット温対法の報告で使える国内認証排出削減量の1つ2013年4月1日〜2031年3月31日の制度として告示に記載
JCM温対法の報告で使える海外認証排出削減量。改正後の告示を適用2025年4月1日から適用(2025年度以降の報告)
JCM(経過措置)2020年12月31日以前の事業による量も、条件つきで海外認証排出削減量とみなす同上の告示の附則
GX-ETSJ-クレジット・JCMで実排出量の10%まで控除2026年度の排出から
SSBJ基準純量目標で使う予定のクレジットを説明する2026年改正版は2027年1月1日以後に始まる年度から
SBTi 第2版クレジットは目標の達成に数えない。任意の認定制度で別に報告する2027年2月1日から第2版で目標を出せる

SSBJ基準の2026年改正版は、2025年12月11日以後に終わる年度から前倒しで使えます。SBTiの第1.3.1版で目標を出せるのは、2028年1月31日までです。

手続きと期限

J-クレジットの登録から認証までは、次の流れです。

1計画書をつくる設備や燃料のデータから、削減の計画を書く
2妥当性確認審査機関が、計画書の誤りや設備の稼働を確かめる
3登録登録を申請し、有識者の認証委員会が審議する
4モニタリングデータを集め、削減量を計算して報告書にする
5検証審査機関が、報告書と認証量を確かめる
6認証認証を申請し、認証委員会の審議を経てクレジットが発行される
経済産業省「J-クレジット制度におけるプログラム型プロジェクトについて」(2026年3月)から作成

JCMは、PINの提出、方法論の承認、設計書(PDD)の作成、妥当性確認、登録、モニタリング、検証、発行の順に進みます。PDDはProject Design Documentの略で、モニタリング方法や推定削減量を書いた設計書です。発行量は合同委員会が決め、各国政府がクレジットを発行します。妥当性確認と検証は、同じ第三者機関が行えます。

J-クレジットは、東京証券取引所のカーボン・クレジット市場で売買できます。市場は2023年10月11日に開きました。

区分加重平均の価格(円/t-CO2)約定数量(t-CO2)
省エネ2,899351,884
再エネ(電力・熱)4,577701,186
森林5,57320,714
全体4,0461,075,040

表は、市場の開設から2026年1月30日までの約定の結果です。総額は約43.5億円でした。参加者は2026年1月23日時点で347者です。売買は、使い道に応じた9つの区分に分かれています。

ほかの制度との関係

制度・枠組みクレジットの扱い
温対法のSHK制度排出量の報告で、無効化した量を控除するなどの調整ができる
GX-ETSJ-クレジットとJCMで、実排出量の10%まで控除
SSBJ基準排出量はクレジットを差し引く前の量で開示する。純量目標では使う予定のクレジットを説明する
SBTi 第2版目標の達成には数えない。任意の認定制度(OER)で別に報告する
ICVCM民間のクレジットの品質の基準(CCP)を定め、制度と方法論を審査する

SHK制度は、温対法にもとづく排出量の算定・報告・公表の制度です。排出量が年3,000トンを超える事業者に、報告を義務づけています。

SSBJ基準 SSBJ(サステナビリティ基準委員会)は、日本の開示基準をつくる団体です。その基準は、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の基準との整合を図っています。気候関連開示基準は、クレジットを「温室効果ガスの削減か除去を表す単位」と定義しています。クレジットは電子登録で一意の番号を付けて管理し、無効化されます。

排出量はスコープ1・2・3に分けて、絶対総量で開示します。絶対総量は、使う予定のクレジットを考慮する前の量です。純量(ネット)目標を開示するときは、関連する総量(グロス)目標も別に示します。純量目標は、総量目標からクレジットによる削減を差し引いた目標です。

  1. 純量目標のために、クレジットにどう、どの程度頼るか(第99項(1))
  2. クレジットを検証または認証した第三者スキームの名称(第99項(2))
  3. 自然に基づくものか技術に基づくものか、削減か除去か(第99項(3))
  4. 信頼性と十全性を理解するのに必要な事項。例は、永続性の仮定(第99項(4))

SBTi SBTiは、企業の削減目標が科学に合うかを確かめる国際団体です。企業ネットゼロ基準の第2版(2026年6月)では、クレジットは自社の削減の代わりになりません。他者に売ったクレジットや、事前に見積もっただけの削減は、目標の達成に使えません。

第2版は、任意の認定制度としてOER(継続的排出に対する責任)を設けました。まだ出している排出の一部に、外部の削減や除去への貢献で責任を持つ企業を認定します。認定は3段階です。

段階求められる範囲
Engagedスコープ1・2・3の継続的な排出の1%以上
Advancedスコープ1・2の100%を含め、全体の10%以上。予算で行う場合は1トンあたり20米ドル
Leadership全体の100%。1トンあたり80米ドルの予算を設ける

OERで使うクレジットは、主張する時点で無効化し、その後も使えないようにします。OERに使った量は、スコープ1・2・3の目標の達成に数えられません。SBTiは、2035年からこの責任を義務にする意向を示しています。ネットゼロの時点では、残った排出を炭素除去で100%中和することが求められます。

ICVCM ICVCM(自主的炭素市場のための十全性評議会)は、独立した非営利の団体です。高品質なクレジットの基準として、CCP(コア・カーボン原則)を定めています。CCPは次の10項目です。

区分原則
ガバナンス効果のあるガバナンス、追跡、透明性、独立した第三者による妥当性確認と検証
排出への効果追加性、永続性、削減・除去量の確かな定量化、二重計上の防止
持続可能な影響持続可能な開発の便益と安全策、ネットゼロへの移行への貢献

ICVCMは、クレジットを発行する制度と、クレジットの種類(方法論)を分けて審査します。基準を満たす制度は「CCP適格」と認められます。適格な制度は、承認された種類のクレジットにCCPのラベルを付けられます。

ICVCMの審査状況のページ(2026年10月27日更新)では、CCP適格の制度が13、承認された方法論が45件です。系統につなぐ再エネの方法論などは、基準を満たさないと判断されました。

実務で迷いやすい点

問 GX-ETSでは、ボランタリー市場のクレジットも使えますか。

答 経済産業省の説明資料が挙げているのは、J-クレジットとJCMクレジットです。それ以外のクレジットを使えるとする記載は、この資料にはありません。

問 GX-ETSで、10%の上限は何に対する割合ですか。

答 説明資料には「実排出量の10%を上限とする」とあります。燃料と原材料に由来するCO2排出が、その実排出量にあたります。

問 2026年度の排出に、いつまでのクレジットを使えますか。

答 報告する年度の6月末までに無効化した分を反映します。2026年度の排出は2027年度に報告するため、2027年6月末までの無効化分です。4月1日から6月30日の分は、どちらか一方の年度にだけ反映できます。

問 J-クレジットを売った会社は、その削減を自社の実績にできますか。

答 できません。他者に移転した場合、その削減の価値は主張できなくなります。

問 SSBJ基準では、クレジットを差し引いた排出量を開示できますか。

答 開示する排出量は、クレジットを考慮する前の絶対総量です。クレジットを使う予定は、純量目標の説明として開示します。純量目標を出すときは、総量目標も別に開示します。

問 SBTiの目標を、クレジットの購入で達成できますか。

答 第2版では、OERに使ったクレジットや他者に売ったクレジットは、目標の達成に数えません。目標に届かない場合、炭素除去を任意で買うよう勧めています。この除去も、目標の進み具合には数えません。

問 JCMのクレジットは、どの国で発行されますか。

答 発行量は合同委員会が決め、日本と相手国の政府がそれぞれ発行します。クレジットは、日本が取得する分とパートナー国の分に分かれます。

今後の予定

時期予定状況
2026年11月9〜20日国連の気候変動会議COP31(トルコ・アンタルヤ)会期は決まっている。会議の結果はまだ出ていない
2027年1月1日SSBJ基準の2026年改正版の適用が始まる年度決まっている
2027年2月1日SBTiの第2版で目標を出せるようになる決まっている
2027年6月30日2026年度の排出に反映するクレジットの無効化の期限(GX-ETS)説明資料の決まりから求めた日付
2027年9月30日GX-ETSの2026年度の実績報告決まっている
2028年1月31日GX-ETSの2026年度分の排出枠の保有期限。SBTi第1.3.1版の受付終了決まっている
2030年度・2040年度JCMで累積1億トン・2億トン程度の削減・吸収を確保する目標2025年2月18日の閣議決定による目標
2031年3月31日告示に書かれたJ-クレジット制度の期間の終わりその後の扱いは未定
2035年SBTiがOERを義務にする意向意向の段階。詳しい要件は未定

SBTiは、第三者の枠組みを認める基準と手続きを、今後つくる予定です。どの枠組みが認められるかは、まだ示されていません。JCMのPINの提出と異議の確認の手順は、パートナー国ごとに調整が続いています。